才能に頼らない文章術

「編集の文法チェックシート」でマスター
未読
才能に頼らない文章術
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才能に頼らない文章術
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2018年11月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「文章力は先天的な才能ではない」――よく耳にすることだが、書き方を教わってもそれをすぐに生かせるとは限らない。練習あるのみとわかっていても、くじけそうになってしまうものである。

本書は、従来の文章術の本とはひと味違う。付録の「編集の文法チェックシート」を使って、書いた文章を自ら添削できるようになっているのだ。「文章は誰かに見てもらって評価されるもの」と思っていた要約者にとって、これは驚きだった。

添削する際の評価基準も明確だ。「各項目1~2箇所のミスまでは△、3箇所以上は×という方針で判定するとよいだろう」とある。まるで数学の問題集の答え合わせをして、得点を確認するような感覚だ。こうすることで、自分の弱点が目に見える。回数を重ねるごとに成長が見え、モチベーションアップにもつながるだろう。

なぜ著者は、文章術をこれほどシステマチックに伝授することができるのか。その背景には、著者が大学院でシステムズエンジニアリングを学んでいたことがあるという。その経験をもとに、出版社勤務時代に身につけた「編集」のスキルを「システム」ととらえ、学術的にアプローチしたそうだ。OJTで身につけた仕事を言葉で表すだけでも骨が折れるだろうに、ここまでわかりやすくまとめるのには多くの苦労があったのだろうと推測する。

本書のチェックシートを活用すれば文章スキルが上がるという学術的な検証結果も出ている。他の文章術の本が合わなかった方に、是非読んでもらいたい一冊だ。

著者

上野 郁江(うえの いくえ)
株式会社エディットブレイン 代表取締役
エディトリアル・コンサルタント

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。
翔泳社で編集者としてビジネス書を担当後、独立。
翔泳社では、新規事業の創出やイノベーションの創出を解説した書籍などを手掛け、多くの書籍を世に送り出す。
大学院で学んだ、システムズエンジニアリングの手法をもとに編集スキルを「編集の文法」として体系化。
現在は同手法の内容をもとに、事業戦略にそった情報発信の提案や、「人に伝わる」文章の書き方支援、編集部構築支援プログラムなどを提供する。
また、複雑に絡み合う事象を編集者の視点で可視化する「編集思考」を提唱。
編集スキルの可能性を社会に広げている。

本書の要点

  • 要点
    1
    編集者の価値は「常に読者の視点で考えること」と「伝わる内容にすること」にある。
  • 要点
    2
    文章力向上のためには、編集執筆力を身につけることが重要だ。編集執筆力は「文章基礎力」「文章表現力」「文章構成力」「メディアマインド」の4つから成る。
  • 要点
    3
    「メディアマインド」とは、情報発信をするメディア人がもつべき心のあり方を指す。
  • 要点
    4
    読者を「楽しませる」「共感させる」文章を書く場合には、論理だけではなく、感性も交えた「ゆるやかなロジック」を使う。

要約

編集者の2つの価値

価値(1)常に読者のことを考えている
ronstik/gettyimages

文章力を向上させるためには、「編集者の視点をもって執筆する力」(=「編集執筆力」)が必要だ。編集者の価値は2つ。「常に読者の視点で考えること」と「伝わる内容にすること」だ。この2つを備えていれば、単なる「文章力」ではなく「編集執筆力」があるといえるだろう。

まず、「常に読者の視点で考えること」。この価値を理解するには、ライター業務と編集業務の違いを理解している必要がある。

本づくりには、企画、取材、執筆、編集、校了、販売という6つのフェーズがある。ライターの業務範囲は、取材と執筆だ。一方、編集者は、6つのフェーズをすべて担当する。常に販売フェーズのことを念頭において内容を作り込み、文章に編み込んでいく。

編集者は決して読者の存在を忘れない。企画フェーズにおいて設定した読者層に合わせて表現を変えたり、構成を組み替えたりといった工夫をこらす。「誰に」「何の目的で」「何を伝えるか」の3つの軸を明確にしつつ文章を組み立てていくのが、編集者の仕事だ。

価値(2)「伝わる内容」にする

編集者は、ライターや著者が書いた原稿に手を加え、読者にとって読みやすい形へと文章を整えていく。具体的には、句読点の位置や「てにをは」をはじめとした文法の修正、文章の構成の整理などを行う。

では編集者は、相手に「伝わる」文章を生みだすために、どのような基準で原稿を修正しているのか。その基準は5つある。

(1)相手の見る視点(横軸)と合っている:たとえば、会社で企画書を提出した際、「なんか違うから書き直して」と言われたとする。こうしたことはなぜ起こるのか。その原因として考えられるのは、視点の横軸のズレだ。上司は今後の事業分野の「成長性」を見ているのに対し、部下は事業展開の「実現可能性」を見ているのかもしれない。

(2)相手の見る抽象度(縦軸)と合っている:何かを説明するとき、細かい部分まですべて伝える必要はない。相手にとって必要な情報だけを選ばなければ、むしろ伝わりにくくなってしまう。

(3)自分の言葉を不用意に使わない:読者が使っていない独自の言葉は使うべきではない。

(4)相手の業界の言葉、専門用語を使っている:業界用語・専門用語は、業界に属さない人にはわかりづらいものだ。だが、業界内の人たちにとっては馴染み深いものなので、使った方が伝わりやすくなることもある。

(5)相手の過去の経験と合っている:身だしなみが悪い新入社員に対して「社会人なのだから、気をつけろ」と言っても、社会人経験の浅い相手には十分に伝わらないだろう。「身だしなみの悪い人がサークルの部長になったことはあるか?」などと、新入社員の経験に合わせた表現をすれば、本質的な意味を理解してもらいやすくなる。

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要約公開日 2019.04.06
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