「社長、辞めます!」

ジャパネットたかた 激闘365日の舞台裏
未読
「社長、辞めます!」
「社長、辞めます!」
ジャパネットたかた 激闘365日の舞台裏
未読
「社長、辞めます!」
出版社
日経BP
出版日
2014年05月19日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

ジャパネットたかたの競争力の源は何か、と問われれば多くの人が高田社長の圧倒的な販売パフォーマンスにある、と答えるのではなかろうか。今も高田社長はカリスマとして君臨している。しかし本書で綴られる危機からの再生劇を読めば、ジャパネットの強みはそれだけではないことに気付くだろう。

高田社長の凄味は、本書のタイトルにもあるように、「(目標が達成できなければ)社長、辞めます!」という言葉を発することができる大胆さにもある。ただ、その目標を社長が張り切って達成させたのではワンマン経営の枠を超えられない。そこで、社長の直接の管理から独立した東京オフィスを中心に、様々な新しいチャレンジを行わせたのだ。経常利益を前年の2倍にするという高い目標を達成できたのは、テレビ販売の反動減の落ち着きや、アベノミクスの効果など環境の後押しもあったに違いないが、社内改革が実を結んだことの方が主要因だと言えよう。長男である旭人副社長を中心としたチームがその実現に向けた大役を担い見事達成する様子は、ジャパネットの組織力がますます強固になりつつあることの証左だろう。

本書には、高田社長の人間性、現場と社長の衝突や、社員一丸となって危機を乗り越える様子などが余すところなく描かれている。そのため、あらゆるリーダーや小売業に携わる方はもちろん、組織改革に悩むビジネスパーソンにも最適な一冊だ。ジャパネットのテレビ通販で聞こえる高田社長の甲高い声をイメージしながら、その再生の物語に思いを馳せようではないか。

ライター画像
大賀康史

著者

荻島 央江(おぎしま・ひさえ)
ライター&エディター
埼玉県生まれ。食品販売会社在職中に映画紹介・評論記事の執筆活動を開始。2002年からフリーランスとなり、情報誌や女性誌などで取材・執筆を手掛ける。現在はビジネス誌を中心に活動中で、「日経トップリーダー」や「日経BPnet」などに執筆。著名経営者へのインタビューや中小企業のルポを得意とする。著書に『ジャパネットからなぜ買いたくなるのか?』(日経BP)

本書の要点

  • 要点
    1
    ジャパネットたかたは、地上デジタル放送完全移行の反動減の影響で、10年度の売上高1759億円、経常利益136億円から、12年度は売上高1170億円、経常利益73億円へと大幅に減少した。
  • 要点
    2
    高田社長は12年末、「過去最高益(経常利益)を更新できなければ、社長を辞めます」と宣言し、見事13年度に過去最高益を達成した。
  • 要点
    3
    高い目標を達成した主な要因は、社員全員で同じ方向に向かっていけたことだ。社員らが目標達成のためには、テレビに代わる商材を探せばいいという発想に転換、様々なキャンペーンを成功させ、1年間で社長依存を脱するきっかけをつかんだ。

要約

なぜジャパネットたかたは減収減益になったのか

Alpha-C/iStock/Thinkstock
成長から一転、2期連続で減収減益

本書は高田社長の衝撃的な宣言から幕を開ける。「過去最高益(経常利益)を更新できなければ、社長を辞めます」。それは2012年12月、ジャパネットたかたが2年連続の減収減益となったタイミングのことであった。

ジャパネットたかたは、高田社長が長崎県佐世保市に構えた小さなカメラ店からスタートしている。1990年にラジオ通販に進出して以降拡大を続け、年商1000億円を超える企業に成長した。そのジャパネットたかたの苦境は、主力商品だったテレビの販売不振が原因で訪れる。

つい数年前まではテレビ販売は絶好調だった。09年5月に開始された「家電エコポイント制度」とその後の「地上デジタル放送完全移行」を受け、特に地デジ対応テレビの売上が急伸。最盛期には1日に約1万台ものテレビが売れ、売上高全体の5割以上を占めるに至った。

当時から高田社長はテレビ好調の反動に備えて社員全員に「テレビがなかったら、ジャパネットは何をすべきか」という課題を出していたのだが、その反動は予想以上だった。

数年分のテレビ需要を「先食い」

地上デジタル放送完全移行前の3割減の反動という市場予測とは異なり、テレビの売上は11年の3割程度まで一気に落ち込んだ。ジャパネットのテレビ販売額は更に大きな影響を受け、ピーク時(960億円)の5%(60億円)に減少。

追い打ちをかけるように、スマートフォンやタブレット端末の普及で、それまでジャパネットが得意としてきたデジタルカメラやカーナビの市場も縮小。その結果、10年度の売上高1759億円、経常利益136億円から、12年度は売上高1170億円、経常利益73億円と大幅減となった。

通信販売市場全体が拡大を続ける一方で、業界内外から「ジャパネットは大丈夫か」と言われていたようだ。その主な理由は、売上の約7割をデジタル商品が占めていたためであった。

白物家電へのシフト
Grassetto/iStock/Thinkstock

テレビの穴をどう埋めるのか。ジャパネットは12年から本格的に商品構成を変えていく。その1つが白物家電へのシフトである。ジャパネットの十八番であるテレビ関連商品ではなく、掃除機やエアコン等の白物家電に注力し、商品の魅力を余すことなく伝える方針に転換したのである。

第2の戦略がナショナルブランド以外の展開。従来のジャパネットはナショナルブランドの取り扱いが原則だった。会社の認知度がまだ低い時代にその信用を補完する目的の方針だったが、メーカーおよび商品の信頼が高いと判断できれば他の商品も扱うことにしたのだ。

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要約公開日 2014.06.30
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