科学がつきとめた「運のいい人」

未読
科学がつきとめた「運のいい人」
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科学がつきとめた「運のいい人」
出版社
サンマーク出版

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定価
770円(税込)
出版日
2019年05月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「なんだか最近ついてないんだよね」と友達にこぼす。懸賞に当たれば、うれしい気持ちとともに「こんなことで運使っていいのかな」と考える。すごく信じているわけではないけれど、なにかと意識してしまう「運」について、脳科学者の視点から、科学的にアプローチしたのが本書だ。

ここで扱われている「運がいい人」になるための方法の中には、「早寝早起き」や「『私は運がいい』と書いた紙を貼っておく」など、過去にどこかで聞いたことがあるようなものもある。しかし、そういった事柄についても科学的な根拠に基づいて説明しているため、納得しながら素直な気持ちでやってみようと思うことができる。また、自己イメージが実際の行動に直結することを示す実験や、脳内神経伝達物質の話など、著者の専門である脳科学あるいは認知科学的な考察に関しては、より細かく具体的に描かれている。自分の身体にそんな特徴があるのかとわかって、非常に面白い。

本書には、運がいい人になるための秘訣がとにかくたくさん書かれている。明日から実践できることだけではなく、「理屈はわかるけれど、ちょっとすぐに実践するのは難しい」ことも含まれている。いずれにせよ、1個でも2個でもできることから取り組んでみて、折に触れて読み直してみたいと思わされた。「運がよくなりたい」と一度でも思ったことがある人には、ぜひ手にとっていただきたい一冊である。

ライター画像
河合美緒

著者

中野信子(なかの のぶこ)
科学者、医学博士、認知科学者。東日本国際大学教授。1975年生まれ。東京大学工学部応用化学科卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。08年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。脳科学、認知科学の最先端の研究業績を一般向けにわかりやすく紹介することで定評がある。コメンテーターとしてテレビ番組に出演する傍ら、ベストセラーも多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    「運」は、もともと持っているものというよりは、その人の考え方や行動の仕方によるものである。そして、「運がいい人」に共通する考え方や行動パターンを分析することで、だれでも運がいい人になることはできる。
  • 要点
    2
    運がいい人は自分の特性をよく知り、最大限に生かす方法を考える。また、自分が「運がいい」と思い込み、物事に取り組む時にプラスの自己イメージを持っている。
  • 要点
    3
    運がいい人は明確な目的をもって物事に取り組む。その過程でたとえ不運なことが起きたとしても、決して途中で諦めたりしない。

要約

運を科学的にとらえるとは

運がいい人はつくれる
Deagreez/gettyimages

運は一見非科学的なものであり、科学的に扱うような対象ではないと感じる人もいるだろう。しかし、非科学的に感じるものであっても、科学者の目でていねいに分析すると、科学的な根拠が見つけられることがある。

「運がいい・悪い」を考える際にまず忘れてはならないポイントは、私たちの身の回りには「見えない」運・不運が無数にあるということである。たとえば、普段通っている道に、100万円が入った封筒が落ちていたとする。しかし、その日に限って別の道を選択したために、100万円を拾うことはなかった。いつもと違う道を選んだ点で運を逃しているが、当の本人には「運が悪かった」という自覚は生まれない。

私たちはつい、目に見える運・不運だけに着目しがちだ。その裏側には、何倍、何十倍もの自覚できない、検証できない運・不運があることを知っておく必要がある。こう捉えると、誰にでも公平に運は降り注いでいる、ということがわかるだろう。

それでも世の中は、運がいい人と悪い人に分かれているように見える。公平に降り注ぐ運を上手にキャッチできる人、不運を上手に防げる人、あるいは不運を幸運に変えられる人などが、「運がいい人」である。そして、この運がいい人といわれる人たちを観察すると、共通の行動パターン、物事のとらえ方、考え方などが見えてくる。つまり、「単に運に恵まれている」わけではなく、平等に降り注ぐ「運」を生かす行動や考え方をしているということだ。それらは科学的に説明を付けることができる。本書は、「運をよくするための行動や考え方」について、脳科学の知見をもとに解説している。

【必読ポイント!】 運がいい人になるために

今の自分を生かす
LightFieldStudios/gettyimages

運がよくなるために、今の自分とは違った人になるために努力することは、かえって「運のいい人」から自分を遠ざけていってしまう。

脳には人それぞれ特徴があり、それによって個性がつくられている。たとえば、人間の脳は、安心感、安定感、落ち着きを感じさせるセロトニン、「やる気」をもたらすドーパミン、集中力を高めるノルアドレナリンなどの神経伝達物質を出す。これらは私たちが健康に生きていくために必要であるが、増えすぎると脳や体に悪影響を与える。そのため、それらを分解し、全体量のバランスをとるモノアミン酸化酵素という物質が存在する。この酵素はその分解の度合いに遺伝的な個人差があり、これがひとつの脳の個性を生み出す。

分解の度合いが低いタイプの女性の脳は、幸福を感じやすい脳だといわれている。特に度合いが低いタイプの人は、幸福度が高い一方で、反社会的行動をとりやすいとも考えられている。一見矛盾しているように感じるかもしれないが、モノアミン酸化酵素の分解の度合いが弱いということは、セロトニンの分泌量が多いということを指す。すなわち、セロトニンによる安心感を強く感じるために、その反対の不安感がないのだ。

先のことを考えるからこそ不安感は生じる。セロトニンの分泌が多いと、「いまがよければいい」といった、反社会的行動をとりやすくなるのである。なお、モノアミン酸化酵素の分解の度合いが低い男性は、攻撃的なタイプになるといわれている。

このように私たちの脳は、自分では変えることのできない生まれつきの個性を持っている。自分の脳の特徴を自覚することでこの個性に対処していくことはできるが、全く変えてしまうことは不可能である。自分を変えるというのはそもそも至難の業なのだ。

そこで視点を変えて、「いまの自分を最大限に生かす」方法を考えてみよう。新しい何かを習得するのではなく、自分の体、自分の価値観など、すでに自分が持っているありとあらゆるものを生かしていく。これが運のいい人になる第一歩である。

自分は運がいいと思い込む

「自分は運がいい」と決め込むのも、運がよくなる秘訣である。

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