世界「倒産」図鑑

波乱万丈25社でわかる失敗の理由
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学んだ経営理論は現場で実践しなければ意味がない。だが実践となると「自社のヒト・モノ・カネのバランスはどうあるべきか」「新市場に挑むかどうかはどう判断すればいいのか」「攻めの姿勢はどこまで許されるのか」など、現実的なさじ加減を知りたいと私たちは思う。業界の特色や時代背景、テクノロジーの環境などによって導き出す解は異なるだろうし、シナリオ通りに事が運ぶことなどほとんどないかもしれない。それでも、少しでも汎用的な判断基準を自分の中に持っておきたいと思うのだ。

そこで本書の登場である。本書は世にも珍しい世界の「倒産」図鑑だ。図鑑という名の通り、親しみやすいイラストで企業が擬人化(!)されて描かれ、倒産までの事業のアップダウンがグラフで示されている。25の倒産事例は系統別に分類され、わかりやすく解説してある。

過去を振り返りながら「なぜ倒産したのか」「どこで間違えたのか」を考察するので、現在の私たちからすると愚かな意思決定に見える事例も中にはある。しかし、当事者の立場に立って、その当時その環境下で自分は最善の解を導き出せたかをトレースしてみると、自らの意思決定の不確かさを認識することができるはずだ。これは失敗のケースだからこそできることだ。また、戦略の攻守バランスの取り方などは、ケーススタディだからこそ具体的に学べるポイントだといえるだろう。

当事者にとっては不名誉な図鑑に違いないが、ビジネスの現場にいる私たちにとってはこの上なく貴重で示唆に富む、座右に置くべき一冊である。

ライター画像
金井美穂

著者

荒木 博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長
株式会社フライヤー 取締役COO
1975年生まれ。1998年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、住友商事入社、人材育成に関わる。2003年、グロービスに入社。法人向けコンサルティング業務を経て、グロービス経営大学院でオンラインMBAの立ち上げや特設キャンパスのマネジメントに携わる。2015年、グロービス経営大学院副研究科長に就任。2018年、グロービスを退社後、株式会社学びデザインを設立し、代表取締役に就任。書籍要約サービスのフライヤー取締役COOも務める。著書に『ストーリーで学ぶ戦略思考入門』(ダイヤモンド社)、『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。個人ブログなどで情報発信中。
●個人ブログ https://manabi-design.jp/
●twitter https://twitter.com/hiroyuki_araki

本書の要点

  • 要点
    1
    好調時には経営の本質的な課題に気づきにくいが、そういう時にこそ失敗事例を通じて「水面下に潜む課題」に意識を向ける必要がある。
  • 要点
    2
    戦略に問題があって倒産するケースのひとつとして、成功体験にとらわれて変化に対応できないということが挙げられる。重要なのは新技術を世に出しつつ新市場の可能性を「学習」する姿勢だ。
  • 要点
    3
    マネジメントに問題があって倒産するケースのひとつとして、組織として機能不全に陥っていることが挙げられる。大勝負の決断をするときには、組織内部の意思疎通が十分できているかを確認することが大切である。

要約

失敗から学ぶ

倒産の5つの型
mirsad sarajlic/gettyimages

著者は、企業経営の傍らビジネススクールの講師を務める。著者がその立場から痛感するのは、ビジネスの現場でセオリーを実践することの難しさだ。「売上増は七難隠す」というが、好況下で短期的な成功を手にした企業は「経営の本質的な課題」に気づきにくい。成長しているときこそ失敗事例を通じて「水面下に潜む課題」を考えるべきなのだ。失敗事例には、そこからしか学べないことがたくさんある。

本書では、失敗事例を倒産原因別に体系化して掲載している。まず倒産の原因別に大きく「戦略に問題があったケース」と「マネジメントに問題があったケース」という二つに分類する。

そのうえで、前者を2つに分ける。成功体験にとらわれて重要な局面で変化に対応できず倒産した「過去の亡霊」型と、成功確率の低い戦略で勝負に挑んで倒産した「脆弱シナリオ」型だ。

後者は3つの型に分ける。競合を意識するあまり自滅した「焦りからの逸脱」型、マネジメントが適切でなかった「大雑把」型、トップと現場が遠すぎて組織としてうまくいかなかった「機能不全」型である。

そもそも「倒産」とは

倒産は必ずしも企業生命の終焉を意味するわけではない。倒産後復活して成長する企業もあれば、再び倒産してしまう企業もある。

具体的な事例を紹介する前に、まず「倒産」の定義を確認しておこう。帝国データバンクによると、「倒産」とは「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」、つまり借金を返せなくなってしまった状態を指す。

倒産の処理方法としては、会社を消滅させるパターンと、事業を継続しつつ債務を弁済するパターンがある。会社更生法や民事再生法が適用されて再建をめざすのは、事業を継続するパターンのほうだ。本書には、両方のパターンの倒産事例が紹介されている。

戦略上の問題

「過去の亡霊」型:分析重視で可能性を逃したポラロイド
Chris_Kreymborg/gettyimages

ポラロイドは、アメリカの天才発明家であった、ランドが設立した会社だ。ランドは、写真の現像時間がわずか50秒しかかからないインスタントカメラを発明する。通常のカメラでは現像まで数週間かかっていた当時、この発明は画期的で、ポラロイドは著しい成長を遂げた。

しかしその後、カメラ業界の巨人・コダックが通常のカメラの現像時間を60分まで短縮することに成功すると、インスタントカメラの優位性は弱まった。さらに、キャノンなどの日本企業がより画質の良いコンパクトカメラを世に送り出し、ポラロイドの経営は低迷していく。

この状況の中、実はポラロイドは次のイノベーションの種を持っていた。1980年代半ばに、フィリップスとのジョイントベンチャーにより、デジタル化へ踏み出そうとしていたのだ。しかし、デジタル技術という新市場の魅力は既存のロジックでは分析できず、デジタル化に向けた企画はすべて否決され、研究開発費は既存製品のブラッシュアップに振り向けられた。その後1995年にデジタルカメラの時代がやって来ると、ポラロイドは時代から取り残される結果となり、連邦倒産法11章を申請することになってしまう。

経営学者クリステンセンの著書『イノベーションのジレンマ』には、大企業が革新的技術を導入できない理由のひとつとして、「存在しない市場は分析できない」ことが挙げられている。重要なのは「分析」ではなく、新技術を世に出しつつ新市場の可能性を「学習」する姿勢だ。変化に対応できる強い人材や組織となるためには、「分析できないことにはチャンスがある。失敗を通じて学習していこう」というスタンスが大切なのである。

「脆弱シナリオ」型:事業意欲が先行し過ぎて破滅した鈴木商店

鈴木商店という名は、今でこそ知る人は少ないかもしれないが、双日や神戸製鋼所、帝人、アサヒビール、サッポロビール、三井住友海上火災保険などの有名企業のルーツは同社にさかのぼる。鈴木商店は1874年、神戸で海外の砂糖を輸入する「洋糖引取商」として発足した。

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要約公開日 2020.01.28
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