0秒経営

組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方
未読
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組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方
未読
0秒経営
出版社
出版日
2018年10月05日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

メガネスーパーはかつて、メガネチェーン御三家として一時代を築いていた。だが近年では、JINSやZoffといった新勢力に太刀打ちできず、8年連続の赤字を出して倒産寸前にまで追い込まれていた。その後黒字転換し、V字回復を遂げることとなったが、その立役者となったのが星﨑尚彦社長である。

三井物産を経てMBA取得、様々な小売企業の経営再建という華々しいキャリアを持つ星﨑社長がメガネスーパーで実行した経営再建とは、いったいどのようなものだったのだろうか。本書はその奇跡の再建ストーリーについて星崎社長自身の視点から述べられた一冊だ。典型的な負け組体質が染みついた会社・社員の意識をどのように変え、勝てる組織へと生まれ変わらせたのか、その考え方やノウハウには一読の価値がある。著者が「0秒経営」と呼ぶ超高速のPDCAサイクルを回す仕組みは、まさに昨今話題になっている「アジャイル型組織」そのものではないだろうか。

もちろん本書を読んだからといって、誰にでも同様の組織づくりができるというものではない。しかし同社のユニークな経営スタイルに触れれば、日々の仕事への取り組み方を変えずにはいられないだろう。本書を手に取ったことをきっかけとして、自身の働き方やチームのあり方などを見直し、よりよい組織づくりを進めるための一歩を踏み出してほしい。

ライター画像
山下あすみ

著者

星﨑 尚彦 (ほしざき なおひこ)
1966年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、三井物産(株)に入社。主に繊維事業、ファッション事業に携わった後、スイスのビジネススクールIMDへ留学。MBA取得後の2000年、スイスの宝飾メーカー「フラー・ジャコー」日本法人の経営者に就任、短期間で同社業績の飛躍的向上に成功。その後、婦人靴で名高いイタリアの皮革製品メーカー「ブルーノマリ」や、米国のスノーボード用品ブランド「バートン」で日本法人の経営者を務め、2012年にアドバンテッジパートナーズからの要請により、アパレルメーカー「クレッジ」の経営再建を担い、1年半でV字回復を達成。2013年6月、メガネスーパーの再建を任され、2016年に同社9年ぶりの黒字化を果たす。2017年11月には株式会社ビジョナリーホールディングスの代表取締役社長に就任。アイケアの啓発・普及を旗印に、先進アイケアサービス・店舗の拡大や積極的なM&Aといった成長戦略を加速させ、2018年には3期連続の黒字を実現。

本書の要点

  • 要点
    1
    メガネスーパー復活の本質は、「指示待ち」社員が自分から動ける社員に変わったという「意識改革」にある。
  • 要点
    2
    著者はまず、自らが店舗運営に関わることを決めた。大型店を6店選んで「天領店」と名付け、前職の仲間たちを配属して情報を集めた。
  • 要点
    3
    著者は、メガネスーパーの強みは「眼の知識」であるという結論にたどり着いた。そして安売りからの脱却と付加価値の追求で他社と差別化し、V字回復を成し遂げた。

要約

ビジネスモデルの大転換

「普通の経営」では絶対勝てない
nortonrsx/gettyimages

メガネスーパーは従業員数約1600人の企業だが、小売業界の中では決して大企業といえるほどの規模ではない。そのような規模の企業が普通の経営をしていては、勝てるはずがない。事実、メガネスーパーは8年連続赤字となり、倒産寸前だった。

そこからビジネスモデルを大きく変え、復活を遂げた。具体的には、「アイケアカンパニー宣言」を掲げ、メガネの安売りをやめ、眼に関する専門知識を武器に、高付加価値のサービスを提供するようになったのだ。

具体的にはまず、「レンズ代0円」という業界慣習から脱却してレンズを有料化した。メガネ一式の平均価格は3万6千円と業界水準を大きく超えているが、それに見合ったメガネを提供することで、メインターゲットとする中高年のお客さまからの信頼を獲得した。また、無料が当たり前だった保証を有料化し、サービスを強化したことも大きなインパクトを与えた施策だといえよう。

社員の意識改革

メガネスーパー復活の本質は、ビジネスモデルの転換よりも「社員の意識改革」にある。社員の意識を変え、「指示待ち」社員を自分から動ける社員に変えたのだ。意識改革によって、赤字続きで自信を失った社員たちは、やる気あふれる社員へと変貌していった。

改革前の社員たちは、もはや自分のアタマで考えることができなくなっていた。「やってごらん」といっても黙るだけ、「やれ」といってもなお動けなかったほどだ。そこで著者はどうしたか。現場に足を向け、自分の考えを伝え、黒字化のための施策に自ら挑戦したのだった。やがて社員たちからもアイデアが出るようになっていった。

もちろんすべての施策が成功したわけではない。失敗もあった。だが「やってもダメなんだ」と思考停止するのではなく、「どうしたらうまくいくだろうか」と軌道修正してまたチャレンジするというサイクルを続けた。試行錯誤の甲斐あって結果が出始め、冷めていた店舗が熱を帯びていった。

売上も給料も小売業界ナンバーワンを目指す

メガネスーパーは黒字化に成功したが、著者が見通しているのはもっと先だ。それは、「売り上げも給料も、小売ナンバーワンに引き上げる」ことである。そしてそれを社員たちにも宣言している。

著者は売上と給料を小売ナンバーワンにするまで、現場に出張り続けるつもりだ。小売の社長は、現場を知らなくてはいけない。マーケットは日々変化しているのだから、常にその変化をキャッチし、的確な経営判断を下す必要があるわけだ。

このスタイルはもしかすると、スマートな経営とは言い難いものかもしれない。だが、0秒経営は現場からしか生まれないのである。

まやかしの忙しさと決別せよ

現場を知らずして経営者は務まらない
undefined undefined/gettyimages

メガネスーパーのピークは2007年だった。当時は全国に540店舗を構え、売上は380億円に迫るほど。メガネトップやメガネの三城と並んで「メガネチェーン御三家」と呼ばれた。

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要約公開日 2019.01.15
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