一発屋芸人列伝

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一発屋芸人列伝
ジャンル
出版社
出版日
2018年05月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

過去に一度栄光を掴んだものの、現在ではテレビであまり目にすることがない「一発屋」と呼ばれる芸人たち。そんな彼らを取材するテレビ番組はこれまで数多く目にしたことがあり、「相変わらずだな」と思うこともあれば、「いまはこんなことしてるのか」と思うこともある。そして、それで終わりである。

だがこの本の場合は違った。登場人物たちと同じ「一発屋」という境遇の著者が放つ鋭いツッコミに笑いつつも、最終的には前を向く彼らの姿に、不覚にも心温まってしまったのだ。

一発屋芸人としてはレジェンド級のテツandトモから、少々小粒なジョイマン、コウメ太夫など、本書には計11組の一発屋芸人たちの過去と現在が収録されている。とくにネタについて記述されている部分では、「誰々のネタは〇〇だからすごい」など、同じ芸人目線で見た解説が興味深く、お笑い好きとしても新たな発見があるだろう。

一発屋と呼ばれる彼らの芸は、かつて多くの人に愛され、真似された。おとぎ話であればここで「めでたしめでたし」である。しかし現実の人生はその後も容赦なく続いていく。本書で描かれるのは、一発屋芸人たちのその後の姿だ。

一発屋たちの数だけドラマがある。笑い・苦笑い・悲哀・感動のすべてが詰まったこの列伝が、彼らへの“ゲティスバーグ演説”となることを、著者同様、私も願ってやまない。

著者

山田ルイ53世
本名:山田順三(やまだ・じゅんぞう)。
お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。兵庫県出身。地元の名門・六甲学院中学に進学するも、引きこもりになり中退。大検合格を経て、愛媛大学法文学部に入学も、その後中退し上京、芸人の道へ。『新潮45』で連載した「一発屋芸人列伝」が、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞し話題となる。その他の著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    かつて「面白い」と言われた一発屋芸人達のネタは、つまらなくなったわけではない。ただ世間が彼らのネタについて、多くを知りすぎてしまっただけだ。
  • 要点
    2
    「テレビ出演が多い=売れっ子芸人」というわけではない。お客さんの近くで笑いを届けつづけるお笑い芸人もいる。
  • 要点
    3
    かつてのネタで売れなくなったからといって、一発屋芸人たち自身が終わったわけではない。ネタを変え、スタイルを変え、仕事を変え、場所を変え、彼らはいまもお笑い界のどこかでたしかに生きつづけている。

要約

一発屋を変えた男 レイザーラモンHG

男気に溢れた、ポジティブな男
supershabashnyi/iStock/Thinkstock

2015年春、「一発会」なる会合が開かれ、総勢15人の一発屋芸人が集まった。旗振り役を務めたのは、かつてハードゲイというキャラクターで一世を風靡した、レイザーラモンHGだ。

一発屋にはキャラ芸人が多い。そしてキャラに入りこむ人たちは、往々にして社交的ではなく、孤立してしまいがちである。だったら「一緒にやろうや」と思ったのが、彼がこの会を立ち上げたきっかけだという。現にこの会は一発屋芸人たちの心のセーフティネットとなっている。著者は彼のその男気溢れる性格を評し、「一発屋界の添え木」と呼んでいる。

「僕たちは飽きた、面白くないと言われるが、そうではないと思う。僕たちのネタはずっと面白くて、ただ皆が“知りすぎてしまった”だけ。そもそも面白くてブレイクしたんだから」。このようにポジティブな彼の発言は、それまで惨めな存在と捉えられてきた一発屋芸人のあり方を変えた。現在では「しぶとく生き残っている人達」「久しぶりに見たら面白いネタ集」など、一発屋芸人を取り上げるメディアの態度も変わってきている。

彼はお笑いエリート

HGが所属するレイザーラモンというコンビは、若手漫才師の登竜門「今宮子供えびすマンザイ新人コンクール」で、約200組の頂点に立った華々しい経歴をもつ。しかもHGは吉本新喜劇で、ツッコミ役である“うどん屋の店主”に大抜擢されたこともある。これは場を仕切る技術がなければ務まらない役回りだ。

正統派漫才ではウケない劣等生の、キャラによる“ドーピング”とは違い、彼はもともとお笑いエリート。才気溢れる若手芸人だったのである。

正気なエリートが狂気のハードゲイへ

HGはルックスがよく、人柄もよい。そして正気でもある。それなのにどうしてハードゲイという狂気を身にまとったのか。

彼は昔から変な毛皮やベストなど、変わった格好をするのが好きだった。それに対する先輩からの「お前ハードゲイか!」という一言が、彼を覚醒させたのだという。そこから試行錯誤を重ね、あのグラサンとレザーファッションに行き着いたのだ。

だがすべてをかけたキャラクターを吉本の社員にプレゼンするも、「お昼の生放送で無理やろ」と言われ、当初はまったく相手にされなかった。それでもとにかくハードゲイというキャラの可能性を信じつづけた彼は、ニューハーフパブでボーイとして働き、ショーにも出演。大阪と新宿二丁目のその界隈の重鎮に挨拶まで行くなど、ストイックに「役作り」を重ね、見事ハードゲイでブレイクを果たしたのであった。著者が正気だと思っていた男は、充分に常軌を逸していたのである。

ゲイ人からの華麗なる転身
Ildo Frazao/iStock/Thinkstock

現在はあのレザーファッションではなく、スーツに身を包みコンビで正統派漫才師として活動中だ。「THE MANZAI」にも出場し、決勝大会進出という快挙を成し遂げた。一発屋から漫才師へと、これまで誰も成しえなかった奇跡の復活をとげた彼は、やはり一発屋を変えた男といえる。

“肉眼視聴率”ナンバーワン テツandトモ

営業だってエンターテインメント

M-1ファイナリスト、紅白出場、流行語大賞受賞など、栄光を手にしてきた一発屋界のレジェンド、それがテツandトモ(以下、テツトモ)だ。

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要約公開日 2018.09.03
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