コンビニ外国人

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コンビニ外国人
出版社
出版日
2018年05月20日
評点
総合
4.3
明瞭性
5.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

いまや私たちの日常に欠かせぬインフラとなったコンビニ。その店舗に起きている変化にお気づきだろうか。

近年、コンビニでは多くの外国人が働いている。全国のコンビニで働く外国人は、大手3社だけでも4万人を超えた。全国平均で見るとスタッフ20人のうち1人は外国人という数字である。こうした状況の背景には、コンビニ業界が苦しむ深刻な人手不足がある。

これはコンビニに限った話ではない。スーパーや居酒屋、牛丼チェーンをはじめ、深夜の食品工場や宅配便の配送センター、工事現場や地方の農家、漁業現場、介護施設など、じつにさまざまな場所で多くの外国人が働いている。好むと好まざるとにかかわらず、私たちの生活は彼らの労働に依存しているのだ。

本書は“コンビニで働く外国人”という、おそらくもっとも身近な外国人労働者に焦点をおいたルポルタージュである。さまざまな角度から外国人労働者の生活と就労の実態を見ることで、日本社会の実相や課題を見事に浮き彫りにしており、その手腕は見事の一言だ。また外国人労働者に関する制度や人口動態などマクロな状況を提示しつつ、外国人労働者だけでなくその雇用者、地域住民など、多くの生の声を紹介している点も秀逸である。

日本における外国人労働問題を知りたければ、この本を手にとってみてほしい。これ一冊でかなり理解が深まるはずだ。

著者

芹澤 健介 (せりざわ けんすけ)
1973(昭和48)年、沖縄県生まれ。横浜国立大学経済学部卒。ライター、編集者、構成作家。NHK国際放送の番組制作にも携わる。長年、日本在住の外国人の問題を取材してきた。著書に『血と水の一滴 沖縄に散った青年軍医』、共著に『死後離婚』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    留学生のアルバイトは「週に28時間まで」が法定の上限だ。しかし実際にはこの上限を超え、不法就労せざるをえない留学生が多い。
  • 要点
    2
    日本への渡航に際し、多くの留学生が高額な借金を抱えている。一方で日本経済の現場は人手不足に苦しんでいるため、外国人労働者への期待が大きい。こうした経済・社会的背景が、不法就労の発生に繋がっている。
  • 要点
    3
    近年、日本語学校が乱立・急増しており、教育機関としてのレベルの低下が懸念されている。現に人材派遣業化した一部の日本語学校で、組織ぐるみの不法就労助長や、留学生への人権侵害、経済的搾取が発生している。

要約

外国人留学生が働くコンビニ

アルバイトは週に28時間までが原則
TAGSTOCK1/iStock/Thinkstock

コンビニ各社はいま、加盟店向けに外国人雇用の説明会を開いたり、多言語対応のマニュアルを作成したりと、急ピッチで外国人スタッフの受け入れを進めている。たとえばローソンは他社に先駆けて、海外に専用の研修施設を作った。いまはベトナムと韓国に計5カ所の施設があり、日本の文化や店舗作業の事前研修をおこなっている。即戦力を育てるのが狙いだ。

日本のコンビニで働く外国人の多くは、日本語学校や大学で学ぶ留学生である。「留学ビザ」で日本に滞在する彼らが、コンビニでアルバイトすること自体は違法ではない。ただし「原則的に週に28時間まで」と定められている。

この「28時間」という規制は、世界的に見ればかなり緩いほうだ。英米などでは「学生ビザ」でのアルバイトは原則禁止だし、カナダやフランスでは20時間程度までである。「週に28時間」は仮に自給1000円で計算すると、月に10万円ほどの稼ぎだ。

借金を背負って来日する留学生

問題はいまコンビニで働いている留学生のほとんどが、多額の借金を背負って来日していることにある。日本語を勉強しながら働ける「留学ビザ」で入国するため、彼らは出国前に1年目の学費や斡旋業者への手数料など、合わせて100万円を超すような大金を支払っている。平均月収が数万円の国の若者が工面するには、借金をするしかない金額だ。

なかには「日本に行けば勉強しながら月に20万円稼げる」という斡旋業者の甘言に乗って来日する人もいる。しかし「週に28時間まで」のルールを守っていては、前述したように月10万円を稼ぐのがやっとだ。

2年目以降の学費を払えずに退学してしまうと、当然だが留学ビザでの滞在資格はなくなる。となると借金を背負ったまま帰国するか、強制送還を覚悟でオーバーワークするか、もしくは最終手段として失踪するかしかなくなる。

いずれにせよ、来日前に思い描いていた明るい未来はそこにはない。

100万人の外国人労働力に依存する日本
asab974/iStock/Thinkstock

2017年10月末時点の厚生労働省の集計によると、日本にいる約27万人の外国人留学生のうち、約26万人が「資格外活動(=アルバイト)」をしている。つまりほとんどの留学生が、何らかのアルバイトをしていることになる。

留学生アルバイトの数は5年前と比べて約2.5倍に増えた。外国人労働者全体の数も増加傾向にあり、この10年で約2.6倍に増加、現在は128万人である。これは届け出が義務化されてから過去最高の人数だ。

外国人労働者の職種でもっとも多いのは「製造業」の30.2%で、そのほとんどが技能実習生である。次いで多いのがコンビニやスーパーなどを含む「卸売業・小売業」の13%、そして「宿泊業・飲食サービス業」の12.3%が続く。

すでに多くの職種で、現場に外国人労働者がいるのが当たり前の状況となっている。たとえばコンビニでおにぎりをひとつ買うとしよう。おにぎりを買うレジスタッフの多くは外国人だ。また工場から配送されたおにぎりを検品し、陳列するスタッフにも外国人が少なくない。おにぎりの製造工場や、具の「いくら」や「おかか」の加工工場でも、多くの技能実習生が働いている。さらに米農家やカツオ漁船でも、外国の技能実習生が働いている可能性が高い。

このようにあまり人目に触れていないだけで、日本はすでに外国人労働力抜きでは成り立たない経済構造になっているのである。コンビニの外国人スタッフは全国で約4万人いるが、128万人いる外国人労働者全体から見れば、そのほんの一部にすぎない。

技能実習生の光と影

技能実習生の労働環境

外国人技能実習制度の新たな対象職種に、いま「コンビニ」が加わる可能性が出てきている。

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要約公開日 2018.10.06
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