「0から1」の発想術

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「0から1」の発想術
出版社
定価
1,540円(税込)
出版日
2016年04月11日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

現在、富を創出する源泉が組織から個人に移ってきている。アップルのスティーブ・ジョブズやアマゾンのジェフ・ベゾスのように、傑出した個人が国や地域という枠を越え、世界経済に甚大な影響を及ぼす時代が到来したのだ。ビジネスパーソンは「0から1を創造する力」、つまり「無から有を生み出すイノベーション力」が今まで以上に問われるようになった。

大前氏によると、この力を磨くには、リアルタイムのケース・スタディを用いて、「もし、私が○○の社長だったら……」と、自分なりの結論を導き出す訓練が効果的だという。データを集めてロジックを組み立て、発想を飛躍させるのだ。とはいえ、何の備えもなく「発想の飛躍」をめざすのは覚束ないだろう。

そこで本書では、限界を突破する発想力の土台となる11の考え方が紹介されている。例えば、ユーザーの目的を考え、達成する方法を洗い出し、そこから打ち手を考える「戦略的自由度(SDF=Strategic Degrees of Freedom)」や、情報格差でサヤを抜く「アービトラージ(Arbitrage)」、空いているものを有効利用する「アイドルエコノミー(Idle Economy)」、業界のスタンダードにとらわれず、同質のものの中間に目をつける「中間地点の発想(Interpolation)」など、まさに本書は発想法の宝庫だ。こうした考え方を駆使した成功実例が随所に盛り込まれているだけでなく、11の発想法を発展させた「実践編」も実に読み応えがあり、一冊の本とは思えない充実度だといえよう。本書のケース・スタディで頭に汗をかきながら、発想の強力なジャンプ台を手に入れていただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

大前 研一(おおまえ・けんいち)
1943年、福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。
日立製作所原子力開発部技師を経て、72年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長等を歴任し、94年退社。
以後、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして幅広く活躍。現在、ビジネス・ブレイクスルー(BBT)代表取締役、BBT大学学長などを務め、日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。
著者に『企業参謀』『新・資本論』『質問する力』などのロングセラーのほか、『この国を出よ』(柳井正氏との共著)『日本復興計画』『「リーダーの条件」が変わった』『訣別』『原発再稼働「最後の条件」』『クオリティ国家という戦略』『日本の論点』『稼ぐ力』『低欲望社会』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書では、0から1を創造するための「発想力の土台」となる11の考え方が、豊富な事例とともに提示されている。
  • 要点
    2
    「固定費に対する限界利益の貢献の最大化」を図るには、特定のターゲットに絞って効率的に広告や販売促進を行う「ナローキャスティング」で、固定費となる機械や施設などの稼働率を上げることが重要だ。
  • 要点
    3
    新しいアイデアを得たいときには、「すべてが意味することは何か?」と問いかけ、思考をジャンプさせ、目の前に見えている「木」ではなく「森全体」に視点を引き上げることが求められる。

要約

戦略的自由度(SDF=Strategic Degrees of Freedom)

発想の起点は「ユーザーのニーズ」

イノベーション力を高めるための発想法の一つは「戦略的自由度」である。戦略的自由度とは、戦略を立案すべき方向の数を指す。具体的なステップは、まずユーザーの目的を問い、それを達成する方法(軸)を洗い出したうえで、いくつかの軸に沿って優位性・持続性のある方策を考えるというものだ。戦略的自由度は、改善の方向を定めることで、コストや時間の無駄を減らし、「ユーザーのニーズを満たす」という原点に立ち戻るうえで極めて重要となる。

この考え方を疎かにしたことで存続の危機に陥った企業も少なくない。例えばシャープは「亀山モデル」で優れた液晶技術での差別化を謳ったが、ユーザーに価値を感じてもらえることができず、コモディティ化(汎用化)の道をたどり、大赤字に転落してしまった。

あくまで「ユーザーは何を求めているのか」という命題を発想の起点にしなければならない。

開発費をかけずにアイデアで勝負!
yano66/iStock/Thinkstock

ここでは、製薬会社での薬の開発に大前氏が戦略的自由度を応用した事例を紹介する。新薬の開発には、10年以上の歳月を要し、開発費の高騰が課題となっている。そこで大前氏が目をつけたのは、既存の薬であった。まず、製薬会社の社員全員に、体の異常や不快感などを1年間書き出してもらったところ、「急な眠気に襲われる」といった些細な不満が多く、その諸症状に対処する薬を用意できていないという現状が浮き彫りになった。そして、既存の薬の組み合わせなどによって症状を和らげられることがわかり、この会社は新しい市販薬を数多く誕生させ、高い利益を得た。このように、社員をユーザーに見立てて不満を書き出すという作業で、ユーザーの目的を把握し、戦略的自由度を最大限に活かすことができたのだ。

ユーザーの目的は時代とともに変化する。「会社として何を提供したいか」ではなく、「ユーザーは何を求めているのか」という視点に立って発想することで、思考の壁を打破できるはずだ。

【必読ポイント!】 固定費に対する貢献(Contribution to the fixed cost)

稼働率向上のために一工夫

次に取り上げるのは、「固定費に対する限界利益の貢献の最大化」という考え方である。限界利益とは、売上高から変動費を引き算したものを指す。

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