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インタビュー
藤村編集長に聞く、チーム力を活かすファシリテーションの秘訣
サイボウズ式のすごさは「会議」にあり!
「世界中のチームワークを向上させる」というミッションを掲げ、コミュニケーションや情報共有を活性化させるグループウェアを提供するサイボウズ株式会社。同社が運営するサイボウズ式は、チーム力向上の解決策を提供するだけでなく、問題提起も行っており、オウンドメディアの成功事例として取り上げられることもしばしば。

こうした成功の裏には、サイボウズ式の編集会議のすごさがあります。今回は、会議のファシリテーター役兼、サイボウズ式編集長の藤村 能光(ふじむら よしみつ)さんに、次々に面白い企画が生まれ、実現していく会議の秘訣を伺いました。
藤村さんは、Webメディアの編集記者としてキャリアをスタートさせ、その後、サイボウズ株式会社で無料グループウェア サイボウズLiveのマーケティングを担当。自社メディア「サイボウズ式」の立ち上げに参画し、2015年1月よりサイボウズ式の編集長を務めておられます。
「単なる進捗管理に終始するのではなく、キラリと光るアイデアが生まれる会議にしたい」。そんな思いを現実にするコツをお届けします。

サイボウズ式編集会議は何が違うのか?



――サイボウズ式の編集会議は、一般的な会議とは違うと伺ったのですが、どんな会議なのでしょうか。 

藤村 能光さん(以下、敬称略):一般的な会議というと、プロジェクトマネジメント型が多いと思います。各担当者が業務の進捗を報告して、滞っているところがあれば、マネージャーがその解消策を提示する、というような。もちろん、やるべきことが明確なプロジェクトを進める際には、このスタイルが有効です。

ただ、新たに企画を考え、アイデアを創発することが目的となる会議では、チームとしての共通認識をつくり、メンバーそれぞれのベクトルを近づけていくことが大事になります。そこで、サイボウズ式の編集会議では、進捗管理はあまりせずに、「自分たちがめざすのってこういう方向だよね」と、すり合わせるようにしています。

もともとサイボウズは「100人いれば、100通りの働き方」とうたっているように、個人の多様性を非常に重視している会社です。その意識を、サイボウズ式の編集会議にも浸透させるようにしています。会議をするときには、個々人の考えを引き出しながら、それを掛け合わせてチームとして新しい企画を生み出していく点を意識していますね。



――会議の仕切るうえで、「引き出すこと」「考えを掛け合わせること」を大事にされているんですね。

藤村:私自身の編集会議での役割は、ファシリテーターやモデレーターに近いです。メンバーそれぞれの考えや興味関心を把握して、本人が言語化できていなかった考えを引き出していくことを心掛けているからです。「この人はここに強い思いを持っているんじゃないか」「これが強みではないか」と仮説をたてて、やりとりの中で検証していくという感じですね。

もちろん、単に何でも自由に話せばOKということではなく、企画として仕上げていくには、一人一人のアイデアと、サイボウズがめざすものをすり合わせることが欠かせません。

例えば、あるメンバーが「ミッション志向のチームのつくり方を提唱している著者にインタビューをして、記事にしたい」と提案したとします。その際は「なぜミッションに着目したのか」と、メンバーの興味を探りながら、企画のコンセプトやターゲット、記事が提供する価値を明確にしていきます。そこに、サイボウズ式としてこの企画を実現する理由や文脈(コンテクスト)をすり合わせます。サイボウズならではの価値を企画に込めるにはどうすればいいか、とアドバイスする感じです。このように、メンバーの想いと組織の目標の橋渡し的な役割を果たすことも意識しています。



――メンバー一人一人のことをとことん想像しながらも、組織の目標ともすり合わせていくんですね。

藤村:ファシリテーターの役割として意識しているのは、メンバーの「できること(can)」「やりたいこと(want)」、会社として「やるべきこと(must)」の3つの円の重なりを見定めていくことです。メンバーの強み(can)ややりたいこと(want)は普段のコミュニケーションから把握しておき、一つ一つのアイデアについて対話を重ねる中で、会社のミッションとの重なる部分(must)を見つけるようにします。「やりたいこととできることと、サイボウズ式としてやるべき理由がそろっているといいよね。これはなぜサイボウズ式で企画にすべきだろう?」といった問いかけをよくしています。

このプロセスは、メンバーの表情や場の空気といった、その場でしか感じ取れない非言語的なところも大いにあります。そういう意味では、編集会議のファシリテーションはアドリブ的な要素も大きいですし、音楽でいうジャムセッションみたいなものですかね。



思いつきも歓迎! 編集会議は「チーム壁打ち」



――藤村さんは、こうしたファシリテーションスキルをどうやって培ってこられたんですか。

藤村:前職でメディアの記者や編集者をしていたときの経験が影響しています。インタビューや対談では、相手が自分でも言語化できていなかったもの引き出すことを意識していました。ただ、会議でメンバーからアイデアを引き出し、掛け合わせていくファシリテーションを明確に意識したのは、サイボウズに入ってからです。

記者の仕事って、編集長に企画のゴーサインをもらったら、自分で取材して記事を書く、というように一人で完結できるんですね。当時は自分個人の経験値を上げることに注力していました。

ところが、ある程度の年次になると、自分一人の成長だけめざしていても、伸び率がだんだん下がってきて、限界がくるんです。一方、チーム全体で成長をめざすなら、自分にはない要素を互いに補い合えるので、さらなる成長ができます。サイボウズはチームの会社なので、入社してからは、「サイボウズ式編集部というチームだから、できること」に注力したいと思いました。トライアンドエラーをくり返すうちに、今のやり方が見えてきたという感じですね。



――そこから今のファシリテーションスタイルが生まれていったんですね。

藤村:あとは、サイボウズ式の特殊な立ち位置も影響しています。サイボウズ式のメディアの目的は、コーポレートブランディングを実現することです。メンバーは広報やマーケティング経験者が多く、新聞社や出版社とちがって、編集部全員が最初からメディアをつくりたいと思っているわけではないんです。

「これを世に発信したい」という思いを抱いている人以外は、いきなり「メディアの企画を作ってほしい」と言われても、けっこうつらいはず。そこで、トップダウンで指示するスタイルより、企画になる前段階の、ふとした気づきや思いを引き出すスタイルのほうが、サイボウズ式のチームには効くんじゃないかと考えたんです。

アイデアの良し悪しをすぐに評価せずに、「思いつきでもいいよ」と歓迎する空気をつくれば、「じゃあ言ってみようかな」となる。アイデア出しのハードルが下がりますよね。



――たしかに、そう言ってもらえると安心して話せますね!

藤村:一人でゼロから企画書をつくるのは、かなりハードルが高いと思います。ですが、自分の関心のあるテーマについて誰かと話しているうちに、自然と頭の中が整理され、「そうそう、やりたいのはこれ!」と視界が開ける瞬間ってありますよね。
だから、壁打ち相手の存在は非常に貴重です。そういう意味でサイボウズ式の編集会議は、壁打ち相手が複数いて、あちこちのボールが飛び交い、思いつきがアイデアに昇華されていく「チーム壁打ち」みたいな場かもしれませんね。



画面にはアジェンダのみ表示。誰かが「登壇者」にならないため議論が活発に。
画面にはアジェンダのみ表示。誰かが「登壇者」にならないため議論が活発に。


――アイデアがポンポン出やすい雰囲気づくりのために、会議の前後で藤村さんが実践されていることってありますか。

藤村:実は、会議前にすでに雰囲気づくりは始まっています。普段からオンラインでアイデア出しをしておくことが、会議の質を左右するんです。サイボウズのクラウドサービス「kintone」のコミュニケーション機能をフル活用して、「このアイデア、面白そう!」と思ったら、「ブレストのスレッド」に気軽に書き込めるようにしています。すると、ほかのメンバーがコメントをしてくれるんです。



――ブレスト用のスレッドがあるんですね!

藤村:オンライン上のアイデア出しで大事にしているのは、ささいなコメントのやりとりです。渾身のアドバイスでなくても、誰かのアイデアに対して「面白そうだね~」の一言でかまわないんです。「少なくとも一人は共感してくれる人がいる」とわかるだけで、企画を練る後押しになりますから。



「取材に行きたい!」という声が仲間の応援で徐々に具体化されていくスレッド
「取材に行きたい!」という声が仲間の応援で徐々に具体化されていくスレッド


――このやりとりって、これだけ膨大だと振り返るのが大変じゃないですか?

藤村:これだけだと、良いアイデアの種も埋もれてしまいますが、「この企画は、編集会議でたたこう」となれば、数クリックで企画アプリに登録して、データベース化できるようにしています。だから、情報共有のためにざーっと流れていくフローの情報と、特定の目的のために蓄積するストックの情報を自在に行き来できる。このように、アイデア共有から企画化までの流れを作っています。

効率化で確保できた時間は、メンバーとのコミュニケーションにできるだけ充てます。私たちのチームでは、業務時間でもメンバーと一対一で「ザツダン(雑談)」の時間をとっているんです。



――雑談タイムもあるんですか?!

藤村:はい、本当に雑談をしているんですよ。雑談していると、お互いに自分のことをさらけ出しやすくなるし、安心感も生まれてきます。その間に、一人一人のキャラクターや得意分野、関心を知っていく。雑談しているときって、その人の価値観がにじみ出てきやすいですよね。

相手の個性がわかると、会議中に関連したテーマが出たときに話を振れるので、その人が力を発揮しやすくなるというメリットもあります。こんなふうに、効率化できるところと、対面でじっくり時間をかけるところとのメリハリをつけることが、実り多い会議につながっていくんです。



「発散」と「収束」を使い分ける



サイボウズ式への情熱が藤村編集長の言葉からにじみ出る
サイボウズ式への情熱が藤村編集長の言葉からにじみ出る


――編集会議のすごさの秘密がだんだんわかってきました……! 会議の中でも、一般企業に勤める人が応用できる点ってありますか。

藤村:企画を実現するまでの流れを、2つのプロセスに明確に分けることでしょうか。「みんなで意見を出し合い、方向性を決める」というプロセスと、「ゴーサインが出てから担当者が完成させる」というプロセスで、コミュニケーションのやり方を変えています。

サイボウズ式では、企画のゴーサインが出る前までは、全員の考えや意見を尊重します。実は、この「まで」というのがミソです。
意見を出し尽くして企画の核を固めたら、後半では、担当者と編集長の一対一の壁打ちに移行します。ここからは、担当者が主導で動き、詳細を詰めていきます。それぞれ、ブレインストーミングで言う「拡散」と「収束」に位置づけられるかと思います。



――発想を広げていくフェーズと、企画を詰めていくフェーズとで、進め方を変えているんですね。

藤村:もちろん自由闊達(かったつ)に議論することも大事です。でも、アイデアを絞り込みながら、「これだ」と決めた企画を磨き上げて、実際に形にするところは担当者がしっかり主導権を握ったほうが、進みやすいと考えています。

企画を実現させるプロセスでは、明確な方針や判断基準を持っておき、それと照らし合わせることも必要になります。Webの記事をつくるうえでは、細部にわたって注意を払っていますね。読者が脊髄反射的にネガティブな感情を抱いてしまわないかなどの点は、しっかり確認します。「記事を読んでくれた読者を、誰も不幸せにしたくない」という思いが強くあるからです。そのうえで、「建設的な議論が生まれるような内容か」、「社会が少しでも良い方向にいくことに寄与できる記事か」という点を重視しています。



(後編はこちら)



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