うまくやる

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うまくやる
出版社
出版日
2019年10月29日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

世の中には、うまくやれる人とうまくやれない人がいる。後者の人は、大人になるほどに、その「うまくいかない」壁を痛感しているだろう。頑張っているはずなのに、認めてもらえない。やがて、「どうせ……」とあきらめモードへ。どうしてうまくいかないのか。それは努力が足りないからでも、じぶんが悪いわけでもない。ただ、「うまくいかない」ことに対するアプローチに問題があるだけなのだ。

こうした壁を軽やかに乗り越える方法を、人気クリエイティブディレクターの著者が提案してくれるのが本書だ。そのベースには、著者が培ってきたブランディングや広告制作、コミュニケーションデザインがある。「ブランディングなんて自分とは縁遠いもの」と思うのはもったいない。じぶんを知り、魅せ方や、伝え方、発信の方法を無理なく変えていく。すると相手の受け取り方がガラリと変わり、おのずと結果がついてくる。

本書の魅力の1つは、40代男性のカーさん、20代女性のネコさん、そして著者が登場する対話形式になっている点だ。これは、読者が共感し、理解しやすいようにとった手法であり、コミュニケーションデザインの一種だという。この対話にほっこりさせられる。同時に、コミュニケーションでは、相手がどう感じているかを知ることがいかに大切なのかを実感することだろう。読後には、「うまくやる」秘訣が腑に落ち、じぶんの人生をデザインしやすくなるだろう。

ライター画像
中山寒稀

著者

熊野森人(くまの もりひと)
1978年生まれ。大阪府出身。大阪市立工芸高等学校映像デザイン科卒。IAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)特別研究課程修了。株式会社エレダイ2代表取締役/クリエイティブディレクター。株式会社ゆっくりおいしいねむたいな代表取締役。京都精華大学や京都造形芸術大学では講師も務める。
仕事の領域は大きく分けて3つあり、1つめが企業の商品やサービスの売り方を考えて広告をつくったり、企業そのものをブランディングしたり、行政の企画を練ったり、自社で食時間を豊かにデザインする仕事。2つめが学生に「考える方法」と「行動する方法」を教える仕事。3つめは家で子育てをしたり、食器を洗ったり、掃除したりする仕事。
2つめの仕事では、2019年で勤続13年となる京都精華大学にて「コミュニケーション論」と題し、「考え方の考え方」「考え方の共有」などを、京都造形芸術大学では「空間デザイン・ソフトリノベーション」と題し、コミュニケーションデザイン視点で空間を構築することを、教えている。他大学、企業、セミナーなど講演も多数。京都精華大学の授業内容を中心とした「じぶん編集の授業」をnoteにて好評連載中。
https://note.mu/eredie2

本書の要点

  • 要点
    1
    仕事やコミュニケーションがうまくいかないのは、相手やものごとに対するアプローチに問題がある。
  • 要点
    2
    具体的で鮮明な脳内イメージがないと、合理的に動けないし、人を動かすこともできない。イメージの解像度を上げる工夫をすれば、ものごとはうまく進みやすい。
  • 要点
    3
    「向いている、向いていない」の判断基準は、「褒められる」ということに左右されている。もし、じぶんが褒められていないと感じたら、ほかの人を褒めてみよう。その言葉は、ブーメランとなって自分に戻ってくる。

要約

「うまくいかない」のは、あなたのせいじゃない

原因はアプローチの方法にある

いまの職場や学校がじぶんに向いていない気がする。じぶんとは違う世代と話が合わず、浮いた感じがする。SNSで発信しても共感してもらえない。こうした「うまくいかない」壁を前にして、原因は自分の「努力が足りないからだ」と考えてはいないだろうか。じつはそうではない。単に相手やものごとに対するアプローチに問題があるだけなのだ。

コミュニケーションを通して、その問題を解決していくのが、「うまくやる」方法である。これは専門的には心理学や認知科学の領域でもあり、人の間に生まれる関係性をデザインしていく「コミュニケーションデザイン」という手法の1つだ。

コミュニケーションデザインがもたらす効果
VictoriaBar/gettyimages

コミュニケーションがデザインできるようになるには、周りの人を観察し、じぶん自身を理解し、世の中をいろいろな角度から見る目をもつことが大切である。するとどんな効果が期待できるのかというと、まず、人を見る目、じぶんを見る目が変わる。故に、世界の見方、考え方、コミュニケーションの作法が変わる。故に、空気を読むだけではなく、空気をつくれるようになる。故に、うまくやれるようになる。

本書で展開する「うまくやる」授業によって、思考の拡張とコミュニケーションのアップデートができる。それにより、性別や年代、価値観の隔たりを超え、よりオープンマインドで、毎日が楽しめるようになる。

じぶん自身を、うまく掘り下げる

脳内の鮮明なイメージが人を動かす

「いい鞄が欲しい」と考えたとき、その鞄のイメージが大まかすぎてはいけない。手に入れる確率を高めるには、「いい鞄」の情報を足していくことが求められる。

価格が高いのか。機能がすばらしいのか。デザインが美しいのか。どこのブランドなのか。どこで売っているのか。このように、鞄のイメージを鮮明化していき、解像度を高めていくのだ。デジタルカメラで撮影した写真と同様に、解像度が低いとイメージがボヤけてしまう。逆に、解像度が高いと、細かいところまで鮮明に見えて、リアリティーが増してくる。こうして欲しい鞄のイメージがはっきりとしてきたら、後はそれを手に入れるだけだ。

人は具体的で鮮明な脳内イメージが先行しないと、合理的に動けない。ましてやじぶん以外の人を動かすこともできない。解像度を上げる工夫をして、じぶんが想像できる良いイメージを常に頭の中に用意しよう。そうすれば、ものごとはうまくやれる方向へと進んでいく。

じぶんのキャラクターを理解する
ArtistGNDphotography/gettyimages

いろいろな視点をもつことは、ものごとが「うまくいく」ための大事なポイントといえる。

視点を増やすことは、カメラを増やすことと考えるといいだろう。カメラの数が増えれば、より客観的な解釈ができるようになる。

相手からじぶんはどう見えるのか、鏡に映った自分をイメージするとよい。うまくイメージができないのであれば、友達に頼んで、じぶんが気づかないように、自身の様子をスマホで撮影してもらってもいい。そして、じぶんがどのようにビデオに映っているかを確認してみるのだ。

著者は、ビデオに映るじぶんの姿をはじめて見たとき、その独特な動きや笑い方に驚愕したという。しかし、その違和感をそのまま受け入れることで、はじめて人の目から見たじぶんのキャラクターを、主観から分離してとらえられるようになる。

ものごとは、いったんは感情に支配されず、フラットに捉えてみるのが望ましい。そのためには、じぶんはもちろん、相手の思考や癖、いろいろな情報を解像度高く読み取ってから、想像することが大切だ。このようにして固定観念をもたずに、相手との関係性を認識できるようになると、コミュニケーションは驚くほど上達するはずだ。

「向き・不向き」は置かれた環境がつくる

仕事などが「じぶんに向いている」と考えるのは、新しいことにチャレンジして、短期間で予想していた結果が出たときや、その分野の先人に評価されたなどの成功体験があったときではないだろうか。逆に、失敗した、思うような結果が出なかった、叱られたなどの経験を伴うと、人はその仕事が「向いていない」という判断を自ら下す。それらの判断基準は大きく次の3つである。

(1)周りの人の判断

(2)周りの人との比較による自己判断

(3)周りの予測との比較

シンプルに考えると、「向いている、向いていない」は、「褒められている、褒められていない」ということと同じだということだ。(1)は周りから(人から)褒められているか、(2)(3)はじぶん自身を褒めているかということになる。

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要約公開日 2020.02.15
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