地球の歴史において、変化はじつに珍しいものだった。それは人類が登場してからもほとんど変わらなかった。
だが、大量生産が工業時代をもたらして以降、変化は加速する一方だ。特に、インターネットと集積回路チップが「ネットワーク時代」を生みだしたことで、その流れはますます顕著になった。
ネットワーク時代の特徴は、絶え間なく変化が生まれていることにある。そして、変化は私たちの用意ができているかなんて、気にもかけていない。
この時代を定義づける特徴が3つある。
1つ目は「非対称性」だ。かつては大きな力に対抗するためには、同じ規模と強さをもつ別の力で対抗しなければならなかった。だが、ここ20年ほどの間にすべてが変わった。インターネットと急速に改善するデジタル技術は、世界のパワーバランスを均等化しはじめている。もはや規模が大きければよいという世界ではない。むしろ現状への最大の脅威、新興企業やはぐれ者、離反者からやってきている。
2つ目は「複雑性」だ。複雑性自体はまったく目新しいものではないが、その研究が進んできたのはここ最近である。複雑性は(1)異質性、(2)ネットワーク、(3)相互依存性、(4)適応性の4つの要素から成り立っている。「これらを4つのつまみだと思ってください」というミシガン大学複雑系研究センター所長スコット・E・ペイジは、「近年では、これらのつまみのボリュームをすべて最大メモリを超えるほど回しきったんです」「そして、その帰結がどうなるかは、皆目見当がついていないんです」と語っている。
3つ目は「不確実性」である。これまで、人類の成功は正確に予測する能力と深く結びついていた。しかし今は、予想外の発展がほんの数日でゲームのルール自体を変えてしまいかねない。こうした時代においては、無知を認めることのほうが、より戦略的な優位性をもっているといえる。
知らないという原理をもとに、どのようにして組織や自分自身を再構築していけばいいのだろうか。
このとき参考になるのは、軍事、生命科学、技術、ニュースメディアといった先駆者たちだ。彼らは複雑性と予測不可能性をがっちり組み込みはじめている。
メディアラボも、新しい時代に対応するDNAを持ち合わせている組織のひとつだ。ここは、新技術を作り出すアーティスト、教育システムを再発明しようとする遺伝学者やコンピュータ科学者にとって、ひとつの島のような場所だ。それは学際的というよりは「反分野的」であり、教授陣も生徒たちも、学問分野同士が協力しているというよりは、そうした分野のあいだの空間やそれを超えた場所を探求している。
メディアラボの中核的な原理は、教育よりも学習を重視するということだ。
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