独裁者たちの人を動かす技術

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独裁者たちの人を動かす技術
出版社
出版日
2018年08月15日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「独裁者」という言葉から、どのような印象を受けるだろうか。民衆を虐げ、敵対するものがいれば躊躇なく排除し、恐怖で人々を支配する――そんな冷血で残虐な人間を思い浮かべるかもしれない。しかし本書の著者によれば、独裁者たちは人々を自発的に動かすために「まっとうなリーダーシップ」を発揮していたというのだ。

独裁者たちは民衆や臣下から熱烈な支持を集めるだけでなく、誤った方向へ舵を切っているときですら誰にも止められないほどの推進力を生み出す。彼らはいかにして生まれ、支持を得るのか。本書では、古今東西の独裁者たちの言動を詳述し、彼らの「人を動かす技術」を暴いていく。

もちろん、独裁者たちの行った虐殺や暴力支配を肯定することはできない。しかし、自分の思うように事を運ぶために彼らが採った緻密な戦略の数々は驚きに値する。本書を読めば、人を従わせるために必要なのは恐怖だけではないということがよくわかるだろう。著者が「人間の魅力は日々の言動の積み重ねだと気づかされた」と言うほど、独裁者たちが実現してきた熱狂の裏にはたゆまぬ努力があったのだ。

独裁者たちが用いたテクニックは一朝一夕に取り入れられるものばかりではないが、リーダーシップを発揮したいビジネスパーソンに良いヒントを与えてくれることだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

真山 知幸(まやま ともゆき)
著述家。著作に『ざんねんな偉人伝』『ざんねんな歴史人物』(共に学研)、『ざんねんな名言集』(彩図社)、『君の歳にあの偉人は何を語ったか』(星海社新書)、『不安な心をしずめる名言』(PHP研究所)、『大富豪破天荒伝説 Best100』(東京書籍)、監修に『恋する文豪(日本文学編、海外文学編)』(東京書籍)、『文豪聖地さんぽ』(一迅社)など。共著に『歴史感動物語 全12巻』(学研)。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義、宮崎大学公開講座では講師を務めた。

本書の要点

  • 要点
    1
    独裁者たちは、恐怖で民衆を支配するだけではなかった。頼りがいのあるリーダーを演出し、大衆の支持を得られるように戦略的に動いていた。
  • 要点
    2
    配下の承認欲求を満たすには、優秀な人材を集めて気に入ったものを抜擢し、自分にもチャンスがあると思わせて全体の士気を高めること、ポジションを与えることができないものに対しても別の報酬を与えることが有効だ。
  • 要点
    3
    人の心を動かすために、独裁者たちは自分の見た目にこだわっていた。とくに重要なのは、ハツラツとした若々しさである。

要約

【必読ポイント!】心をつかむ技術

弱者に寄り添う
spukkato/gettyimages

独裁者は、必ずしも弱者の敵だというわけではない。多くの独裁者が“弱者救済”のための政策に取り組んでいる。

アドルフ・ヒトラーが政権を握ったとき、ドイツの失業率は40%に達していた。しかしヒトラーが抜本的な対策を講じた結果、わずか4年でほぼ完全雇用を達成することとなる。ドイツはそのころ、第一次世界大戦に敗北し、多額の賠償金を払わざるをえなかった。そんな状況下、ドイツ国民はますます熱狂的にヒトラーを支持するようになっていったのだ。

日本の独裁者、織田信長にもまた、弱者に寄り添う心があった。彼は比叡山の焼き討ちや長島一向一揆での火攻めなど、激しい宗教弾圧を行った人物である。しかし信長は、物乞いをする身体障害者を不憫に思い、町の人たちに彼の世話をするよう頼んだこともあった。木綿20反を渡したうえで、それを売った費用の半額を使って助けてやってほしいという具合に指示を出したという。

これらは、弱者に寄り添うことで頼りがいを演出し、信頼を獲得するという独裁者たちの戦略のひとつだ。

ワンフレーズを繰り返す

民衆は理解力に乏しく、忘れっぽい。だから独裁者たちは、印象的なワンフレーズをしつこいほど繰り返すという手法を採る。

独裁者ではないが、日本でもこの手法を使った政治家がいる。小泉純一郎だ。彼は「私が自民党をぶっ壊す!」と強いメッセージを発信していた。バラク・オバマが繰り返した「Yes We Can」にも同様のねらいがあったのだろう。

ヒトラーが使ったのは「すべての労働者に職とパンを!」というフレーズだ。彼は大衆の理解力を全く信用していなかった。小難しく述べるよりも、わかりやすいフレーズをひたすら繰り返すことが重要だと冷酷に分析していたのだ。

老若男女に思いを伝え、彼ら彼女らから支持されるためには、要点を絞り、短くわかりやすいフレーズを何度も繰り返す必要があるといえよう。

ワンフレーズの力は、マネジメントにおいても注目を集めている。

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要約公開日 2018.10.23
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