「生きた知恵」を血肉にして新市場をつくるパイオニア
株式会社サーキュレーション 代表取締役 久保田 雅俊

企業の経営課題と、高い専門性を持つ個人のスキルとをマッチングさせ、効率的に解決へと導く実働型コンサルティングサービスを提供しているサーキュレーション。企業の変革を新しい働き方で解決するサービスを生み出し続ける久保田氏には、実は幼少期から膨大な本を読み、「生きた知恵」を血肉にしてきたという、無類の読書家の一面があった。インタビューを通じて、彼の読書観と経営哲学に迫る。

『生きた知恵』の宝庫で過ごした幼少期革命家との出合い

久保田さんの読書観についてお話をお聴きできればと思います。

久保田雅俊氏(以下、久保田):本は私の人生の中で大きな存在です。静岡県富士川町という田舎で緑に囲まれて育ったのですが、学習塾を経営していた父は、塾だった教室を丸ごと書庫にしてしまうほどの本の虫でした。塾長であった父の厳格な教育方針のもと、テレビとゲームは一切見させてもらえず、父が厳選した本と映画だけが娯楽でした。誕生日やクリスマスもプレゼントは本で、家の中での数少ないエンタメだったため、読書の習慣は自然とついていました。

幼稚園のころから偉大な画家や発明家など、教養のベースとなる伝記はすでに読んでしまっていたため、小学5年生くらいからは、チェ・ゲバラや毛沢東といった革命家の伝記にハマっていました。中学生になると、インプットが混じり合う機会が増えます。例えばボブ・マーリーの音楽を聴いたら、彼の人生や政治の話にも興味をもつようになり、彼について書かれた本を読んで、音楽の理解がいっそう深まっていきました。

本に囲まれた我が家は、まさに「生きた教材の溜まり場」。生きる知恵しか意味がないと思うようになったのも、本の影響が大きいですね。家の本と学校の教科書の違いを感じ、授業はつまらないなと思っていました。教科書の内容は平均的なものばかりで、多様性も失われている。考えさせられることも少ない。ですが、本だとグッとその世界に入り込めるし、生きた知恵を学べますから。勉強は全く好きではありませんでしたが、高校生・大学生になっても、本はずっと読んでいましたね。

「本ほど安いものはない」

社会人になってからは、どういったジャンルの本を読んでいますか?

久保田:社会人になってからは年間の読書目標を設定して読んでいました。本当は、読書量に目標なんて立てたくありませんでしたが、インプットによって仕事のアウトプットの質が変わると考えていたからです。20代で会社員だったとき一番、本を読んだ時期で、「1年で50冊」など目標を立てていましたね。

起業してからは、事業の立ち上げに集中するため目標は決めていないのです、必要な情報が変わるスピードが非常に速い。少しでも興味がわいたら、まず本を買ってしまいます。数ヶ月に1度は丸一日休む時間を取るようにしていますが、そんな日にまとめて数冊読んでいますね。本ほど安くインプットできるものはないと思っているんです。例えば孫正義さんに1時間取っていただくとしたらかなりの努力を要しますが、彼の本を読めば、彼が成功するまでの貴重なプロセスを、たった1,500円程度で学べるのですから。

こういう本の捉え方は本当に大事だと思います。読書の基準は何ですか。

久保田:カーネギーやドラッカーのように何度も読み返す本と、新しくインプットを得る本を分けているんです。自己啓発書は100冊読むと内容がパターン化できるので短時間で新しいものも読むようにしています。あとは経営者の本が非常に好きですね。本はドカ買いする方で、書店でもアマゾンでも買います。平日はターミナル駅の書店、休日は代官山蔦屋にも行きますね。Kindleは移動中の読書に使います。気になる本はエバーノートにメモして後で買うんです。紙の本の所有欲も強いので家に本がどんどんたまってしまい、衣替えのたびに本も断捨離しています。

ビジネス書以外も読まれますか。

久保田:元々は小説を読むのも好きですね。小説を読んでいるときって、晴耕雨読な生活のような感覚。普段とは違う時間が流れているんです。ですが、今は生きる知恵を仕事上で毎日インプットできるという恵まれた立場にいるため、小説の世界に浸る必要はないなと思い、あえて読むことをやめています。例えば40年のキャリアを築かれたシニアの方々の40年分の知恵や知見をお聴きすることができる。自己啓発本を読んでいたことは彼らの話を理解するための素地になっていると思いますが、彼らから直接聞くお話には到底かないません。

今まで読んだ本のなかで一番感銘を受けた本はどの本ですか?

久保田:カーネギーの『人を動かす』と『道は開ける』ですね。初めて父からプレゼントされた人生哲学系の本で、確か小学生低学年の時。つきあいが古いんです。最近の本だと『HARD THINGS』が面白かったです。同じ起業家として「自分なんてまだまだ甘いな」と思いましたね。

あとはドン・ファンの本は非常に好きですね。民俗学者の著者がインディアン社会に行って、神様に会いに行くというストーリーなのですが、その神秘性がすごいんですよ。80年代のヒッピーの文化のコアなところを描き出していて、人間の価値とは何かという究極の問いにぐっと迫ってくるんです。

本を読む際、何か工夫をしていますか?

久保田:20代のころは 、本の要約をして会社の仲間と共有していました。直属の役員だった方から、「本の内容を1分で話せなかったら読む意味はない。紙一枚で説明できなかったら頭に入っていないのと同じだ。」と言われ、自分を鍛え上げたいと思っていた私はそれをそのまま実践していました。その方も、何度も読み返すに値する深みのある本と、ぐるぐる新しく読む本を明確に分けており、体に染み込ませるように読んでいた本は数冊だったようです。

御社では入社する社員への推薦図書があるとお聞きしました。どんな本を選ばれているのでしょうか。

久保田:「組織の外部化」や「新しい働き方」をテーマにした本を薦めています。学術的な本もあれば、『ワーク・シフト』や『アグリゲーター』などの多様な本があります。その本で提示された世界が正解だというわけではないですが、私たちの会社の思想や理念に近い本として薦めています。ベンチャーは未来を創造するところがあり、私たちが挑戦する領域には誰もが知っているような業界名が存在しない。でも、そこに付随する情報については圧倒的プロでないといけないと思っているので、その分野の本は徹底的に読みなさいと社員には言っています。

外部人材で社会活性を目指す

未開拓のマーケットに切り込んでいるのがNOMADKOMONという御社のサービスですが、サービスを始めようと思ったきっかけは何でしたか。

久保田: 父が倒れて入院した21歳のとき、学生時代に立ち上げた事業をやめてサラリーマンになろうと決めました。そのとき将来、次の三つのことを成し遂げようと思いました。一つは「0から1」をつくる新領域を生み出すこと、二つ目は社会問題を解決するような社会性の高い事業であること。三つ目は、その事業で世界にいくということ。こうなると私が読んできた革命家の世界なんですよね。

人材の会社に入ってからは、営業や人事コンサル、子会社の社長など、目の前の仕事を徹底的にやり、社会問題を勉強し続ける中で「この分野だ」と定まっていきました。

直接のきっかけは、毎週末に事業計画書を書いて、まさにトップレベルのシニアの方々にお会いしてきたときに、「彼らは外部人材として複数の場所で強みを活かした方がメリットがあるのに、なぜ雇用という関係に縛られているのだろうか?」という課題意識が強まりました。また、「この人たちなら通用する」という方々と接した経験が後押しになりましたね。

採用コンサルを通じて、企業側の課題も知っていたので、NOMADやKOMONのようなサービスなら両方の課題を解決できると考えたんです。

素晴らしい人材を社会に送り出せるというのが決め手になったのですね。

久保田:社会活性に貢献できるというのも、サービスを始めた理由です。平均寿命が80年の時代になったにもかかわらず、雇用条件は昭和の時代と大きくは変わっていない。本当に能力のある人材が複数社で専門性を活かして活躍できる仕組みをつくりたいというのが、ずっとモチベーションになっていました。未開拓のマーケットを前にして、「社会人になる前から考えていた領域はここだ!」と思いました。

特定の領域において非常に優れた人は、自分自身の強みや価値を明示しづらいため、その人に合った価格を調整する機能が効きにくい。能力や実績をWEBで示しにくい分野であっても、自分に合う会社をリアルにつなげるという仕組みのクラウド化に挑戦したいですね。個人の知見が国境を越えて移動するグローバルサーキュレーションの時代では、働き方にもっと多様性があるべきです。

御社のサービスに登録されているビジネスノマドはどんな方々なのですか。

久保田:主に三種類います。ボリュームゾーンである一つ目は、事業会社で人事や広報など経営課題に付随するテーマにおいて経験値が強い人。二つ目はコンサルファームで働いていた人やFAなど、専門性を可視化しやすくメソッドがある人たち。三つ目は、これまで培ってきた知見を複数の会社でアウトプットしたいと考えている起業家ですね。4,000人のご登録者様のうち4割をビジネス系ノマドの方が占めています。

ビジネスノマドの方々の能力をどのように評価してマッチングしているのでしょうか。

久保田:ノマドの方とは最初必ず1時間半の面談をします。重視しているのは提案の具体性。コーディネーターが「どんな強み、どのような課題解決方法を持っているのか」を多面的にヒアリングします。そして、実際の企業の案件に対する提案を一緒に作っていき、現場で企業に刺さる提案ができているかを評価します。質を担保するため、案件が完了するまでノマドのフォローをします。リピート率は上昇しており、毎日新しい働き方を生み出している会社になってきました。今後は地方の企業の課題解決や、グローバル展開も目指しています。

1時間の専門家ヒアリングサービスX-BOOKは、NOMADやKOMONを補完するサービスという位置づけでしょうか。

久保田:大きく分けると同じです。オフラインで提供しているNOMADやKOMONでは、プロのノマドが長期的に実働でプロジェクトに携わります。一方、スポットの課題をオンラインで解決するのがX-BOOKです。例えば、自動車業界に参入したい企業が新商品を開発するときに、「車のこのパーツを開発するときの生産の仕組みはどうなっているのか」といった「人に属した知識」をクラウド上で専門家から聞くことができます。もちろんオンライン、オフライン両方が必要ですが、ナレッジワーカーのナレッジはオンラインでも流通すると考えています。

歴史を俯瞰的に見ると、物事が循環していく面と、新しい革命を起こしていく面の両方があると思っています。サーキュレーションの社名には、「知見や経験の循環」という意味だけでなく、過去の良いものを大事しつつ新しいものを取り入れることで好循環が生まれる社会を作りたいという思いも込めているんです。

新しい市場を作り出そうとする姿に大きな刺激をいただきました。ありがとうございました!

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文責:松尾 美里 (2015/05/28)

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