本書はある日曜日の昼下がり、大学のゼミ仲間だったアリサ、ヒカル、マサトが恩師とともにミニ同窓会をしているシーンから始まる。ひとしきり昔話に花を咲かせた後、それぞれの近況へと話題が移った。
ラグビー部出身のマサトは、ダイエットが課題だという。学生時代、部活を終えた後に追加で個人トレーニングをしていたマサトの告白に、みんな驚きを隠せない。マサトは「俺って本当に意志が弱いんだよなぁー」とこぼした。
課題を抱えているのは、ヒカルとアリサも同様だった。ヒカルは英語の勉強をし直したい、アリサは今年こそ貯金したいと決心していたものの、うまくいっていない。3人ともそれぞれ目標があり、努力もしているが、途中で挫折してしまっているのだった。
そのとき、3人の話に耳を傾けていた恩師が口を開いた。彼の教え子たちの中で、成功や幸せをつかんだ子たちには共通点があるという。それは、ある物語から「ただがむしゃらにがんばるんじゃなくて、努力の仕方によってはがんばらなくても結果が出せる」と学んだことだ。恩師は3人に、その物語を話して聞かせてくれた。
物語の主人公、ミサキは、両親とともにガンバール国という国に住んでいる。ガンバール国は、誰もが忙しくがんばっている国だ。ミサキは両親から「がんばりなさい」と繰り返し言われることに嫌気がさし、家を飛び出した。
向かった先は、ガンバラン国だ。ガンバラン国は“がんばらない”がルールの国なのに、スポーツが強く、豊かで、幸福度は1位という不思議な国である。
ミサキがガンバラン国に到着すると、そこには驚きの光景が広がっていた。人々がおしゃべりをしながら、あるいは一人でも楽しそうに行き交っている。誰もがスマホを覗き込みながら歩いているガンバール国とは大違いだ。
ミサキはガンバラン王国で、10人の個性的なキャラクターに出会うことになる。同じ服ばかり着ている人、ゲームばかりしている人、宣言する人……それぞれのキャラクターたちから「がんばらなくても結果が出せる方法」を学び、ミサキはガンバール国へと戻っていった。
アリサ、マサト、ヒカルの3人は恩師の話に聞き入り、およそ1週間後、再び原宿に集まることを約束して解散した。次項からは、その会で恩師がレクチャーしてくれた「変わるための10のステップ」のうち、6つを紹介する。
ミサキがガンバラン王国で最初に出会ったのは、いつも黒いセーターとデニムのパンツを履いている男だ。彼は、本当になにかを決める集中力は1日に10回分しかないと考え、服装や食事のメニューを自動化している。
彼が教えてくれたのは、「意志の力には限りがある」ということだ。私たちは、今日がダメでも、明日から強い意志をもってがんばれば成果を出せると考えがちである。だが人間の意志は、無限にどんどんと湧き出てくるものではなく、使うたびに減っていくものだ。簡単なことをやるだけだと少ししか消費しないが、難しいことをやろうとすれば、一気に消費してしまう。
だから私たちがすべきことは、意志の力をなるべく使わないような仕組みを作ることである。細かい決断をしなくていいように、あらかじめ毎回やることを決めておこう。たとえば毎朝の筋トレメニューやいつも着る服の組み合わせ、自宅で勉強する内容などだ。このように簡単なルールを作って繰り返すことで、毎回考えるだけで疲れてしまうということがなくなる。
同じことを繰り返し実行するだけだとつまらなくて長続きしないのではないか――そう思うかもしれない。そんなときは発想を転換して「義務」を「娯楽」に変えてみよう。
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