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敏腕ヘッドハンターが教える「人を見る目」の鍛え方
5000人超ハイクラス人材を見極めたプロは「4つの階層」で人を選ぶ

敏腕ヘッドハンターが教える「人を見る目」の鍛え方

これまで経験やセンスによるものとされてきた「人を見る目」。人を見る際のポイントを体系化したフレームワークを惜しげもなく公開したのが、『人を選ぶ技術』(フォレスト出版)です。

著者の小野壮彦さんは、世界最高峰のヘッドハンティング会社であるエゴンゼンダー社にて、5000人超のエグゼクティブ人材を見てきた人物です。誰を採用して、誰を抜擢するのか? 人を見る目を鍛えるには? 株式会社フライヤー代表取締役CEO・大賀康史とともに、経営者にとって普遍的な「人」の課題について語りつくします。

日本企業では、「人を選ぶ技術」が蓄積されていない

大賀康史(以下、大賀):

これまで、人を見る目はセンスや経験によるものと思われがちでした。『人を選ぶ技術』では、その技術が体系的に言語化されていて、非常に画期的だと思いました。まずは、ご著書を執筆された背景をお話ししていただけますか。

小野壮彦さん(以下、小野):

執筆に至った背景には、国内の大企業もスタートアップも、おしなべて採用力が低いという、危機意識がありました。もし「企業の人を選ぶ力ランキング」という指標があったとしたら、日系企業はかなり諸外国から離されていると思います。

日系大企業の多くは、新卒一括採用には時間と労力をかけています。一方、中途採用になると、「人を見ずに経歴を見て」採用しがちな実態があります。強みのはずの改善活動がこの領域では足りず、人選びの知見や知恵も蓄積されていないように映ります。

言わずもがな、誰を採用し、抜擢するかは、会社にとって重要な意思決定です。例えば、経営トップが変わるだけで、会社全体の空気がガラッと変わります。そこまでいかなくても、採用した管理者層の活躍度合いは、業績に大きな影響をもたらします。

大賀:

大企業と同じく、スタートアップにおける人材採用も重要な意思決定だと思いました。5人の会社なら、6人目の人選はカルチャーの2割に影響を与えますから。

小野:

ほとんど例外なく、スタートアップは、大きな人選びの失敗を経験しています。ただ、日本のスタートアップの課題として、そういった痛い目にあった結果、人選びでリスクをとらなくなる傾向があります。間違いのない選択をしようと、業界知識や、スタートアップ経験者を過剰に求めてしまう方向に向かいがちなのです。

人間の本質を「構造」で捉えることで、もっとシステマチックに採用の判断ができるのではないか。そう考えて、本書では、人を4つの階層で捉えるフレームワークを紹介しました。地上1階が「経験・知識・スキル」、地下1階が「コンピテンシー」、地下2階が「ポテンシャル」、そして最下層の地下3階が「ソース・オブ・エナジー」です。

地上に出ている「経験・知識・スキル」はわかりやすく、ほとんどの面接ではこの表層部分においての分かりやすい連想ゲームでアリ、ナシを判断しています。しかし、地下部分を見ることができると、もっと本質的な連想ゲームができ、経験は当初不足していたけれども、やってみたら大活躍する。という候補者を見出すことができるようになります。

人を選ぶ技術
人を選ぶ技術
小野壮彦
フォレスト出版
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人を選ぶ技術
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著者
小野壮彦
出版社
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『人を選ぶ技術』P78「人を4つの階層で捉える」より
大賀:

人を見る目は後天的に身につけられる、鍛えられるという言葉に勇気づけられましたし、特にポテンシャルの4つの因子には、なるほどと思いました。

小野:

ポテンシャル・モデルは、エゴンゼンダーが人の「器」に着目し、ハーバード大学などとともにリサーチを積んで開発したコンセプトです。人の器の大きさや伸びしろは、「好奇心」「洞察力」「共鳴力」「胆力」の4つの因子で測ることができます。便宜上、「〜力」という言葉を使っていますが、これは「能力」ではなく「エネルギー」のようなもの。対話をするなかで、その人の言葉だけでなく、顔つき、表情、声のトーンなどから「感じ取って」いくものだというのがポイントです。

そして、最下層にあるソース・オブ・エナジーは、使命感と劣等感から構成されるものです。劣等感というとネガティブな意味に使われることが多いですが、人の成長や発展の源泉という観点ではプラスに働くものだと捉えています。

圧倒的に「人を見る目」を鍛えているのは、あの人材輩出企業

大賀:

人を見る目を鍛えるために効果的なトレーニング方法はありますか。

小野:

詳しくは企業秘密になりますが(笑)、これはスポーツのようなものです。正しいフォームを身につけること。それと、自分のプレーを見直して、フィードバックを回し続けることが大切です。テニスが上手くなりたいと思ったら映像を撮って見直すでしょうし、仲間やコーチにアドバイスを求めますよね。それと同様に、面接官同士で、候補者への評価を話し合うことはおすすめです。「なぜこの人がいいと思ったのか」「なぜ違和感を覚えたのか」など、他者に説明することで、解像度が上がってゆく。さらには、同僚や上司の意見を聞くことで、お互いの偏向性や先入観(バイアス)に気付いたりします。

私が参画しているグロービス・キャピタル・パートナーズでも、投資先のスタートアップに、採用評価委員会の設置をすすめています。オファーを出すか、最終判断をする前に、その候補者を面接した人たちが集まって、大いに議論をするのです。候補者1名あたり10分程度でいいかもしれません。そうすれば、他者からのフィードバックや検証を通じた学び合いが起こり、それが人選びの集合知として組織に蓄積されるのです。

大賀:

人を見る目を集合知として蓄積し、活かしている手本のような会社はありますか。

小野:

リクルートはこの分野ではダントツではないでしょうか。日本企業では唯一「世界選手権」で戦える会社だと思っています。同社は、創業時から心理学を経営に取り入れ、人の研究開発機関をもつ会社でもあります。トップから末端の社員まで、会社全体で「人を見る目」を鍛える仕組みがインストールされていました。

「Aさんを抜擢したほうがいい」「Bさんは〇〇の力が足りない」などと、かなり踏み込んだ議論がなされると聞きます。社員の変化を定点観測し、その言語化を迫られる。そうするうちに評価もフェアになるし、「こういう人は伸びる」といった知見が蓄積されています。

大賀:

トップだけでなく全社員が「人を見る目」を日常的に鍛えているのがポイントなのですね。

急成長をめざしたいが、「優秀だが有害な人」を雇うべき?

大賀:

ご著書では、「優秀だが有害な人」をいかに見抜くかという内容が紹介されていて興味深かったです。

小野:

「人としての優秀さ(優秀・平凡)」を縦軸に、「人としての善悪(有害・無害)」を横軸にとると、人を分類する4象限が生まれます。このうち「平凡で有害な人」は、その有害さを隠す狡猾さがないため、対応は比較的容易です。

厄介なのは「優秀で有害な人」です。彼らはめざましい実績を出すため重要なポジションに抜擢されやすいものの、周囲に悪影響を及ぼします。時には組織崩壊を引き起こしさえします。

大賀:

幹部クラスの登用では、まさに経営者の「人を見る目」が問われますね。同僚の立場だと、「優秀で有害な人」は避けたい。けれど、企業としてはこの人のおかげで業績が伸びているとなると、ポジションから外したり辞めさせたりする判断が遅れてしまう。そういう人を雇い続けるべきかという悩みを抱えている経営者は多いと思います。

小野:

経営者の立場に立つと、自社の成長を加速させるため、有害でも成果を出す人が欲しくなることも分かります。事実、急成長を果たしたメガベンチャーには、そういった人たちが居たことが多いです。ある意味で必要悪と言えなくもない。ポイントは、こうした人物を組織のカルチャーの多様性として受け入れるのかどうかです。誰を信じて任せるか、誰を登用するか。こうした「人」の世界は正解がないだけに、経営層の多くが悩むところでもあります。

大賀:

フライヤーももちろん成長を急ぎたいですが、もし「優秀で有害な人」が入社しても、組織のカルチャーの自浄作用が働いて、組織に定着しないように思います。「優秀で有害な人」の助けを借りなくても、既存のメンバーの創意工夫によって、成長を最大化できるのではないかと考えています。

小野:

そこは企業のビジネスモデルでカバーできるところでもあります。営業力に依存しない仕組みを作るとか、競争を挑むのではなく、自社独自の価値を提供するオンリーワン戦略をとるとか。

大賀:

ここは経営者の美学にもよりますね。5年、10年と長いスパンでの組織としての最適解を探りたいところです。

ポテンシャルは後天的に伸ばせるのか?

大賀:

ご著書の「人を4つの階層で捉えるフレームワーク」は、選ぶ会社側の目線だけでなく、選ばれる個人の目線でも興味深く、自身の人間性を高めていくうえでも重要なものだと思います。ポテンシャルを後天的に伸ばすことは可能ですか。

小野:

ポテンシャルの大部分は5、6歳の頃に決まるので、後から伸ばすことは難しいという立場をとっています。ですが、意外に「自身のポテンシャルに気づけていない」「ポテンシャルがあるのに開花していない」というケースが多くあります。

1つめのケースは、正しい自己認識ができていないケースです。たとえば、他者から見ると、十分好奇心はあるのに、本人はそうでないと思い込んでいるとか。そうした誤解を解くことで、リミッターがはずれて本来のポテンシャルが活かせるようになります。

もう1つのケースは、ポテンシャルの開花のチャンスを得られていないケースです。たとえば、趣味ではアイディアに満ち溢れているのに、職場ではそういった創意工夫はむしろマイナスとなるようなケースです。環境がポテンシャルの発揮を阻害しているようなこともあるのです。

大賀:

なるほど。個人としては、固定観念にとらわれず自分のポテンシャルを解放することが大事になる。それに対して組織の役割は、個々人のポテンシャルを開花させるような環境を整えることだと思いました。人の能力を伸ばすというとおこがましい感じもしますが、「その人本来のポテンシャルを発揮してもらう」と考えると自然にできそうですね。そうした環境整備のためにも、『人を選ぶ技術』を改めて振り返りたいと思います。

人を選ぶ技術
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小野壮彦
フォレスト出版
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人を選ぶ技術
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著者
小野壮彦
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小野壮彦(おの たけひこ)

グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター

起業家・ヘッドハンター・経営者メンター

1973年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、アクセンチュア戦略チームを経て、1999年にネットエイジの支援を受け、インターネット上の企業間仲介サービスを提供するプロトレードを創業。翌年楽天に買収され、三木谷社長の経営企画スタッフとして薫陶を受ける。ミラノ・ボッコーニ経営大学院にてMBAを取得し、31歳でJリーグ・ヴィッセル神戸の取締役事業本部長に就任。クラブ経営、チーム強化に従事する。その後プロ経営者を目指し、リヴァンプを経てベンチャー企業の役員を経験。コンサルタント、起業家の二面の経験を買われ、2008年、35歳で世界最高峰のエグゼクティブサーチファーム(ハイレベル経営層のヘッドハンター)であるエゴンゼンダー社に入社。ヘッドハンティング、アセスメント、コーチングを100社以上の企業、約5000人の経営人材へ実施。2016年同社の共同経営者(パートナー)に就任。2017年に前澤友作社長にスカウトされ、ZOZOに参画。本部長に就任。ZOZOスーツの立ち上げ、海外72か国へのグローバル展開を指揮。現在は日本最大級のベンチャーキャピタルファンドであるグロービス・キャピタル・パートナーズにて、組織グロースの支援、起業家メンタリングなどにあたりつつ、自身のスポーツマネジメント会社を経営中。

文責:松尾美里(2023/03/17)