フロム『愛するということ』読書会イベントレポート
大嶋祥誉×神楽坂モノガタリ×フライヤー

1956年に出版されて以来、ずっと読み継がれ、世界的なベストセラーとなっているエーリッヒ・フロムの名著、『愛するということ』。安易な恋愛のノウハウ本ではなく、愛の本質を分析し人間の本性を学べる名著です。

ビジネスパーソンにとってはパートナーだけでなく、上司や部下に対しても愛をもって接することで、仕事もスムーズに進むようになるはず・・・!

そこで、マッキンゼー出身のビジネス書作家、大嶋祥誉さんをファシリテーターにお迎えして、『愛するということ』を読み解く読書会ワークショップを開催しました。大嶋さんは、アカデミックな世界では知る人ぞ知るシカゴ大学大学院で人文科学の研究をされ、教養とクリティカルシンキングを鍛えられた方。

まだ本を読んでいなかった方や、昔読んだのに内容をあまり覚えていないという方にフライヤーの要約をお配りし、大嶋さんと参加者のみなさんが熱い議論を繰り広げた読書会は大成功に終わりました。

開催地は、コーヒーの香りと、大人な雰囲気の漂う神楽坂モノガタリさん。

今回は、読書会の模様をお届けします!

「愛すること」は本当に技術なのか?

愛するということ
愛するということ
著者
エーリッヒ・フロム 鈴木晶(訳)
出版社
紀伊國屋書店

今回の読書会で集まったのはおよそ20人。4~5人一組になってテーブルを囲み、大嶋さんが用意したワークシートに書き込んで、あとから全員の前で発表する、という形で進んでいきます。最初の質問は……

「あなたにとって『愛する』とはどういうことですか?」

いきなり深い質問……! 

参加者の間に緊張が走りますが、大嶋さんの「他人と比較しないで『私はこう思う』というのを話して」という優しい一言に背中を押され、次第に心の声が言語化されていきます。

「相手が幸福感を感じられるかどうかが愛することの本質」

「知らない人を愛することはできないから、まず相手に興味と持つことが愛の始まり」

「自己との一体化」

などなど、徐々に温まってくる参加者のみなさん。

「愛するとは?」と自問し、それぞれの答えを書いていく
お酒を飲めば、ワークシートにも本音が書けます

大嶋さん「マザーテレサも『愛の反対は、無関心』と語っているように、その対象に関心があることが愛の出発点です。実はこれって恋愛や家族関係にとどまらず、職場でのコミュニケーションやリーダーシップが必要な場面でも当てはまるんです。大げさに聞こえるかもしれませんが、相手に興味を持つことが、相手の成長のために惜しみなく気づきやサポートを与えるリーダーシップにつながっていくんです」

なるほど、「愛」と言われるとプライベートのことのように思えてしまいますが、実は仕事をスムーズに進めるためにも必要なんですね!

でも、「愛する」という技術を、学んでいこうという人が少ないのは、なぜでしょうか?

大嶋さん「その原因は、たいていの人が愛の問題を「いかに愛されるか」とか「どうやったら恋に落ちるのか」という受動的なものとして考えているからです。そうではなく、「愛する能力をどう高めるか」という観点で感がることが重要なんですね。

フロムは本当に成熟した愛を、『自分の全体性と個性を保ったままの結合』と述べています。

自分の個性を大事にしつつも、相手のことを自分のこととして考える。そんな一見相矛盾した状況を受け入れられることが、愛が実現できている状態なのです」

なるほど……職場なら、「自分の働き方も大事だけれど、部下(上司)の気持ちになって」ということが「愛」なのですね!

愛の具体的な5つの言葉

愛とは何か、がわかったところで、ここからは愛の要素をより具体的に見ていきましょう!

フロムは愛の定義として次の5つの言葉を挙げています。

1、与えるということ:「自分の喜び、興味、理解、知識、ユーモア、悲しみなど、自分のなかに息づいているもののあらゆる表現を与える」

2、配慮:「愛とは、愛する者の生命と成長を積極的に気にかけることである」

3、責任:「責任があるということは、他人の要求に応じられる、応じる用意がある、という意味である」

4、尊敬:「尊敬とは人間のありのままの姿を見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力のことである」

5、知:「自分自身に対する関心を超越して、相手の立場に立ってその人を見ることができたときにはじめて、その人を知ることができる」

大嶋さん「4つ目に登場する『尊敬する』というのは、自分の判断や評価をいったん脇において、その人の背景や文脈を考えてみること。つまり、相手の意見に手放しで賛成することとイコールではないんですね。また、相手を知るためには、この人が、こういう行動をとるのはなぜだろう? どんな価値観の持ち主なんだろうと、無邪気な好奇心を持って人と接してみるといいですよ。

こうして愛は何かをひも解いていくと、愛する能力は、生まれつきのものではなく、日々の生活で実践できるものだと思いませんか? 例えば部下を持つリーダーなら、部下とどう関わっていけば、彼らの成長につながるか、という身近な問題に向き合うことで、愛に必要な能力を鍛えられるはずです。」

つまり、「愛する」ということは、他のビジネススキルと同じように「身につけることができる能力」ということなんですね!

フロムの本をこういう風に解釈できるなんて……と読書会中はずっとうなずきっぱなしです。

実はフロムは50年以上前に「マインドフルネス」を先取りしていた?

大嶋さん「最近、マインドフルネスという言葉をよく聞きますよね。マインドフルネスというのは、「いま、この瞬間に自分の周りで起こっていることに意識を集中させる」ということです。これによって、能力の向上が見られる、ということが多くの研究成果から分かっています。

実はニューヨークでこの本が出版された1956年の時点ですでに、フロムはこのマインドフルネスに限りなく似た考え方をしているんですよ。」

え、そうなんですか! 確かにマインドフルネスって最近よく耳にしますし、最新の研究成果なのかと思ってました。

大嶋さん「フロムは、愛する技術を身につけるためには、まず自分のことに集中することが重要だ、と述べています。自分のことに集中できていないと、相手を愛することが自分に欠けているものを穴埋めするかのようなものになってしまうからです。そうではなく、自分は自分である、という軸を持ったうえで、相手のことを自分と一体化してみることが愛につながるわけですね。

この集中というところはマインドフルネスの考え方と非常に近い。事実、フロムは集中するための具体的な方法として、呼吸法やリラックス法など、マインドフルネスでいう瞑想に近いものを紹介しています。

こうした習練によって、愛する基礎力を誰もが身につけられる。ということは、誰もがこの力を磨いていけば、より良い社会になっていく。そんな希望を感じています」

最近になって証明された瞑想の力を60年も前から認識していたなんて、いまでもフロムの著書が読まれている理由が分かった気がします。

あなたはどこで愛を鍛錬しますか?

読書会最後に投げかけられた問いは、こちら。

大嶋さん「あなたはどの愛に焦点を当てたいのか? どこで鍛錬するか?」

今度は参加者一人ずつ、ご自身の考えをシェアしていただきました。

・パートナーの話を聞いているつもりだったけれど、もっと関心を寄せて、話に耳を傾けようと思う。

・周囲の人を愛するには、まずは自分を充足させることが大事。自分で自分の機嫌をとれるようにしたい。

・愛するって、主体的に動くことなんだと改めて気づいた。仕事でも人から言われたとおりやるだけではなく、自分の心の動きを感じながら、能動的に動くようにしたい。

各自が語る「愛する」力の高め方に耳を澄ませる参加者

『愛するということ』を一人で読んでいてもなかなか得られなかった気づきの数々。

「この読書会に参加してよかった」という声もたくさん聞くことができました。

大嶋さん「愛することって、実は自分を大事にすることでもあるんです。フロムの愛の5つの定義は自分自身に対しても必要。自分のことを尊重できているだろうか、と問いかけてみてください。だから、すぐに愛することが実践できていなかったとしても、自分を責めないで、気楽にできることからやってみてくださいね」。

大嶋さんの優しく包み込むような、内省を促すファシリテーションに引き込まれ、フロムが降臨したのでは、と錯覚してしまうくらい濃密な1時間半。愛を誰に対して、どのような形で表現していきたいのか。参加者の方々の想いや考えを聞くことで、自分だけでは得られない気づきが生まれ、内省がさらに深まっていくのを感じました。

今回、「自分一人で読書をしているだけでは得られない気づきがたくさんあった」、「読書会第2弾、楽しみにしています!」という声もたくさんいただきました。

大嶋さんファシリテーションの読書会は今後も開催予定です。開催スケジュールはフライヤーのFacebookページをご覧ください。次に登場するご本は何か、お楽しみに!

大嶋さんのこれまで執筆されたご本の一部を要約で!
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著者
大嶋祥誉
出版社
KADOKAWA
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著者
大嶋祥誉
出版社
SBクリエイティブ
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文責:松尾 美里 (2016/11/28)
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