パーパスモデル

人を巻き込む共創のつくりかた
未読
パーパスモデル
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人を巻き込む共創のつくりかた
未読
パーパスモデル
出版社
学芸出版社

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出版日
2022年08月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

多くの人が不便や不満、改善の余地を感じているのに、ずっと解決できないまま放置されてしまう――。このような課題は世の中にたくさん存在する。そしてたいていの場合、一組織や一人の力で解決しようとしてもなかなかうまくいかないものだ。複雑な課題を解決するためには、多様な立場の人々が、多角的な視点から、多面的な議論をする必要がある。

とはいえ、同じ問題意識を共有できる人たちであったとしても、同じ方向を向いて協働するのは簡単なことではない。複数のステークホルダーが連帯し、解決に向けて歩み始めるためには、具体的な方法論が必要だ。

本書で提示される「パーパスモデル」は、そのための確かなツールとなり得るだろう。著者が提唱する円型のカラフルな図をつくることで、多様なステークホルダーの役割や目的が可視化され、把握しやすくなる。非常に洗練されており、一目で理解できる形になっているので、まずは要約で紹介する図を見てみてほしい。

これまでのプロジェクトは、少数の意思決定者がトップダウン的に物事を決め、実行するスタイルが一般的だった。一方、これからのプロジェクトには多数のステークホルダーがそれぞれの役割を持って関わることになる。ボトムアップで提示される解決策は、関わった人すべてにとって「自分ごと」にできるはずだ。

パーパスモデルは、これからの時代の問題解決法として、さまざまな場面で活用されるのではないだろうか。まずは本書でその詳細を知ってほしい。

ライター画像
大賀祐樹

著者

吉備友理恵(きび ゆりえ)
株式会社日建設計イノベーションセンタープロジェクトデザイナー。1993年生まれ。神戸大学工学部建築学科卒業。東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻修士課程修了。株式会社日建設計NAD室(Nikken Activity Design Lab)に入社し、一般社団法人Future Center Alliance Japanへの出向を経て現職。都市におけるマルチステークホルダーの共創、場を通じたイノベーションについて研究実践を行う。共創を概念ではなく、誰もが取り組めるものにするために「パーパスモデル」を考案。

近藤哲朗(こんどう てつろう)
ビジュアルシンクタンク「図解総研」代表理事。1987年生まれ。東京理科大学工学部建築学科卒業。千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻修士課程修了。面白法人カヤックでディレクターを務め、2014年株式会社そろそろ創業。「ビジネスモデル図解」で2019年度GOOD DESIGN AWARD受賞。2020年「共通言語の発明」をコンセプトに「図解総研」を設立。共同研究によりパーパスモデルを考案。主な著書に『ビジネスモデル2.0図鑑』(KADOKAWA)、『会計の地図』(ダイヤモンド社)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    パーパスモデルは、多様なステークホルダーが一緒に活動するための「パーパスを中心とした共創プロジェクトの設計図」である。カラフルに色分けした図によって、各ステークホルダーの活動や目的を可視化する。
  • 要点
    2
    これからの時代、活動の中心になるのは「権力」ではなく「パーパス」だ。
  • 要点
    3
    東京・下北沢周辺エリアにおける再開発プロジェクト「BONUS TRUCK」は、地域のプレイヤーや住民を巻き込み、当初想像もしていなかったような形になった。

要約

パーパスモデルとは何か

パーパスモデルの定義と強み

パーパスモデルとは、多様なステークホルダーが一緒に活動するための「パーパスを中心とした共創プロジェクトの設計図」である。本書において、パーパスとは「より良い社会を実現するための行動原理」と定義されている。

利益追求のためのプロジェクトとは異なり、共創プロジェクトには多様なステークホルダーが存在する。プロジェクトを引っ張る原動力となるのがパーパスだ。パーパスが言語化され、共有されることで、向かう方向にズレがないか確認できるとともに、新たなステークホルダーを巻き込めるようになる。また、それぞれのステークホルダーの役割と目的を明確にし、受発注の関係を超えた多層的な価値の循環が生まれる。その設計図となるのがパーパスモデルだ。多くのステークホルダーがいる共創プロジェクトの活動を可視化、整理するのに最適なモデルである。

パーパスモデルの構成
図解総研提供

パーパスモデルの図は上段と下段に分けられる。

図の下半分には「主体的な共創パートナー」、つまり共通目的に向かって主体的に動くステークホルダーが置かれる。「主体的な共創パートナー」の条件は、共通目的に賛同していること、リソースを提供していること、主体性があることの3点だ。具体的には、プロジェクトを主体的に進める組織や、同じ課題意識を持って一緒に取り組むパートナー、プロジェクトに貢献してくれるユーザーなどが当てはまる。

図の上半分には「共創に関与するステークホルダー」が置かれる。場の利用者、アプリやサービスのユーザー、顧客企業、対価を払って関与するステークホルダーなどがその例だ。

一番外側のエリアには「ステークホルダーの名称」を入れる。ステークホルダーを「企業」「行政」「市民」「大学・研究機関・専門家」に分類し、4色に塗り分けて、それぞれの位置に配置する。

「ステークホルダーの名称」の内側のエリアには、各ステークホルダーが担っている役割を入れる。具体的には「代金を支払う」「意見を届ける」「企画する」などといったものだ。

さらにその内側には、各ステークホルダーがプロジェクトに関わる動機や合理的な理由を指す「目的」を入れる。「ネットワークを広げたい」「サービスを利用したい」「知識を役立てたい」など、「~したい」の形で統一するのがおすすめだ。

真ん中の円には「共通目的」を入れる。これは、ステークホルダーが共有しているプロジェクトのパーパスを言語化したものだ。

パーパスモデルのつくりかた

パーパスモデルは6つのステップでつくられる。

第1ステップは「パーパスモデルをつくる目的を決める」。目的を決めるとアウトプットの形式が決まる。1枚のパーパスモデルのみで表現する、時系列に沿って複数のパーパスモデルをつくる、複数のパーパスモデルを比較する形式にするなどといった具合だ。

第2ステップは「ステークホルダーとその役割を洗い出す」。漏れなく書き出すために「そのプロジェクトによって影響を受ける人は誰か」「そのプロジェクトに直接的に/間接的にかかわっている人は誰か」「企業、行政、市民、大学・研究機関・専門家それぞれの属性に当てはまる人はいるか」という観点でチェックしよう。

第3ステップは「共通目的を言葉にする」。「誰が」「何をどのようにして」「どんな状態にする」という3つの要素を入れ、具体性をもたせるのがおすすめだ。

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要約公開日 2022.12.09
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