宇宙ビジネスの衝撃

21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ
未読
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出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2018年05月09日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

かつて宇宙開発は、各国の国家機関が担うものだった。NASAやJAXAといえば、誰もが知っているだろう。しかし、現在ではグーグル、アマゾンといった「BIG5」と呼ばれるIT企業をはじめ、多くの民間企業が、独自に開発や投資を行う分野へと変貌を遂げた。私たちの生活を日々、劇的に変化させる宇宙ビジネス。その現状と未来について、宇宙ビジネスコンサルタントの著者がわかりやすく解説してくれるのが本書だ。

宇宙ビジネスに、これほどまでに注目が集まるのはなぜか。その1つは、宇宙にネットワークを張り巡らせることで手に入る、「地球のビッグデータ」が存在するからだ。企業が巨額の投資を惜しまないのは、それらのデータが第4次産業革命をも駆動させるほどのものだからだ。つまり、私たちの生活を激変させる可能性が大いにある。

宇宙ビジネスと聞くと、自分には縁のない未来の話だと思う人もいるかもしれない。だが実際には、すでに農業、畜産業、漁業といった多くの産業で、宇宙から届けられたデータの利用が急拡大している。宇宙は、過去にできなかったことを可能にする「可能性の宝庫」だ。そして、火星移住もゆくゆくは夢物語ではなく、現実化できるかもしれない。

宇宙ビジネスに縁がないと思っている人にこそ、時代に乗り遅れないためにも、いち早く読んでいただきたい一冊だ。

著者

大貫 美鈴(おおぬき みすず)
宇宙ビジネスコンサルタント/スペースアクセス株式会社 代表取締役
日本女子大学卒業後、清水建設株式会社の宇宙開発室で企画・調査・広報を担当。世界数十か国から参加者が集まる宇宙専門の大学院大学「国際宇宙大学」の事務局スタッフを務める。その後、宇宙航空開発研究機構(JAXA)での勤務を経て独立。現在は、宇宙ビジネスコンサルタントとして、アメリカやヨーロッパの宇宙企業のプロジェクトに参画するなど、国内外の商業宇宙開発の推進に取り組む。清水建設の宇宙ホテル構想提案以降、身近な宇宙を広めるためのプロジェクトへの参画はライフワークになっている。アメリカの宇宙企業100社以上が所属する「スペースフロンティアファンデーション」の、アジアリエゾン(大使)としても名を連ねる。新聞や雑誌、ネットでの取材多数。
経済産業省国立研究開発法人審議会 臨時委員
国際宇宙航行連盟 米国連邦航空局 商業宇宙飛行安全委員会 委員
国際宇宙航行連盟 起業・投資委員会 委員
国際宇宙安全推進協会 サブオービタル宇宙飛行安全委員会 委員
国際宇宙航行アカデミー 準メンバー
国連宇宙週間 理事
国際月面天文台協会 理事

本書の要点

  • 要点
    1
    宇宙ビジネスの対象となるエリアは、大きく「深宇宙」「静止軌道」「低軌道」の3つに分けられる。近年、「低軌道」での宇宙ビジネスが活況を呈している。
  • 要点
    2
    スペースX、アマゾン、グーグル、フェイスブックといったIT企業たちが、次々と宇宙ビジネスに参入している。
  • 要点
    3
    IT関連の技術や資金が宇宙ビジネスに流れ込んでいるのは、宇宙にネットワークを張り巡らせることで、「地球のビッグデータ」を活用したいと考えているためである。

要約

なぜ、IT企業の巨人は宇宙をめざすのか?

宇宙開発の商業化の契機

宇宙開発はもともと、NASAやJAXAなど、各国の国家機関が担っていた。そんななか、宇宙開発の商業化の流れが起きたきっかけは、2005年のアメリカ政府による政策変更といえる。スペースシャトルの後継機の開発は民間に任せて、NASAは一顧客として民間から打ち上げサービスを購入するという大転換があった。

2010年には、オバマ大統領が「新国家宇宙政策」を打ち出した。そこでは、民間企業の技術やサービスの購入、競争に通じる起業の促進、宇宙技術やインフラの商業利用、輸出の促進などがはっきりと示されていた。こうして、官民連携で宇宙開発の商業化が推進されるようになった。

宇宙ビジネスの世界市場「スペース・エコノミー」は、2005年に17兆円規模だった。これが、2016年には33兆円にまで拡大するという成長ぶりだ。これにともなって、世界の宇宙関連ベンチャーへの投資も急激に拡大している。

3つの宇宙空間と、事業化が活況を呈する「低軌道」
Purestock/Thinkstock

宇宙ビジネスの対象エリアは、「静止軌道」「低軌道」「深宇宙」の3つに大別される。

「静止軌道」は赤道上36000キロの軌道のことである。既に2000年以前から各国が気象衛星、通信衛星、放送衛星、測位衛星など、大型の衛星を打ち上げ、商業化に成功してきた。これらの衛星の寿命は通常、10年から15年だが、燃料の補給や修理によって、再利用、延命を図るサービスが始まろうとしている。

次に「低軌道」とは、宇宙と定義される高度100キロから2000キロ辺りまでを指す。2000年以降、この低軌道では様々な事業化が進んだ。例えば、高性能な小型衛星のコンステレーション(複数の人工衛星を連携させる運用法)により、精密な気象観測が可能となった。また、弾道飛行で約4分間の無重力体験ができる宇宙旅行が、新たな観光産業として注目を集め、実現に向けて加速している。

つづいて「深宇宙」とは、月、小惑星、火星などの遠い宇宙を指す。宇宙基地としての月開発、小惑星の資源開発、火星への有人宇宙飛行などをめざしている。

ゴールドラッシュを彷彿させる宇宙ビジネス

これまで開発対象としての宇宙は、専門家だけが携われる世界というイメージだった。しかし、この15年の間、ITビリオネアたちの宇宙開発参入が投資を呼び込み、市場の創出・拡大につながった。各国の宇宙予算、いわゆる公的なマーケットは、もはや全体の25%に満たない。民間のサービスやプロダクトが大きく伸びてきたのである。しかも、10数年でほぼ2倍という市場スケールになった。小惑星の資源開発や月の開発、火星への有人宇宙飛行が、もはや夢物語ではなくなったといってよい。

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要約公開日 2018.09.19
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