世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか

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出版社
出版日
2018年07月24日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

<信頼>が今、ひとつのキーワードになっている。その認識は、誰もが持っているのではないだろうか。

「わたしたちは今、人類の歴史の中で3度目の、もっとも大きな信頼の革命の入り口に立っている」――著者はそう仮説を立てている。信頼の歴史は、「ローカルな信頼」から中央集権的な「制度への信頼」へと変遷したのち、昨今では「制度への信頼」が根本から揺らぎ、「分散された信頼」がそれに取って代わろうとしているという。その移ろいを「革命の入り口」と表現したのだ。

著者は10年にわたって、製品やサービス・情報を多くの人に届ける方法を根本的に変えるようなネットワークやマーケットプレイス、システムを研究してきた人物だ。本書はそんな著者がウーバーやアリババ、エアビーアンドビーの事例を取り上げ、デジタル時代の<信頼>について語った力作である。本書を読めば、私たちがカオスと混乱の時代の淵に立たされていて、「分散された信頼」という新たな信頼への変化に立ち会っていることを理解できるはずだ。

著者は、分散された信頼の時代では、「誰をどう信頼するのか」が問われることになると主張する。人工知能(AI)やロボットから中国の国民格付けシステム、ブロックチェーンまで、最新のテクノロジーやシステムとどのように付き合っていくべきか、信頼の観点からヒントを得ることができるだろう。

著者

レイチェル・ボッツマン(Rachel Botsman)
作家、ソーシャルイノベーター。前作『シェア』で提唱した「共有消費」は、タイムズ誌による「世界を変える10のアイデア」に選ばれた。
2013年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、WIREDなどで寄稿編集者を務めるほか、インターネットとテクノロジーを通したシェアリングエコノミーの可能性やビジネス・社会における変化についてコンサルタントや講演などを行っている。またオックスフォード大学サイード・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えている。

関 美和
翻訳家。杏林大学外国語学部准教授。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。
訳書に『シェア〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略』レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース、『ゼロ・トゥー・ワン』ピーター・ティール(以上NHK出版)、
『Airbnb Story』リー・ギャラガー(日経BP社)、『誰が音楽をタダにした』スティーヴン・ウィット(早川書房)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    中国のビジネスでは、信頼が重要だ。アリババの創業者ジャック・マーは、買い手に売り手を信頼させ、ものを買わせるために、売り手の認証制度を設けた。認証を受けた売り手への問い合わせは、未認証の売り手よりも6倍多かったという。
  • 要点
    2
    人は、アイデアを信頼し、プラットフォームと企業を信頼し、個人を信頼するという順に新しいビジネスへの信頼を深めていく。
  • 要点
    3
    中国政府は、国民の信用力を格付けするシステムを開発中だ。すでに数百万人が登録しており、信用履歴、履行能力、個人的な特徴、行動と嗜好、人間関係の5つの要素から人間を格付けする仕組みになっている。ランクが高い人には、さまざまな特典が提供される。

要約

信頼とは何か

アリババはいかに中国で成功したか
heliopix/gettyimages

アリババの創業者ジャック・マーは、中国でインターネットのマーケットプレイスを構築して大成功を収めた。そもそもインターネットのマーケットプレイスは、買い手と売り手、双方の信頼がなければ成り立たないものだ。その仕組みを構築しただけでも素晴らしいことだが、さらにすごいのは、それを中国で実現したということである。中国社会では「コネ」が重要視されるうえ、家族や友人、同じ村の人といった親密な人間関係でなければ信頼が成り立たないからだ。だからマーは、中国でのビジネスにおける信頼の重要性を理解し、株式上場日のインタビューで何度も「信頼」という言葉を口にしている。

では信頼とは何か。政治学者エリック・アスレイナーは、「信頼は社会生活の必需品」だと言う。たとえば宅配の寿司を注文するとしよう。そのとき私たちは、そのレストランが新鮮な材料を使い、厨房は清潔で、クレジットカード情報を悪用せず、配達人が寿司を持ち逃げしないと信じている。自分が騙されるリスクがあると考えれば、ほとんど何もできなくなってしまうだろう。信頼は、社会をまとめ、経済を回す潤滑剤なのだ。

それではジャック・マーは、買い手に売り手を信頼させ、ものを買わせるために何をしたか。彼の施策のひとつに、「トラストパス」がある。これは売り手の認証制度で、第三者から身元と銀行口座を裏付けられた売り手だけが受けることができる。トラストパス認証を受けた売り手への問い合わせは、未認証の売り手よりも6倍多かったという。

やがてトラストパス認証に手数料を課すようになると、未認証の売り手への信頼はより低くなった。優良企業であるならば、少しの手数料を支払ってでもそれを証明しない理由がない。無料アカウントにしがみつくことは、信頼するに足りないことの証なのだ。

【必読ポイント!】信頼構築の段階

ブラブラカーの事例
SbytovaMN/gettyimages

近年、新しい信頼の形が生まれつつある。ブラブラカーの事例をみてみよう。

ブラブラカーは、2006年にフランスで設立されたスタートアップで、車の座席をシェアするプラットフォームを運営している。つまり、運転者が旅行先までの車の空席を売り出し、買い手が座席を購入して同乗するというサービスだ。運転者は同乗者にガソリン代と有料道路の代金を請求することができる。ウーバーとは異なり、平均走行距離が約320キロと長いのが特徴だ。飛行機のエコノミークラスや電車が競合にあたるだろう。

設立者がブラブラカーのもとになるアイデアをビジネスコンテストに出したのは、2000年代後半のことだった。結果は4位。審査員からは、信頼が懸念だと指摘された。まだiPhoneのない時代で、会ったことのないドライバーと同乗者の間に信頼関係を築くのは至難のわざだったのだ。

実際、ユーザー同士がマッチングしても、予約のドタキャンが相次いでいた。だから同乗者は複数の予約を入れていたし、ドライバーも多めに予約を受け付けていた。その課題を解決するために導入されたのが、

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要約公開日 2018.09.28
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