マッキンゼー成熟期の成長戦略

2014年新装版
未読
マッキンゼー成熟期の成長戦略
マッキンゼー成熟期の成長戦略
2014年新装版
未読
マッキンゼー成熟期の成長戦略
出版社
masterpeace
出版日
2014年08月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

成熟期において成長戦略を志向するというテーマは、日本だけでなく世界で長きにわたって、伝統的な大企業で注目を浴びてきた課題であり、既に多くの書により論じられてきた。その方法論は確立されているかのように見えるものの、企業文化から組織の柔軟性、強力なリーダーの存在など多岐にわたる対応が必要なことから、この一大テーマに成功し続けることは容易ではない。

本書は、1981年に出版された『マッキンゼー成熟期の成長戦略』(プレジデント社)を元に、直近で行われた大前研一氏へのインタビューや図版のカラー化などを施して、復刻された新装版である。既に古典とも言える書が蘇っているのは、そこに不変の真理が記されているからに他ならない。タイトルを見ても、多くの日本企業において未だ重要なテーマであることがわかるように、今でも重要な内容に対して大前研一氏の知見が込められた本書の内容は、色あせることがなく、本テーマの核心にせまったものである。

本書では、全社戦略の指針から、魅力的なプロジェクトの創出、組織を活性化する方法、リーダーシップのあり方まで、全体的な事項を扱っており、成熟期の成長戦略を考えるに当たって参考とすべき内容が網羅された決定版とも言える内容である。本書の成り立ちゆえ事例の年代が古い点を差し引いても、今の事業環境にも大いに活用できる指針が多くこめられており、成熟期という難しい環境を打破する戦略を志向する経営者は、一読することをお薦めしたい。

ライター画像
大賀康史

著者

大前 研一(おおまえ・けんいち)
1943年、福岡県若松市(現北九州市若松区)生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、 マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー日本社長、本社ディレクター、アジア太平洋地区会長等を歴任。94年退社。96~97年スタンフォード大学客員教授。97年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院公共政策学部教授に就任。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。オーストラリアのボンド大学の評議員(Trustee)兼教授。また、起業家育成の第一人者として、05年4月にビジネス・ブレークスルー大学大学院を設立、学長に就任。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開学、学長に就任。02年9月に中国遼寧省および天津市の経済顧問に、また10年には重慶の経済顧問に就任。04年3月、韓国・梨花大学国際大学院名誉教授に就任。『新・国富論』、『新・大前研一レポート』等の著作で一貫して日本の改革を訴え続ける。『原発再稼働「最後の条件」』(小学館)、『洞察力の原点』(日経BP社)、『日本復興計画』(文藝春秋)、『「一生食べていける力」がつく大前家の子育て』(PHP研究所)、『稼ぐ力』(小学館)、『日本の論点』(プレジ デント社)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    現代の経営トップに必要なものは、「グローバル」「ファイナンス」「ICT」の3つのスキルである。特に「グローバル」に関しては、10年後、20年後を見据えて、インドネシア、フィリピン、バングラデシュなど、人口規模で7000万人~2億人程度の市場を見据えておく必要がある。
  • 要点
    2
    低成長下における新規事業を立案するに当たっては、競合の動向を意識する必要があることから、市場の魅力度の重要性以上に、自社の強みに立脚した計画を組み立てるべきである。
  • 要点
    3
    成熟期で成長戦略を志向する際には、企業の風土を活性化するとともに、新製品を全社の事業戦略にマッチしたものとし、更にマーケティング手法を刷新するなど、多岐に渡る対処が求められる。

要約

大前研一氏特別インタビュー(新装版発行に寄せて)

Daniel Kaesler/Hemera/Thinkstock
グローバルな「皮膚感覚」を磨け

現代の経営トップに必要なものは、「グローバル」「ファイナンス」「ICT」の3つのスキルである。トップになるまでに、これらの能力を磨いていかなくてはいけないだろう。過去はアメリカ市場一本でグローバル戦略の多くを語れた。最近の10年は中国の時代だったと言えよう。

それでは10年後、20年後を見据えて、これから注目すべき市場はどこかというと、アジアではインドネシア、フィリピン、バングラデシュなどになってくる。人口規模で、7000万人~2億人程度の市場を見据えておく必要がある。

そのため、社長になる準備をするに当たっては、その国の人の考え方を理解するために、友人を5人~10人ほど作り、電話一本でわからない事をすぐ聞けるようになることが望ましい。このようなヒューマンネットワークを確立していくことが重要だ。

グローバル市場を開拓するにあたって、ヨーロッパ本部やアジア本部という地域本部を設立する会社はうまくいかないことが多い。大くくりで考えるのではなく、インドネシア、フィリピンなどといった個々の国を選んで攻めていくことが求められるのである。つまり、一国一国を担う人材を選出し、とことんその市場に拘った方が良いのだ。

無謀であったり、分別のない果敢な経営者が戦後の日本を引っ張ってきたが、最近は独裁者型の意思決定をできるトップが減ったことは問題だろう。グローバルな皮膚感覚を身につけて、リスクを取って新しいものを生み出していくような挑戦が、これからのトップに求められる重要な要素である。

企業環境にどんな変化が起こっているか――成熟社会こそ成長志向を

低成長下における企業運営

成熟したマーケットで起こる現象として、マージンが著しく低下する傾向がある。厳しい環境下において、収益志向型の運営を行い効率化のみに注力していると、中長期で見たときの営業利益は低迷しがちだ。一方で、成長志向型で運営した場合は、当初は人を含めた固定費投資に苦しみ収益性が一時的に悪化しても、中長期では営業利益を改善していくことが多い。成熟社会においては、成長志向が収益維持のために不可欠という、過去想定し得なかった事態が起こるのである。

コスト競争力か差別化戦略か
pablographix/iStock/Thinkstock

伸び悩んでいるマーケットの中で、限られたパイの取り合いをする際には、相手企業に対してどのように競争優位を確立するべきだろうか。企業戦略の大前提にあるように、価格競争力で徹底して勝つことが一つの方向であろう。

しかしそれが難しい場合には、正面から真っ向勝負を挑むのではなく、

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要約公開日 2014.11.28
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