事業を創るとはどういうことか

「温度ある経済の環」を生み出すビジネスプロデューサーの仕事
未読
事業を創るとはどういうことか
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「温度ある経済の環」を生み出すビジネスプロデューサーの仕事
未読
事業を創るとはどういうことか
出版社
出版日
2019年09月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「日本ではイノベーションは起きない」と言われて久しい。しかし目に見えるイノベーションの成果は氷山の一角であり、その背後には膨大な数の新規事業があるはずだ。ただそのほとんどが、日の目を見ずに海の底に沈んでいる。もはやそこに氷山があるのかどうかもわからないほどに。

本書によると、新規事業において重要なのは、プロジェクトに関わる人の心だという。先進性やビジネス的な観点はもちろん大事だが、関係者が主体的に動いていないプロジェクトは、結局のところ成功しない。世の中にはまだまだ解決するべき社会的な問題や、実現すれば生活をもっと便利にできることであふれている。新規事業を成功させるためには、「社会を変える」という問題意識をプロジェクトメンバーが共有し、新規事業を成功に導くように動かなければならない。新しいかどうか、儲かるかどうかだけに着目していては、イノベーションは生まれないのだ。

本書ではホワイトグローブ社という架空の企業を土台にして物語が進むが、驚かされるのはその圧倒的なリアリティである。これまでいくつもの新規事業に関わってきた著者だからこそ、ここまで新規事業に携わる者の苦悩を多角的に描けるのだろう。それだけに新規事業を立ち上げる人にとっては、大いに参考になるはずだ。

ライター画像
香川大輔

著者

三木 言葉 (みき ことば)
CROSS Business Producers株式会社 代表取締役
世界市場をターゲットにした新たな技術を用いた新事業創造が専門。様々な価値観の中にも共通する想いを見出し、事業成果創造への道筋を創り出す。
通信・メディア領域をはじめ、新しいテクノロジーを活用した案件に強みを持つ。
事業企画立案・実行戦略策定、市場化のための実証実験企画・実施コーディネートをはじめ、事業立ち上げの初期に必要となる国内外パートナシップ対象抽出・デューデリジェンス・アライアンス企画、実行チーム設計、人材採用・評価制度構築、事業スキーム締結(法人設立)、広報企画などに経験保有。日本、米国、韓国、インド、フランス、英国、シンガポール、フィンランドをはじめ、様々な国においてプロジェクトを経験。
早稲田大学社会科学部卒業、早稲田大学商学研究科(MBA)修了、早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程(商学専攻)、IMD ” MOBILIZING PEOPLE PROGRAM(MP)” 修了、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)東京・ロンドンオフィス、富士通株式会社及び株式会社富士通総研を経て現職。

本書の要点

  • 要点
    1
    新規事業を成功させるためには、「温度ある経済の環」をつくらなければならない。そのためのフェーズとして、「将来ビジョンを描く」「実現のシナリオを作る」「事業を孵化させる」の3つがある。
  • 要点
    2
    「将来ビジョンを描く」フェーズでは、プロジェクトメンバーを社内外から広く募り、討議するべきである。
  • 要点
    3
    「実現のシナリオを作る」フェーズでは、「心」と「数字」の両面に目を向ける必要がある。
  • 要点
    4
    「事業を孵化させる」フェーズではクイックローンチをして、組織を動かすことが求められる。組織を動かすことは、組織の文化や組織の在り方そのものの変革を伴う。

要約

【必読ポイント!】事業開発を始めるために

人間の「心」が創る新規事業

新規事業という言葉には、わくわくするような響きがある。一方で実際の現場では、ネガティブな発言であふれていることも少なくない。担当者や幹部社員、経営層までもが、「できない理由」を口にしていることもザラにある。

あらゆる事業開発は、人間の「心」が介在する。そのためプロジェクトの現場がネガティブな空気に覆われているようでは、ワクワクするアイデアが生まれることはない。新規事業を成功させるためには、関係者のすべてが前向きな気持ちや感謝の心を持ち、「温度ある経済の環」をつくる必要がある。

ここからは架空の企業であるホワイトグローブ社の新規事業開発のストーリーを軸に、「温度ある経済の環」をつくるための方法を解説していく。

ホワイトグローブ社が挑む新規事業
PeopleImages/gettyimages

ホワイトグローブ社は、年商約6兆円の総合商社だ。売上高が横ばいの状況が続く現状を打破するため、同社は「2025年までに売上10兆円を目指す」という野心的な目標を掲げた。そして同社の事業部の一つを構成する社会インフラ事業グループには、100億円規模の新規事業を立ち上げるミッションが与えられた。しかし多くの従業員は既存事業の数字を守ることに精いっぱいで、変革につながる成果は出ていない。

既成観念にとらわれずに新規事業を進めるため、第一事業部長の小柿のもとにアメリカ帰りの佐藤が配属された。早速「通信インフラシェアリング」というビジネスを提案した佐藤だったが、社会インフラ事業グループの意見交換ワーキンググループでは反対意見が相次ぐ。

こうした状況を打開するために、小柿は外部のコンサルティング会社に支援要請することを決断する。複数のコンサルティング会社の提案と見積もりを比較検討した結果、主役はあくまでクライアントという考え方を持ち、金額も他社より安価なZ社の袴田に依頼することとなった。

新規事業を立ち上げるための3つのフェーズ
matdesign24/gettyimages

新規事業を立ち上げるといっても、小柿や佐藤のように何から着手すればよいのか、頭を悩ませる人は少なくない。そこで事業開発を、シンプルな3つのフェーズに分けて考えてみよう。

最初は「将来ビジョンを描く」フェーズだ。ここではただ単に未来を想像するだけではなく、実現したい未来を見出すことが求められる。そのためには「ビジネス構成図」を使って、将来ビジョンを描き出さなければならない。

第2のフェーズは、「実現のシナリオを作る」である。このフェーズでは、基本設計と基礎工事を分けて考える。基本設計においては、将来ビジョンにもとづいて商品やサービスを具体化し、担当する人材やチーム、他社との連携方法について設計する。次いで基礎工事では、商品の準備やマーケティングの立案に加えて、関係者が情熱を持てるようにする「心のマネジメント」や、事業の収支モデルを作る「数字のマネジメント」を行う。

最後かつ最も大切なのが「事業を孵化させる」フェーズだ。トライアルを重ねることで、小さくとも目に見える成果を生み出していく。

将来ビジョンを描く

動き出す通信インフラシェアリング事業

アメリカ駐在帰りの佐藤と若手コンサルタントの袴田は、通信インフラシェアリング事業の市場調査に着手する。インターネットを使った調査によると、この分野の市場は急速に拡大しており、特にインドネシアにおいて成長期待が大きいことがわかった。しかもホワイトグローブ社は、インドネシアに営業拠点と顧客ネットワークを持っている。

しかし佐藤のなかに「このビジネスをなぜ立ち上げるのか」という大義がないことを小柿は見抜く。

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要約公開日 2020.01.24
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