実践していることは3つあります。
1つめは「1%の素敵な人に出会いたいならば、100%の人々と積極的に会うべき」という教え。これは自著『経営者の手帳』(あさ出版)にも書いたことです。普段、私に相談したいという方が多数いらっしゃいますが、基本的には拒まず、お昼休みなどを利用してすべての方にお会いするようにしています。相手が何かしら困っているのなら、その方に手を差し伸べるのは自然なことです。
欲求5段階説を唱えた心理学者マズローは晩年、「自己実現欲求」よりもさらに高次な欲求として「他己実現欲求」が存在するといいました。これは、他人の自己実現を達成するのを手助けしたいという欲求です。こうした「利他の精神」と呼べるものに応じてきたことで、中小企業の研究者だった私の専門のフィールドが障がい者、社会、行政、地域へと広がっていったのだと思います。
2つめは、「情報発信を続けること」です。私は講演や書籍の執筆などを通して、「私はこんなことに興味があります。私はこんなことができます」というのを発信してきました。価値ある情報は人を通じて入ってくるものです。もちろん情報の受信も必要ですが、今後はいっそう発信力が大事になってくると思います。
そして3つめは、「現場を大切にすること」です。あらゆる課題解決のカギは現場にあります。私は8000社以上の企業に足を運び、企業の実地調査・アドバイス・研究を行なってきました。もちろん統計データなどで「全体」をつかむことも必要ですが、「全体」というのは「個」の合わさったもの。「個」がわかってはじめて真の理解につながるのです。大学院の指導でも学生たちにも、「マクロとミクロの両面から事実に迫るようにしなさい」と伝えています。