会社役員のための法務ハンドブック

未読
会社役員のための法務ハンドブック
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会社役員のための法務ハンドブック
出版社
中央経済社
出版日
2012年06月09日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

コンプライアンスが重視される昨今、経営者向けの法律書は多くあるが、法律になじみのない人でも読み通せ、かつ、信頼のおけるものは多くなかった。本書は、大手法律事務所で活躍中の、企業法務を専門とする弁護士たちが中心となってまとめあげた実践的な一冊であり、その要請に応えるものである。

50の項目を取り上げ、それぞれに具体的な場面を設定しており、そこでは強気な〈肉食系〉役員と慎重な〈草食系〉役員のやりとりがなされる。その中で、一体どういった点が法的な問題となりうるのか、誤りやすいポイントの指摘から始まり、関連する法的知識のわかりやすい解説がなされていく。これらを見ていくことで、会社役員として知っておくべき重要な法律知識を一通り把握できる。また、各項目は解説も含めて4ページと、コンパクトにまとまっており、簡単に読み終えることができる。

本書のはしがきにもあるとおり、役員は細かい法律の条文や判例を知っている必要はないが、問題となりうる点を察知する能力を身に着けておくことは非常に重要である。役員は大きな責任を負う立場であり、法律を知らなかったでは済まされない。役員として必要な「リーガルマインド」を習得するためにも本書のように信頼できる本を十分に活用していくことが必要である。

ここでは、組織問題から、経営戦略、さらには人事労務にかかわる50項目のうち、3項目を取り上げて紹介していく。

著者

淵邊 善彦 編著
1987年東京大学法学部卒業。89年弁護士登録。95年ロンドン大学UCL卒業。ノートン・ローズ法律事務所(ロンドン・シンガポール)を経てTMI総合法律事務所に参画。08年より中央大学ビジネススクール客員講師。主な取り扱い分野はM&A、国際取引、一般企業法務。主な著書として、『ネットワークアライアンス戦略』(共著、日経BP社、2011年)、『会社法務入門 (第4版)』(共著、日本経済新聞社 2011年)、『シチュエーション別提携契約の実務』(共著、商事法務、2011年)、『企業買収の裏側 ―M&A入門』(新潮社、2010年)、『クロスボーダーM&Aの実際と対処法』(ダイヤモンド社、2007年)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    項目例①:代表取締役は何でも自分で決定できるわけではない。しかし大きな権限をもつため、取引先との関係では注意が必要だ。
  • 要点
    2
    項目例②:顧客の個人情報については、適切な取り扱いをすれば活用に問題はない。ただし、万が一漏洩を起こしてしまった際には、会社として迅速で的確な対処が求められる。場合によっては主務大臣への報告が求められるケースもある。
  • 要点
    3
    項目例③:セクハラ・パワハラにも思い込みが多い。適切な対応を取らなかった場合には、取締役が責任を問われることもある。

要約

代表取締役になれば何でも決められる?

誤りやすいポイント

まずは代表取締役の権限について見ていこう。

強気な〈肉食系〉取締役はこの点についてこう考える。「代表取締役になれば、何でも決定できる」。一方、〈草食系〉取締役は慎重に考える。「社外に対する重要な事項は、取締役会で決定しないといけないのでは」。さて、これらは正しいのだろうか。

本章では、代表取締役の権限がどのようなものかについて述べられている。

代表取締役の権限は万能ではない
DragonImages/iStock/Thinkstock

〈肉食系〉取締役が勘違いしていたように、一般に代表取締役は何でも自分で決定できる権限があると思われがちである。しかし、そんなことはない。法律によって株主総会の決議が必要と決められている事項についてはもちろん、さらに、定款や取締役決議などによって「株主総会または取締役会の決議を要する」とされた事項についても、勝手に決定することはできない。そして権限の範囲内にある業務についても、少なくとも三か月に一度は取締役会に状況を報告する義務を負っているのである。

つまり、代表取締役は大きな権限を持ちつつも、無制限に何でも決められるわけではなく、さらに権限の行使に問題がないか取締役会に監視されてもいるというわけである。

それでも代表取締役の権限は大きい
ferlistockphoto/iStock/Thinkstock

また、もう一点注意すべきことは、代表取締役の権限が制限されるとしても、その制限は実際の取引にどう影響するのかという問題である。先に述べたように、取締役会の決議などで代表取締役の代表権に制限を加えることがある。法律では、こうした場合にこの制限を知らない第三者にはそうした制限があったことを主張することはできないとされている。これはどういうことだろうか。

例をあげて考えていこう。ある会社が、取締役会の決議によって手形振出の権限をA代表取締役に専属させていたとする。そうした制限にも関わらず、B代表取締役が勝手に手形を振り出してしまった場合、どうなるか。B代表取締役に手形振出の権限がなかったことを知らなかった相手方に対して、会社は、「この手形は権限がない代表取締役が振り出したものなので無効である」として支払いを拒むことはできないということになるのである。第三者、つまり、外部の人からみれば、代表取締役は当然こうした権限を持っているはずだと考えられるからである。このため、制限があったことを知らない相手方を保護する必要があり、こうした決まりが作られている。

つまり、代表取締役の権限は、制限されることがあるとはいえやはり非常に大きいものでもあり、その影響力には十分気を付けなければならないのである。

このように、代表取締役の持つ権限については、誤りやすいポイントがいくつかある。この章では、ここで紹介した以外にも大事なポイントを取り上げ、わかりやすく解説してある。

【必読ポイント!】顧客の個人情報が洩れてしまったら?

誤りやすいポイント
Marvid/iStock/Thinkstock

個人情報の保護についての法律問題も解説されている。

ここでも二人の取締役の会話から解説は始まっていく。個人情報の漏洩リスクについて、強気な〈肉食系〉取締役がこう言う。

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要約公開日 2014.08.25
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