利用者70万人超のウォンテッドリーを支えるチーム力とは?
『起業の教科書』 出版記念スペシャルインタビュー vol.1

利用者70万人超のウォンテッドリーを支えるチーム力とは?

フライヤーでは『7人のトップ起業家と28冊のビジネス名著に学ぶ起業の教科書』の出版にあたり、トップ起業家・経営者に成功の秘訣をインタビューさせていただきました。サイトではインタビューの一部を紹介します。

「はたらくを面白く」するビジネスSNS、Wantedly(ウォンテッドリー)。IT・Web業界最大級のソーシャル・リクルーティング・ツールとなっています。

トップバッターは、そのサービスを運営するウォンテッドリー株式会社にて代表取締役CEOを務める仲暁子さんです。

── フェイスブックでの経験がウォンテッドリーのサービスを思いつくきっかけになったとのことですが、起業された経緯について教えていただけますか?

仲 暁子氏(以下、仲氏):大学2年生のときに仲間と起業を経験して、0から1を作るのが面白いなと思っていたんです。当時はフリーペーパーがブームだったので、「Chot★Better」という大学生向けのフリーペーパーを創刊したり、サイト構築を受託する会社をやったりしていました。起業自体にはこだわりはなく、オーナーシップをもって好きなことをやり、それが結果を生み出すというのが楽しかったですね。

就職活動のときには、「何をするかより誰と仕事をするか」を重視して、優秀な社員が多かったゴールドマン・サックスに入社しました。ところが、入社直後にリーマンショックのあおりを受けて、たくさんの人が解雇されてしまいました。お世話になった先輩や仲の良い同期がやめていくのを見て、10年後にその業界にいるイメージが湧きませんでした。「オーナーシップをもって、やりたかったことに挑戦しよう」という思いに背中を押され、退職を決意しました。

ゴールドマン・サックスを辞めたあと、昔から絵を描くのが好きで、学生時代に漫画作品を描いていたこともあり、漫画家を目指し始めました。作品を出版社に投稿したりしましたが、やはり、日本の漫画家志望はレベルがかなり高く、サラリーマンを経て突然漫画を描き始めた自分がその人達を抜くにはかなり時間がかかると感じ、「漫画でなくても自分の手で面白いプロダクトを作れたら」と方向転換。そこで立ち上げたのが、ボツになった漫画原稿を集めて掲載する「マガジン」というウェブサイトでした。

フェイスブックに参画したのはちょうどこの頃で、日本法人の代表とグロースチームのグローバルヘッドから「一緒にやらないか」と声を掛けてもらったんです。当時はまだ5人という小規模なオフィスで、何でもやれるという点に惹かれました。フェイスブックで経験を積むにつれ、自分のサイトは収益化が難しく、ビジネスとしてずっと続けていけるものではないなと気づきました。

そこで、ソーシャルメディアを使った面白いサービスを作って、それで食べていこうという気持ちで始めたのがウォンテッドリーです(当時の社名はフューエル株式会社)。立ち上げ当初は自分一人で、サイト構築もコードを自分で書きました。フェイスブックページの管理ツールを手掛けてみたりと、色々と試行錯誤するなかで今のウォンテッドリーのサービスの原型を作ったところ、それがヒットしたので、社名もウォンテッドリーに変えたという経緯があります。

事業を立ち上げることと事業を成長させること、それぞれに得意な人がいると思いますが、私は立ち上げが得意なので、そこまで大変ではなかったですね。

── ウォンテッドリーの立ち上げ当初は一人だったのですね。そこからチームを大きくしていくまでにはどんな経緯があったのですか?

仲氏:エンジニアを採用しようと、半年ほどエンジニア向けの勉強会に出向いて声をかけていたのですが、金融出身者が一人で立ち上げたスタートアップと聞いて胡散臭かったのか、最初は来てもらうのに苦戦しました(笑)。結局、プログラミングを独学してプロトタイプをリリースし、ネットで大きく取り上げられたことで、一気に採用がやりやすくなりました。

ゴールドマン・サックスで同期だった萩原(現COO兼CFO)と、テクノロジー部門にいた川崎(現CTO)がウォンテッドリー経由でジョインしてくれてからは一気に規模拡大して、2015年11月時点ではメンバー60人の会社へ成長しています。

── ウォンテッドリーの事業内容について、改めてご紹介いただけますか?

仲氏:よく「求人サイトでは?」と言われるのですが、実はウォンテッドリーの事業はビジネスSNS。ウォンテッドリーは次の二つの機能をもっています。

ひとつはつながりを管理する機能。2015年4月にリリースした「Sync」では、初めて会った人との関係をメモ検索・メモ書き込みすることで、ビジネスネットワークを可視化し、「あの人誰だっけ」というのをなくすことができます。もうひとつはウォンテッドリーのユーザーと企業をマッチングする機能。ユーザーは想いやストーリーに共感できる会社を見つけられるし、企業にとってはリーチできる人が広がるというメリットがあります。

── ユーザーはどういった方が多いのですか?

仲氏:現在法人顧客は1万3000社にのぼります。その四分の一がインターネット系のスタートアップで、そのほかは中小企業、NPO、行政です。最近は大手企業も増えてきました。IT業界に強いと思われがちですが、実は月間70万人のアクティブユーザーのうち、IT業界の方は10~20万人くらいです。特定の業界で流行っているというよりも、同じ大学の友人経由で広まっているようです。

── ウォンテッドリー以外にもSiori、CONTACT、Syncなど多様なサービスや機能を展開していますよね。こうした新規アイデアを出し合う会議など、新しいアイデアを生み出す仕組みがあるのでしょうか?

仲氏:アイデアの出し方は立ち上げ当初から今まで少しずつ変化しています。1年目のときはメンバーみんなで話し合って決めていたのですが、誰が責任を持つのかが明確でなく、うまくいきませんでした。2年目に私がアイデアを選んで、リーダーシップを取るようになってから、結果がついてくるようになりました。いまではWhatの部分だけ決めてHowの部分は任せるという方針を大事にし、それぞれのマネージャーに任せるようにしています。

アイデアを出す会議を行うかどうかはケースバイケース。先ほど挙げたつながり管理機能(Sync)はまだ新規事業なので意思決定にも私が関与しています。一方、マッチング機能については、「1を10にする」グロースの段階なので、進捗を定点観測するようにしています。

── チーム作りや採用について、仲さんはどのように関与していますか?

仲氏:エンジニアは分野ごとに得意不得意があるので、チーム作りについては各エンジニアのことをよく知る現場の人に意見を聞き、どの人とどの人の組み合わせならパフォーマンスが上がるかを考えています。

設立当初は面接もせずに人を採用していたのですが、いまはウォンテッドリーで成果を出している社員に共通する特性を書き出して点数化し、その点数が高い人を採用するというやり方に変えました。点数化する特性とは、チームのプロジェクトマネジメントができるか、レジリエンスがあるか、カルチャーに合うか、などです。この方式を導入してから人材のミスマッチはかなり減りましたね。

── 今後の会社としての目標と、仲さんご自身の夢について教えてください。

仲氏:ウォンテッドリーが掲げるミッションは「シゴトでココロオドル人を増やすこと」です。仕事で幸せなときというのは、寝食を忘れるくらい仕事にはまっているフロー状態のことだと位置付けていて、フロー状態だと集中力が高まり、高い付加価値を生み出すことができます。これからの時代、日本のような先進国においては高付加価値人材にならなければ、途上国など人件費が安い国に仕事を奪われてしまいます。高付加価値人材を増やすために「シゴトでココロオドル人」を増やしていきたい。

中長期的な数値目標として、国内に6000万人いる労働人口の中でも、知的労働者の約半分にあたる1200万人にウォンテッドリーのサービスを到達させたいと思っています。

個人的な夢は、「好きなことで食べていく」という状態を維持すること。今の仕事が楽しいですし、非常にいいメンバーに恵まれているので、これからもウォンテッドリーで世の中にインパクトを与えられるプロダクトを作っていきたいですね。

── ウォンテッドリーの社員の方々もフロー状態で仕事をされているのが伝わってきました。CEOとして組織のマネジメントで心がけていることは何ですか?

仲氏:社員とのコミュニケーションを増やすことを意識しています。組織の課題の根本には、ほとんどの場合、「コミュニケーションの欠落」があると考えているためです。具体的に心がけているのは次の三つです。

一つ目は、組織の方向性を言語化すること。トップの想いを、相手に共感してもらえるように繰り返し伝えることは意外に難しい。事業のWhyを愚直に語ることが、社員一人一人に自分事として捉えてもらうためにも重要だと考えています。ウォンテッドリーのカルチャーを社員に伝えるための冊子を全社員に配っているのも、想いを伝えるためです。

また、より具体的な方向性としては、各人の役割や目標を明確にすること。自分がどこを目指せばいいかがわかると、安心して仕事を進めやすくなります。昨年から新卒採用を始めましたが、入社したばかりの社員は目標だけ提示されても、達成方法がわからない。そこで、目標にたどり着くまでのステップをデザインしてあげるようにしています。

二つ目は、情報の透明性を高めること。予算や人事など経営陣にしか伝えられない内容以外はできるだけ共有しています。社員の階層間、部署間で生まれるコミュニケーションのギャップを埋め、円滑に進むように調整することも大事な仕事です。

三つ目は、社員の声を聞く回数を増やすこと。隔週で、社員数名と一緒にランチをするカルチャーランチというのを開いています。

組織作りにはプロダクト作りのような面白さがあり、デザイン通りにチームが変化し、成長していくのを見るのは楽しいですね。

── 背負っているものが色々あってなかなか踏み出せない人も少なくないと考えています。起業を通じて夢の実現を目指す人へのメッセージをお願いします。

仲氏:「0から1」と「1から10」のフェーズがあると思いますが、起業は「0から1」の要素が多いと考えています。そもそもプロダクトを作れるかどうかという予選の段階で9割方が消えていき、残った1割の企業の中でも、組織を成長させる段階で半分から3分の2が消えていく。

一番きついのは最初の予選突破です。最初の段階でプロダクトを作れるかどうかが生き残りの分かれ目なので、ものづくりの力を身につけておくことは非常に大切だと思います。

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文責:松尾美里 (2015/12/18)

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