声優という生き方

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出版社
イースト・プレス

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出版日
2019年05月10日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

著者の中尾隆聖氏は、アニメや声優に詳しくない人でも名前を聞いたことがあるかもしれない。それもそのはず、『それいけ!アンパンマン』のばいきんまん役、『ドラゴンボールZ』のフリーザ役という、2つのご長寿アニメで長年声を務めている業界のレジェンド的存在であるからだ。幼少期にこれらのアニメを観て育ち、その独特な声・セリフの真似をしたこともある方もいらっしゃるのではないだろうか。

そんな中尾氏は、芸能界に足を踏み入れてから声優一筋かと思いきや、キャリアのスタートは児童劇団であり、子ども時代はテレビ番組などにも出演していたという。声の仕事もしていたが、どちらかというと舞台やドラマの仕事をしたいと思っていた時期も長らくあったという。10代のときには、学業の傍ら夜の酒場でギター弾き語りのアルバイトをしたり、新宿二丁目でお店を経営していたりと、なんとも濃い人生を送っている方である。でも、とても楽しそうなのだ。ずっと演じることが好きで、そのまま続けてきたのだということが伝わってくる。

現在は俳優、声優、そして若い世代の声優の養成にも携わっている著者の役者人生と、その経験と絡めて、声優とはどのようなものなのかが、たっぷりと語られている本書。声優という職業に関心がある人にとっては良き入門書、そして声優を目指す人にとっては必読書となるだろう。また、好きなことで身を立てていきたいという人にとっても、本書はひとつの道しるべとなってくれるに違いない。

著者

中尾隆聖(なかお・りゅうせい)
東京都生まれ。3歳で児童劇団に入団。5歳で文化放送のラジオドラマ『フクちゃん』のキヨちゃん役でデビュー。声の出演に『それいけ!アンパンマン』(ばいきんまん役)、『ドラゴンボールZ』(フリーザ役)、NHK『おかあさんといっしょ』の人形劇「にこにこ、ぷん」(ぽろり・カジリアッチⅢ世役)などがある。第25回日本映画批評家大賞“アニメ部門最優秀声優賞”、第11回声優アワード“富山敬賞”を受賞。1992年より関俊彦とともに劇団「ドラマティック・カンパニー」を主宰する。

本書の要点

  • 要点
    1
    数十年前は俳優の傍ら、声優の仕事もこなす人が多く、専業の声優はほとんどいなかった。現在、声優は人気の職業となり、仕事は全てオーディションで勝ち取る。オーディションの競争率は高いため、まず落ちるものであるから、落ち込む必要はない。
  • 要点
    2
    著者は初めから声の仕事をしたかったわけではなかった。しかし、演じることが好きでただ続けていたら、人との出会いを通じて道が開け、声優としても俳優としても活躍できるようになった。
  • 要点
    3
    作品に合う声、口調というのは、毎回異なる。それを見つける作業が声優の醍醐味でもある。

要約

声優の現場

声優という仕事

「声優」という言葉はかなり古くからあったようだ。戦後にテレビが普及し、海外ドラマや洋画のテレビ放送が取り入れられ、『バークにまかせろ』の主役を若山弦蔵氏、アラン・ドロンの吹き替えを野沢那智氏が担当するなど、声と俳優がセットになっていった。これがのちに「第一次声優ブーム」と言われた時代である。

けれど、演じたのは舞台俳優などが多く、声優は「役者」としての活動の一部と考えられていた。そのため、現在50代以上のベテラン声優たちは、役者として生きてきて声優にたどりついたという感覚の人が多いようであり、著者もそのひとりである。

昔であれば、同じ演技・表現の世界でも、歌なら歌、映画なら映画、芝居なら芝居と、境界線のようなものがあったが、現在はすっかりボーダーレスだ。著者は演じることがとにかく好きで、声優はもちろん、生のお客を相手にした舞台にも立ち、精力的に活動を行っている。声優であれ、他の演技であれ、入り口は違っても、演じることの難しさ、楽しさは役者としての共通の魅力だろう。

アニメ業界は収録日が重要
Kwangmoozaa/gettyimages

アニメ業界では、レギュラーのアニメ番組はいまも昔も収録日が決まっており、キャストが一堂に集まって、アフレコが行われる。

基本的に週に1回、2時間半~3時間で1話ぶんを収録する。収録開始時間はおおむね平日、だいたい午前は10時から、午後は16時からである。著者がばいきんまん役を務める『それいけ!アンパンマン』も、約30年前の放送開始から毎週同じ曜日・時間で収録をし続けているという。

ひとりのためにスケジュール変更をすることはなく、都合が合わなければ別の人がキャスティングされる。そのため、あるレギュラーのアニメ番組に出演している場合は、それと同じ収録日の別作品には出演することができないため、アニメ業界は「まず収録日ありき」な部分がある。収録日はオーディションを受ける役柄などにも関わってくる大事な要素だ。

オーディションは落ちて当たり前
ibreakstock/gettyimages

声優の仕事はオーディションが基本である。新人、人気声優、ベテランなどは関係なく、オーディションを受けないと始まらないのだ。

オーディションは事務所を通して募集がかかるため、事務所に入っていない若手や新人にはチャンスすら与えられないということになる。また、事務所ごとに応募できる枠も決まっている。

オーディションに参加できたとしても、「オーディションは落ちて当たり前」で、それは十分に頑張っている人たちにとってもそうなのだ。

そもそも実力のある順番通りにキャスティングされるのであれば、オーディションは必要ない。ひとつの作品は、声優以外にも、作画監督、音楽など様々な人・要素が合わさってひとつの世界観をつくる。作品内のバランスを考えたとき、主要人物のうち2人の声質が似ていれば、別の声質の人が選ばれる場合もある。キャスティングもアンサンブルなのである。だから、オーディションに落ちても「たまたまダメだった」と思って、必要以上に落ち込む必要はないという。

アフレコ現場の様子とマイクワーク

アフレコ現場ではチームワークが大切だ。『それいけ!アンパンマン』は長年同じメンバーでやっているため、既にチームワークができあがっている。しかし、そこに若い声優などがゲストで入ると、

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要約公開日 2019.07.21
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