「戦略」大全

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「戦略」大全
出版社
大和書房
出版日
2014年05月22日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

経営戦略について書かれた書籍は古典から最新の話題書に至るまで、数多く出版されているが、それらで紹介されている様々なテーマを一冊にまとめた書籍は珍しい。

本書は6章構成で、第1~5章は「戦略家になる心構え」「戦略家として考える」「戦略の策定」「戦略で勝つ」「戦略を活かす」というタイトルの通り、戦略の策定から実践までの流れを順に解説している。総花的で一つひとつの内容は深くはないが、企業経営において必要なエッセンスはこれ一冊を読めばざっと復習できてしまう。企業の目的に対してどのように行動すれば良いかを組織全体に周知させる方法や、予想していなかったような出来事に対して対処するための心構えを改めて考え直すきっかけにもなるだろう。

要約を読んでこの本の内容に興味を抱いた方は、ぜひ本書を手に取って第6章で紹介されている様々な戦略ツールに目を通していただきたい。「ポーターのファイブフォース分析」や「ミンツバーグの意図的戦略と創発的戦略」といった馴染み深いものから、「コッターの変革の8段階」「バーゲルマンとグローブの戦略の『賭け』モデル」など経営戦略について少し勉強している方でないと知らないであろうものまで、多くのツールが掲載されている。

経営に携わる方にとっては辞書のように手元に置いておきたい、充実した内容の一冊である。

ライター画像
苅田明史

著者

マックス・マキューン
コンサルタント。英国王立芸術協会フェロー。ウォーリック・ビジネス・スクールでMBAとPh.D.を取得。
「カスタマー・サービス・ホール・オブ・フェーム(顧客サービスの殿堂)」に選出された他、パーソナル・トゥディ誌の「ヒューマン・リソースのスター」としてノミネートされた。
大小様々な企業での経験をもとに、戦略、イノベーション、リーダーシップ、チームビルディングなどについて、コンサルティング、講演、執筆活動を行う傍ら、イギリス国内外のラジオやテレビ、新聞などでも活躍している。

本書の要点

  • 要点
    1
    優れた戦略とは、未来を具体化するために明確な意図を持った行動を計画しつつ、同時に目の前の現実にも対応していくものだ。そのためには「目標は何か?」「可能なことは何か?」「目標達成のために何ができるか?」「新たな機会に反応し、計画を修正すべきタイミングはいつか?」という4つの「戦略に関する基本的な質問」を検討することが重要である。
  • 要点
    2
    理想的な戦略計画サイクルとは、戦略の全体像を描くことに十分な時間をかけ、年間を通じて絶えず社員全員が情熱と工夫を持って取り組むものだ。シンプルかつ、誰もが納得のいく戦略にすれば、社員はその実行に貢献しやすくなり、成功させようという意欲も高まるだろう。

要約

戦略家になる心構え

未来を形づくる
iStock/Thinkstock

企業戦略とは、未来を形づくることだ。戦略は、目標や意欲を達成する方法を具体化するために使われる。

組織の多くは将来を見据えて壮大な計画を立て、この計画はトップダウンで組織に伝えられる。だが、たいていは中間管理職まで届くとそこで止まってしまう。最前線で働く社員にこそ、戦略計画に合わせた体制、プロセス、役割が必要なはずなのに、「壮大な計画をトップダウンで伝える」という旧式のやり方では、肝心の社員に計画が伝わりにくい。

一方、現実は予測不可能な出来事に満ちているため、計画を立てても無意味だと考える人もいる。組織を効率的なものにすれば、不測の事態にも自ずと適応できるようになるというのだ。だが、実際にはこうしたなりゆきまかせの方法では、企業が市場に適応するために必要なことに取り組むようになるのは難しい。

優れた戦略とは、これらの中間を行くものだ。未来を具体化するために明確な意図を持った行動を計画しつつ、同時に目の前の現実にも対応していくのである。そのためには、次の4つの「戦略に関する基本的な質問」を検討することがカギになる。

・目標は何か?

この問いによって、「会社にとって望ましいもの」を明確にすることができる。組織が目標を達成するためにはさまざまな選択肢があるが、それらのなかには矛盾し、相反するものも少なくない。目標の確認は、戦略的な思考をするうえで、きわめて重要だ。

・可能なことは何か?

チャンスを前にすると、過去以上のことができるという感覚が生じやすい。だが、チャンスは、組織がすでに持つ(あるいは獲得できる)資源を考慮し、他社や市場環境などの現実に鑑みたうえで検討すべきである。

・目標達成のために何ができるか?

リーダーシップや組織体制、プロセス、プロジェクト、タスク、役割、製品、サービスなどを連動させ、相乗効果を生み出すことが大切である。

・新たな機会に反応し、計画を修正すべきタイミングはいつか?

未来は完全には予測できない。それゆえ、私たちは次に何が起こるかわからない状態で計画し、決定を下さなくてはならない。

戦略家として考える

リアクションは、計画と同じくらい重要

イケアの創業者、イングヴァル・カンプラードは家具メーカーの近くに住んでいたので家具の販売を始めたが、ライバルの圧力によって商品の仕入れができなくなってしまった。すると次は自社ブランドの生産を開始。ショールームが火災で焼けてしまった際には、巨大なショールームを再建し、顧客が増えてサービスが追い付かなくなると、セルフサービス方式を採用した。イケアの戦略は、予想外の大きなトラブルに柔軟に反応することだったと言えよう。

計画は予測に基づいて策定するしかないが、将来何が起きるかは、完全にはわからない。そのため、計画には限界がある。賢い戦略家は、トラブルに反応することで、戦略の実現を導くものだ。良い反応こそが、優れた戦略をつくるのである。

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要約公開日 2014.10.14
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