いまの職場や学校がじぶんに向いていない気がする。じぶんとは違う世代と話が合わず、浮いた感じがする。SNSで発信しても共感してもらえない。こうした「うまくいかない」壁を前にして、原因は自分の「努力が足りないからだ」と考えてはいないだろうか。じつはそうではない。単に相手やものごとに対するアプローチに問題があるだけなのだ。
コミュニケーションを通して、その問題を解決していくのが、「うまくやる」方法である。これは専門的には心理学や認知科学の領域でもあり、人の間に生まれる関係性をデザインしていく「コミュニケーションデザイン」という手法の1つだ。
コミュニケーションがデザインできるようになるには、周りの人を観察し、じぶん自身を理解し、世の中をいろいろな角度から見る目をもつことが大切である。するとどんな効果が期待できるのかというと、まず、人を見る目、じぶんを見る目が変わる。故に、世界の見方、考え方、コミュニケーションの作法が変わる。故に、空気を読むだけではなく、空気をつくれるようになる。故に、うまくやれるようになる。
本書で展開する「うまくやる」授業によって、思考の拡張とコミュニケーションのアップデートができる。それにより、性別や年代、価値観の隔たりを超え、よりオープンマインドで、毎日が楽しめるようになる。
「いい鞄が欲しい」と考えたとき、その鞄のイメージが大まかすぎてはいけない。手に入れる確率を高めるには、「いい鞄」の情報を足していくことが求められる。
価格が高いのか。機能がすばらしいのか。デザインが美しいのか。どこのブランドなのか。どこで売っているのか。このように、鞄のイメージを鮮明化していき、解像度を高めていくのだ。デジタルカメラで撮影した写真と同様に、解像度が低いとイメージがボヤけてしまう。逆に、解像度が高いと、細かいところまで鮮明に見えて、リアリティーが増してくる。こうして欲しい鞄のイメージがはっきりとしてきたら、後はそれを手に入れるだけだ。
人は具体的で鮮明な脳内イメージが先行しないと、合理的に動けない。ましてやじぶん以外の人を動かすこともできない。解像度を上げる工夫をして、じぶんが想像できる良いイメージを常に頭の中に用意しよう。そうすれば、ものごとはうまくやれる方向へと進んでいく。
いろいろな視点をもつことは、ものごとが「うまくいく」ための大事なポイントといえる。
視点を増やすことは、カメラを増やすことと考えるといいだろう。カメラの数が増えれば、より客観的な解釈ができるようになる。
相手からじぶんはどう見えるのか、鏡に映った自分をイメージするとよい。うまくイメージができないのであれば、友達に頼んで、じぶんが気づかないように、自身の様子をスマホで撮影してもらってもいい。そして、じぶんがどのようにビデオに映っているかを確認してみるのだ。
著者は、ビデオに映るじぶんの姿をはじめて見たとき、その独特な動きや笑い方に驚愕したという。しかし、その違和感をそのまま受け入れることで、はじめて人の目から見たじぶんのキャラクターを、主観から分離してとらえられるようになる。
ものごとは、いったんは感情に支配されず、フラットに捉えてみるのが望ましい。そのためには、じぶんはもちろん、相手の思考や癖、いろいろな情報を解像度高く読み取ってから、想像することが大切だ。このようにして固定観念をもたずに、相手との関係性を認識できるようになると、コミュニケーションは驚くほど上達するはずだ。
仕事などが「じぶんに向いている」と考えるのは、新しいことにチャレンジして、短期間で予想していた結果が出たときや、その分野の先人に評価されたなどの成功体験があったときではないだろうか。逆に、失敗した、思うような結果が出なかった、叱られたなどの経験を伴うと、人はその仕事が「向いていない」という判断を自ら下す。それらの判断基準は大きく次の3つである。
(1)周りの人の判断
(2)周りの人との比較による自己判断
(3)周りの予測との比較
シンプルに考えると、「向いている、向いていない」は、「褒められている、褒められていない」ということと同じだということだ。(1)は周りから(人から)褒められているか、(2)(3)はじぶん自身を褒めているかということになる。
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