マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?

マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代
未読
マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?
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マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?
出版社
出版日
2018年07月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

マンガビジネスはいま、大転換の渦中にある。

出版科学研究所によると2017年のマンガの市場規模は、雑誌と単行本を合わせて4330億円(紙2583億円、電子1747億円)だ。これは市場規模1兆5916億円の出版産業全体のなかでもっとも大きい規模である。一方で2017年、コミックス(単行本)の電子版の売上がついに紙版の売上を上回った。「LINEマンガ」などの大規模なマンガアプリの影響力は、大半の紙のマンガ雑誌を凌ぐまでになっている。これは「紙から電子へ」という、たんなるモノの変化だけを意味しない。コミックス売上至上主義だった旧来のマンガビジネスの秩序そのものが激変しているのである。

マンガは「原作」として、アニメやゲームその他さまざまなメディアで重宝される存在である。だからマンガ産業の行く末は出版界に留まらず、日本のコンテンツ産業すべての未来に関わる問題だ。スマホ向けゲームやNetflixをはじめとする動画配信が普及し、今後はVRを用いた娯楽も増えると予想されるなか、かつてマンガに割かれていた可処分所得と時間は、放っておけば奪われるだけである。

変革の渦中にあるマンガビジネスの見取り図を提示し、その変化の本質はなんなのかを見極める刺激的な一冊。マンガに興味がない人にとっても、示唆に富む読書体験になるだろう。

著者

飯田 一史 (いいだ いちし)
1982年青森県むつ市生まれ。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。小説誌、カルチャー誌、ライトノベルの編集者を経てライターとして独立。マンガ家や経営者、出版関係者のインタビューも多数手がける。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略』(青土社)『ウェブ小説の衝撃 ネット発ヒットコンテンツのしくみ』(筑摩書房)、構成を担当した本に藤田和日郎『読者ハ読ムナ(笑)いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか』(小学館)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    マンガアプリにはさまざまなサービスがあるが、その機能は「他社制作の新作連載」「他社制作の旧作連載」「自社制作の新作連載」「コミュニティ」の大きく4つに分類できる。
  • 要点
    2
    「LINEマンガ」などのストア/プラットフォーム系アプリが普及するにつれ、作品単品での勝負という傾向が強まり、「ジャンプ」や「マガジン」といった雑誌単位でのブランド販売が厳しくなっている。
  • 要点
    3
    これまでは単行本部数が勝負の中心だった。しかしいまは1話単位での販売や広告収入、ファンビジネスなど、マンガビジネスの収益源は多様化している。

要約

マンガアプリのビジネスの現状

他社作品のプラットフォーム機能
west/gettyimages

「マンガアプリ」と一言でいっても、さまざまなものがある。ここでは日本のマンガビジネスの現状と課題を理解するために、マンガアプリの機能を以下の4つに分類したい。それは(1)「他社作品の新作連載プラットフォーム機能」、(2)「ストア機能および他社作品の旧作連載プラットフォーム機能」、(3)「自社新作連載機能」、(4)「コミュニティ機能」である。

(1)「他社作品の新作連載プラットフォーム機能」とは、さまざまな出版社が作った新作マンガを連載することである。「版元横断」での「新作連載」(育成)が主な機能だ。代表的なサービスとしては「pixivコミック」や「LINEマンガ」、「マンガボックス」が挙げられる。これらのサービス事業者は、アプリ初出で連載できる新作を求めて、既存版元と協業している。

(2)「ストア機能および他社作品の旧作連載プラットフォーム機能」とは、旧作(既刊)を中心に、電子コミックを販売・レンタルすることであり、「LINEマンガ」や「マンガBANG!」が有名だ。こうした電子コミックストアが躍進した結果、ジャンルにもよるが、各社のマンガ売上の3~7割程度を電子版が占めるようになった。

新作と旧作の大きな違い

(1)「他社作品の新作連載」が(2)「他社作品の旧作連載」ともっとも異なるのは、新作連載の場合はコミックス化されるまで、そのアプリでしか読めないことだ。だからプラットフォーム運営者は、「他では読めない」ことを武器に、ユーザーの獲得が期待できる。また作家や版元などの制作側からすると、掲載するプラットフォームに合わせて作品を作るので、紙雑誌連載の場合とはターゲットとなる客層が変わることもあるだろう。

さらに(3)「自社新作連載機能」とも共通するが、(1)の場合は紙雑誌連載時には得られない各種データ(アクセス数、読者の連載継続率など)を活用しつつ、スマホの小さい画面に最適化されたボーンデジタルのマンガを作ることになる。これも(2)との大きな違いだ。

自社新作連載機能とコミュニティ機能
piyato/gettyimages

(3)「自社新作連載機能」とは、アプリ事業者が自前で新作を作り、自社アプリに連載することである。小学館の「マンガワン」や集英社の「ジャンプ+」などが代表的なサービスだ。

自社の編集部が制作する新作マンガを自社アプリに掲載するのと、他社アプリに掲載するのでは、なにが違うのだろうか。作家や編集者にとっては、あまり大きな違いはない。どんな媒体であれ、多くの読者に届け、より多くの利益をめざすことは変わらない。また制作上の制約についても、他社媒体のほうが自社媒体より制約が大きいとはかぎらない。

だがアプリ事業者からすると大きな違いがある。どこがマンガの制作原価をもつかが変わってくるからだ。マンガは小説に比べると制作コストが大きく、オリジナルマンガを10本連載するだけで、年間億単位のカネがかかってしまう。

とはいえ電子書店事業で「売る」だけなら費用は軽いが、利幅も小さい。

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要約公開日 2018.11.10
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