宇宙になぜ我々が存在するのか

最新素粒子論入門
未読
宇宙になぜ我々が存在するのか
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最新素粒子論入門
著者
未読
宇宙になぜ我々が存在するのか
ジャンル
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出版社
講談社
出版日
2013年01月20日
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おすすめポイント

夜空を見上げながら、飲み込まれそうなほどの数の瞬く星を見上げ、ふと思う。「この大きな宇宙に私たちはなぜ存在するのだろう」そんな疑問に筆者はこう答える。「私は哲学者でもありませんし、進化生物学者でもありません。ですが、私のような物理学者にも一つはっきりわかることがあります。『材料』がなければ、私たちは生まれなかったということです。そしてこの『材料』の問題は、宇宙そのものに深く関わっているのです」。

生き物の身体は、細胞でできていることは生物の授業を受けたことがあれば誰でも知っていることだろう。この細胞を構成するタンパク質は、分解するとアミノ酸と呼ばれる、炭素、酸素、水素、窒素といった原子からできている。では、こうした化学元素はどこからきたのだろう?じつは、これらは何十億年も昔に起こった星の最期、超新星爆発によって宇宙空間にバラまかれた元素なのだ。これらが、また集まって星をつくり、銀河をつくり、太陽を、地球を、そして私たちの身体をつくっている。

本書では、宇宙になぜ我々が存在するのか、という大きなテーマに挑むために、まずは元素を構成している素粒子の話からわかりやすく説明している。素粒子というと、難しそうと感じるかもしれないが、各章の題名を見てみると「恥ずかしがり屋のニュートリノ」「ニュートリノはいたずらっ子?」というように、まるでニュートリノをかわいい子どものように描写していることが見て取れる。素粒子理論における若き指導者の一人である著者村山氏だからこそ描ける最新素粒子物理学で解く宇宙と私の謎。読後に見上げた星空はきっといつもと違って見えることだろう。

著者

村山 斉
1964年東京生まれ。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の初代機構長、特任教授。米国カリフォルニア大学バークレー校物理教室教授。1991年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。東北大学大学院理学研究科物理学科助手、ローレンス・バークレー国立研究所研究員、カリフォルニア大学バークレー校物理学科助教授、准教授を経て、同大学物理学科MacAdams冠教授。米国プリンストン高等研究所メンバー(2003~2004年)専門は素粒子物理学。2002年、西宮湯川記念賞受賞。素粒子理論におけるリーダーであり、基礎科学分野における若き指導者の一人。

本書の要点

  • 要点
    1
    この宇宙は正体不明の物質であふれている。ニュートリノは、エネルギー量で見れば、その割合は多くはないが、粒子の数をみると、一秒間に数百兆個のニュートリノが私たちの身体を通り抜けているほど、この世界はニュートリノであふれている。
  • 要点
    2
    日本人ノーベル賞受賞者小柴さんによって、自然界で発生するニュートリノが、初めて観測された。
  • 要点
    3
    誕生してから100億分の1秒後の宇宙の姿まで迫ることができるようになってきた。
  • 要点
    4
    私たちの身体は星の最期である超新星爆発のときにつくられた元素を材料につくられている。

要約

お化け素粒子ニュートリノの発見

generalfmv/iStock/Thinkstock
この宇宙はニュートリノであふれている

我々が住むこの宇宙が何でできているのか、じつは、まだよくわかっていない。宇宙といえば、暗闇に浮かぶ美しい星や銀河を思い浮かべるかもしれないが、それらを全部かき集めたとしても、宇宙全体のエネルギー構成のうち0.5%ほどにしかならないのだ。

さらに、私たちの身体も構成している「原子」だが、原子でできている物質は宇宙全体で4.4%ほどしかなく、これらを足し合わせても100%には到底及ばない。私たちの身体を含め、身の回りのすべての物質は原子という粒子によって構成されていると学校で習ったはずだが、じつは、この宇宙にある原子を全部集めても5%にもならないのだ。

では、残りは何なのかといえば、まだわかっていないというのが答えだ。NASAの観測衛星WMAPによると、宇宙の23%は暗黒物質で、73%は暗黒エネルギーで占められていることがわかっているという。しかし、暗黒物質も暗黒エネルギーもその正体はわかっていない。つまり、正体不明の物質やエネルギーにとりあえず名前をつけて100%に到達するようにしただけなのだ。

「ニュートリノ」と呼ばれる素粒子のひとつは、宇宙のエネルギー構成のうち0.1~1.5%を占めており、このニュートリノの親戚にあたる物質は暗黒物質の正体の有力な候補として考えられている。

パーセントで見るとニュートリノはあまり宇宙全体に関与していないように感じられるが、じつは粒子の数を比較すると見方が大きく変わってくる。エネルギー量では宇宙全体の4分の1を占めている暗黒物質だが、その粒子の数は一立方センチメートルあたり1000万分の1個くらいしかないと考えられている。ところが、ニュートリノは一立方センチメートルあたりに300個も粒子がある。私たちの身体をつくる原子、さらにそれを構成する陽子、中性子、電子などはニュートリノの10億分の1しかない。

つまり、粒子の数でいえばこの宇宙はニュートリノであふれているのだ。ニュートリノは太陽などの星からも出ていて、一秒間に数百兆個のニュートリノが私たちの身体を通り抜けている。それにもかかわらず、私たちはその存在に気付くことがないのは、ニュートリノが重力や電磁気力などと反応せずにただ素通りしてしまうからなのだ。

ではどうすればニュートリノの存在を知ることができるだろうか。その検証方法はじつに単純で、「ものをたくさん置くこと」だという。朝の通勤時間帯の駅のホームは、人が多すぎるためになかなか前に進めないなんてことがあるが、昼間のすいている駅のホームでは難なく前に進めるだろう。

それと同じことで、「ひとつの場所にたくさんの物を置けば、たまにはひとつぐらいニュートリノがコツンとぶつかってくれるはず」というわけだ。それでも、たとえば鉛でニュートリノを捕まえようとすると、地球上には存在しないほど大量の鉛がなければ、通り過ぎるニュートリノを捉えられないという。

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要約公開日 2014.04.04
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