精神科医が教える 良質読書

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精神科医が教える 良質読書
出版社
かんき出版

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出版日
2018年12月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

『本を読む本』をはじめとする、読書への向き合い方や読書法が説かれた本。専門家が自身の読書歴を披露した本。これらの本は書店に所狭しと並んでおり、ロングセラーも多い。読書に効用があるかと問われれば、ほぼすべての人がYesというだろう。フライヤーのサービスも良書と読者の架け橋になることをめざしている。

しかし、読書の意義はわかっているものの、「読むのが遅くて……」「忙しくて読書のモチベーションが上がらない」という人もいるだろう。本の虫でなくとも、本の力によって自分を成長させたい。そう願う方にとって福音の書と呼べるのが、『精神科医が教える 良質読書』である。

この本が斬新なのは、読書嫌いな人、読むのが遅い人のために書かれているという点だ。「三角読み」「振り子読み」「感覚的読書法」。自身も実は読書嫌いだと明かす著者が編み出してきた、読書の常識を変えてくれる読書術が開陳されている。「自分の個性を尊重した読書スタイルの構築が大事」「量よりも質」「不親切な本を読んで人は成長する」。そんなメッセージが込められ、本との向き合い方をガラッと変えてくれる1冊だ。

わかりやすくて即効性のある本から得られるメリットも大きい。だが、読み進めるのに苦労するが、人間としての成長にじんわりと効く漢方のような本を見つけ出すことで、読書そのものから得られる果実がより大きくなるのではないだろうか。自分を真に成長させる、価値ある読書体験を求める方は、本書を読んでみていただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

名越 康文(なこし やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析などさまざまな分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院)、『驚く力~さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行)、『どうせ死ぬのになぜ生きるのか』(PHP新書)、『「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    知恵と経験を振り絞りながらでないと理解できない「不親切な本」を読むことで、人ははじめて成長し、限界を突破できるようになる。
  • 要点
    2
    「読む・考える・書く(ツイートする)」をくり返す「三角読み」で、読書が長続きする。
  • 要点
    3
    感動が読書の原動力になり、「わかった気になる」ことの積み上げが、飛躍につながる。
  • 要点
    4
    「頂にある本」を心の糧にすると、日頃の読書でも良い緊張感が生まれ、読書欲が刺激されていく。

要約

はじめに

著者が読書をする2つの理由

「読書が苦手で30歳まで本を読まなかった」。そんな精神科医の著者が、今では少なくとも月に5冊、多いときは10冊の本を読んでいる。

読書をする理由は2つある。1つは、テレビのコメンテーターや講演などのアウトプットの質を高めるために、常に情報をインプットし続けなければならないためだ。2つ目は、精神科医として「人間とは何か」という問いに向き合い、あるべき人間の姿に出会いたいと考えているためである。

これらを満たすために大事なことは何か。それは、今の自分では到底理解できないような、さまざまなジャンルの頂点に位置する「頂にある本」に挑戦することである。著者の場合は、空海の原著などがそれにあたる。一回に数ページ、あるいは数行しか進まない。そんな本を読み、限界を超える経験が、生きる力になる。

限界を超える読書には思わぬ効用がある。相手の話を理解しようという姿勢が育まれ、聞く力が磨かれるのだ。人は一般的に他人の話を7割聞き逃しているという。しかし、自分の理解を超えた本に向き合っていると、自分と感性の異なる他人の話に、3割くらいは素直に耳を傾けられるようになる。

「不親切な本」を読むことで人は成長する
LeManna/gettyimages

最近ベストセラーになる本は、知識や教養についてわかりやすく書かれ、デザインなど読みやすい工夫が施された本が多い。こうした「親切な本」から知識を増やすことも、もちろんよいし便利である。

しかし、それだけでは成長に結びつかない。筋トレでも、ある程度負荷をかけてはじめて筋肉がつく。同様に、背伸びをして、知恵と経験を振り絞りながらでないと理解できない「不親切な本」を読むことで、人ははじめて成長できる。そして限界や壁を突破できるようになるのだ。

読書嫌いによる読書嫌いのための読書術

集中力ゼロでも続けられる「三角読み」読書術

集中力がない人でも、散漫力を読書に活かすことができる。1冊の本をずっと読むのではなく、高レベルの本や、すらすら意味がわかる本を2、3冊かわるがわる読む。そうすれば飽きがこず、それぞれの本の関連するポイントが見つかり、テーマを深掘りしやすくなる。

この散漫力を発揮した読書をさらに進化させたのが、「三角読み」読書術である。食事では、「ごはん・おかず・味噌汁」の三角食べが理想的だといわれる。同様に「読む・考える・書く(ツイートする)」をくり返すことで、読書が長続きするというわけだ。

このときツイッターがメモ帳がわりになる。ツイッターに思いついた内容を書くことで、頭をニュートラルな状態にして、読書や思索に戻っていける。

1冊あたり10分だけ集中読書をし、6冊を1時間で一巡させるというのも手だ。また、原本とその解説本を行ったり来たりする「振り子読み」という方法もある。「つまらない」と感じたら、無理に読み続ける必要はない。読書嫌いには読書嫌いなりの読み方があるのだ。

異なるジャンルを関連させる「他ジャンルリンク読み」
SIphotography/gettyimages

自分の専門分野の本よりも、他分野の本を読んだほうが専門分野の理解が深まることがある。著者の場合は、専門の精神医学の本よりも、ドストエフスキーの『白痴』や埴谷雄高(はにやゆたか)の『死霊』などの文学作品から受けた影響のほうが大きいという。

「理解」とは「別の言葉で言い換えられること」である。別のジャンルの人が別の言葉で何かを語るときに、それを他のジャンルの内容に翻訳できたときに、真の意味で理解できたといえる。このように専門外の本を読み、異なるジャンルを関連させる「他ジャンルリンク読み」によって、驚くほど理解の厚みが増す。

感覚的読書法のすすめ

「感動」こそが読書の原動力

ある講師が自分の専門分野について、一般の方が面白く、ためになると感じるように話をするとき。そして、講師がつい熱くなり、自分の興味あるテーマについて夢中で語るとき。参加者の満足度が高いのは後者だという。講師が熱くなっているときのグルーブ感やノリは、聴く者にも伝わり、理解の度合いが上がっていくためだ。

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要約公開日 2019.01.28
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