読者が選ぶビジネス書グランプリ2018 表彰式&トークセッション
受賞著者、編集者による白熱トークセッション・レポート

2018年3月16日、『読者が選ぶビジネス書グランプリ2018』受賞作の著者、編集者をお招きして、表彰式、トークセッションを開催しました。

「ビジネス書を評価するべきは、ビジネスパーソンではないのか?」をテーマに立ち上げた『読者が選ぶビジネス書グランプリ』。「読者=ビジネスパーソン」が価値ある書籍を評価する本グランプリは今年3回目の開催となりました。

約200名が参加し、盛り上がりを見せた表彰式とトークセッション。その一部を紹介します。

結果詳細はこちらから

受賞著者・編集者の表彰式

表彰式は、フライヤー代表取締役CEO大賀康史からのスピーチでスタート。

大賀:ビジネス書グランプリの取り組みは、フライヤー創業時の想いを体現するものです。
読者の声を集約することにより、ビジネスパーソンにとって本当に価値のある本が健全に評価され、書店でもインターネットでも大きく露出されて読者に届く。こうした世界観を実現したいと考えていました。第3回となる今回は、多くの協力各社のおかげで、グランプリ受賞作が全国の書店の1,000店舗を超える規模でフェア展開されました。


その後、グロービス経営大学院副研究科長、荒木博行さんより、各部門賞、総合グランプリ受賞の著者、編集者にトロフィーの授与を行いました。司会は文化放送アナウンサー、小尾渚沙さん。その模様を写真で紹介します。


マネジメント部門賞 『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』(アンドリュー・S・グローブ著)、担当編集者の日経BP社、中川ヒロミさん。


ビジネススキル部門賞 『スタンフォード式 最高の睡眠』(西野精治著)、担当編集者のサンマーク出版、梅田直希さん。


政治経済部門賞 『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(講談社)、著者の河合雅司さん。


リベラルアーツ部門賞 『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(佐藤航陽著)、担当編集者の幻冬舎、箕輪厚介さん。


ビジネス実務部門賞 『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』(ピョートル・フェリークス・グジバチ著)、担当編集者のSBクリエイティブ、多根由希絵さん。


グロービス経営大学院特別賞 『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦著)の担当編集者の文藝春秋、衣川理花さん。


「ビジネス書グランプリ2018」ノミネート全書籍の中で最多得票を集めた総合グランプリ。
総合グランプリとイノベーション部門賞のダブル受賞となったのが、『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』(西野亮廣著)。担当編集者の幻冬舎、袖山満一子さん。


著者インタビュー「衰退のスパイラルから抜け出すには、大胆な発想転換が必要」

第二部は、政治経済部門賞に輝いた、『未来の年表』(講談社)の著者、河合雅司さんへのインタビューでスタート。河合さんは本書にどんなメッセージを込めたのでしょうか。フライヤー取締役CFO/COO 苅田明史がインタビューを行いました。


苅田:「2024年には全国民の3人に1人が65歳以上」「2033年には3戸に1戸が空き家に」。日本で起きている、こうした「不都合な真実」を「見える化」した『未来の年表』は衝撃をもって受け止められました。本書では「少子化について語るタブーが薄れてきた」とありましたが、具体的にどういうことでしょうか。
未来の年表
未来の年表
著者
河合雅司
出版社
講談社

河合:戦前の「産めよ、殖やせよ」という政策へのアレルギーから、「出産のようなプライベートな問題に国が関与するのはけしからん」という空気が日本にはありました。これにより、少子化対策について議論さえできない状況が続いていたのです。しかし、有効な対策がされてこなかった結果、日本の豊かさを維持できないところにまで追い込まれてしまった。今では、タブーに切り込んでいくしかないと。日本も変わりつつあります。
残念ながら、当分は少子化が続きます。そこで今後は、少子化を食い止めるための施策を進めながらも、人口が減っていくことを前提に、どう豊かさを維持していくかを考えていかなければなりません。


苅田:昨年のビジネス書グランプリ政治経済部門賞の受賞作品は『ライフ・シフト』(東洋経済新報社)でした。今後の人生の変化を提唱する本が2年連続受賞しています。読者が『未来の年表』を、より自分事として捉えて読むためのヒントを教えていただきたいです。

河合:日本では今後、高齢者が人口の半分を占めることになります。これまでの常識は通用しない。衰退のスパイラルから抜け出すには、大胆に発想を変えていかなければなりません。

「日本をどういう社会にしていきたいのか」。一人一人が価値観を変化させることで、日本を変えていけると考えています。現に、たとえばフランスでは、国を挙げて人口をどうやって増やすかを議論し、数々の政策を実施してきた結果、出生率を大幅に回復させました。こうした変化への一歩はいつでもスタートさせられます。それを念頭に、まずは本書の年表を眺め、これから何が起こるのかに目を向け、想像力を働かせていただきたいですね。


西野亮廣さんの特別ビデオメッセージ上映

次は、総合グランプリとイノベーション部門賞を見事、ダブル受賞した『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』の著者、西野亮廣さんの特別インタビューを上映しました。『革命のファンファーレ』を書くに至った背景とは? 卓越した広告戦略を考え出すためのヒントをどこから得ているのか? 西野さんの熱いメッセージ動画を、ぜひこちらのURLからご覧ください。

革命のファンファーレ 現代のお金と広告
革命のファンファーレ 現代のお金と広告
著者
西野 亮廣
出版社
幻冬舎

名編集者トークバトル! 編集者の役割とは? 「本」の未来とは?

マネジメント部門賞『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の担当編集者:日経BP社 中川ヒロミさん。そして、リベラルアーツ部門賞『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(以下、『お金2.0』)の担当編集者:幻冬舎 箕輪厚介さん。今をときめく名編集者が、どのように受賞作品を手掛けていったのか、本の未来をどのようなものだと考えているのか。モデレーターの荒木さんが切り込んでいきます。


荒木:まずはお二方が今まで手掛けてきた書籍についてお聞きしたいです。

中川:日経BP社に入って最初に担当したのは、「日経コミュニケーション」という通信の専門雑誌でした。ソフトバンクが通信事業に参入するといった激動を追い、面白い経験ができました。
アップルがiPhoneを発表した頃の通信業界は、メーカーよりもキャリアが力をもっていたのですが、メーカーであるアップルが一気に上位の座を奪っていきました。逆転の様子を目の当たりにして、シリコンバレーってすごいなと。それから、シリコンバレーに関する本を手掛けるようになりました。
『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』『フェイスブック 若き天才の野望』『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(いずれも日経BP社)などです。


30年の時を越えた、シリコンバレー最強投資家がすすめる「部下育成の教科書」

荒木:初版が出たのが30年前という『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を出すにあたり、著者アンドリュー・S・グローブさんに着眼した理由を教えてください。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント
HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント
著者
アンドリュー・S・グローブ
出版社
日経BP社
本の購入はこちら

中川:2年前に、シリコンバレーのスター経営者に慕われる最強の投資家、ベン・ホロウィッツの『HARD THINGS』(日経BP社)を出版しました。「最大顧客が倒産したとき、親友を降格させるときにどうしたらいいか」といった、彼の生々しい実体験をもとに、どう絶体絶命の困難を乗り越えるかが書かれた本です。最初は「CEO向けの経営書って、日本ではあまり読まれないんじゃないか」という声もありました。ですが、何かに立ち向かう人、新たな挑戦をする人には響いたみたいで、10万部を突破しました。
そのベン・ホロウィッツが「(『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』は)部下の育成における教科書だ」と書いていたので、ぜひ復活させたいと思ったんです。

「編集者の役割は著者をモチベートすること」

荒木:箕輪さんは、見城徹さんや堀江貴文さんなど、トップ・オブ・トップといえる人たちの本を次々に手掛けています。どうやって口説き落としたんでしょうか。

箕輪:この人に本を書いてもらいたいと思ったら、相手のことを徹底的に想像します。見城さんはまさに熱狂の人。人にすぐに会いにいくし、過剰なまでに人間対人間の関係を追求する。一方、堀江さんはその対極にある人。稼働を最小限にして高いアウトプットを出すことを追求しているのが想像できた。それで、各界のイノベーターにインタビューし、その分析を堀江さんに書いてもらうという考えがひらめき、『逆転の仕事論』(双葉社)ができました。
相手が何を望んでいるのかを徹底的に想像して、「これ、どんぴしゃだね」と思ってもらえるよう行動する。この一点に尽きるんじゃないかと思うんです。


荒木:リベラルアーツ部門賞の『お金2.0』(幻冬舎)は、どのように構想を考えたのですか。

お金2.0
お金2.0
著者
佐藤航陽
出版社
幻冬舎

箕輪:現在、NewsPicks Booksを手掛けています。書き下ろしで毎月1冊出版するという信じられない日々で(笑)。
昨年9月、佐藤さんがタイムバンクという時間を売買するサービスをやるから、箕輪に会いたがっている、と人づてに知りました。実際にお会いしたら、少年みたいに目をキラキラさせて「タイムバンクでお金の未来が変わります」と語り出して。とても面白い内容だったので、僕が運営する「オンラインサロン箕輪編集室」に投稿した。そしたら異常なまでにバズッたんです。「今が本を出すタイミングだ」と思い、打ち合わせから3週間で書いてもらいました。まさに、走りながら本をつくっている感じですね。

落合さんの『日本再興戦略』(幻冬舎)もそう。落合さんはめちゃめちゃ忙しい人なので、「12月までに出さないと、日本は変わらないですよね」と迫って、急きょ原稿を書いてもらった(笑)。こういうふうに、著者をモチベートすることが編集者の一番の仕事。とにかく書いてくれよ、と。そして一緒に日本を変えようと。ゆるやかに攻めても時代って変わらない。本気で出したいという、編集者一個人としての熱量と誠実さが伝われば、相手も動いてくれるんです。


熱狂するコミュニティをどうつくるか? 編集者は信用に足るキュレーターになる時代

荒木:NewsPicksアカデミアを見ていて、本を入口に、いかにコミュニティに読者を誘導するかという動線が練られていると感じました。このコミュニティについてどうお考えですか。

箕輪:情報量が爆発的に増えて、人が1日で処理できる量をはるかに越えてしまった。だからみんな、情報を選択したり決断したりする回数を減らしたいんですよ。となると、食べログみたいに、信頼のおけるコミュニティで「この人たちがおすすめしているから買おう」というように、コミュニティを判断基準にするようになります。それと同じことが本の世界でも起きています。

ただし、このコミュニティづくりって、想像するほど簡単にはできないんですよ。よく出版社や書店から「NewsPicksみたいなコミュニティをやりたい」といわれるんですが、じゃあ、真似してみてくださいと。会員になった人に毎日、本を発送するというのをやっていますが、普通にやると死ぬよ? と(笑)。熱狂するコミュニティをつくるには、半端ない熱量と手間暇がかかります。

同時に、必要な情報を自ら選べない人のかわりに、価値ある情報を選んでくれるキュレーターの価値は上がる一方です。編集者にとって、このキュレーション能力、目利き力がますます大事になるし、「あの人のいうことなら」と、信頼に足るキュレーターになることが求められています。

中川:箕輪さんがおっしゃるように、コミュニティを継続的に盛り上げるのって本当に大変で。オンラインサロンのように、実際に会っていない人にコメントやいいね! をしてもらうって、よほど本人に魅力がないと難しい。ですが、ネットの普及によって、昔はできなかったような方法で、読者とつながりを形成できるようになったのはたしか。時間の使い方の選択肢がいくらでもある中で、自分が出した本を読んでもらう。そのためには、著者を立てるだけでなく、編集者が前に出ていかないといけないと思います。


荒木:最後に、会場のみなさんへの一言をお願いします。

中川:30年前に出た『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を、マネジメント部門賞に選んでいただいてありがたいです。著者が2年前に、そして翻訳者が本書の発売前に亡くなられたので、本来なら今回の受賞を、真っ先に伝えたかったですね。

私自身、編集部でマネジメントする身ですが、自分のアウトプットではなくメンバーのアウトプットをいかに高めるかが大事だと痛感しています。本書はリーダーや管理職にグサグサくるメッセージがつまっているので、部下のいる方にぜひ読んでいただきたいです。
ちょうど昨日、アンドリュー・グローブが目標達成のために用いた「OKR (Objectives and Key Results)」というフレームワークの解説書、『OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』(日経BP社)が発売になりました。大きな目標「O」と、具体的な数値目標「KR」を組合せることで、目先の数字に振り回されず、部下のモチベーションが断然上がっていく。こちらもぜひお読みいただきたいですね。

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法
OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法
著者
クリスティーナ・ウォドキー
出版社
日経BP社
本の購入はこちら

箕輪:オンラインサロン箕輪編集室は、現在会員が600人くらいいて素晴らしい組織になってきた。この前「『お金2.0』の広告つくってよ」と募ったら、たった1時間弱で10案も出してくれたんです。クリエイティブなものって、「やらされてやる」「お金のためにやる」というものじゃない。寝る間も惜しいくらいに、コンテンツについて考え抜く。それくらいコミットしてるからこそ、熱量あるコンテンツが生まれる。毎月1冊NewsPicks Bookを出せているのは、箕輪編集室の彼らのおかげなんですよ。

2月末に『AIとBIはいかに人間を変えるのか』(幻冬舎)を出しましたが、AIとBI(ベーシックインカム)の文脈でいうと、今後は働かなくても食っていける時代になります。すると、仕事はお金を得る手段から、「お金を払ってでもやりたいもの」、つまりエンタメになっていく。
そうしたなかで、日本全体で考え方をアップデートしなきゃいけない。本もオンラインサロンもそれを世の中に伝えるための手段の一つ。本ももちろん必要だけど、今後はオンラインサロンの役割も大きくなっていくと思っています。

★2018年4月、要約公開★
AIとBIはいかに人間を変えるのか
AIとBIはいかに人間を変えるのか
著者
波頭亮
出版社
幻冬舎

最後に締めくくりの挨拶を荒木さんより。

荒木:普段、グロービスでビジネスパーソンの学びを設計する際に大事にしているのが「縦軸と横軸」という発想です。縦軸は自分の専門性をいかに研ぎ澄ませるか。ただし、この縦軸で縦に伸ばすことだけを求めていると、実は脆いんです。大事なのは、いかに知見を増やして横にすそ野を広げていくか。そこで役立つのが読書です。フライヤーの要約も読書の入り口となる大事なツール。すそ野を広げながら専門性を高めていくことを意識していただきたいと思います。


登壇者のみなさま、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
来年のビジネス書グランプリもぜひお楽しみに!

※書店の方へ
書店用のPOP・書籍リスト・ロゴはこちらからダウンロードすることができます。ぜひ販促にお役立てください

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文責:松尾 美里 (2018/03/27)
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