
マネジャーに求められる「厳しさ」と「優しさ」の基準とは?
新入社員の入社からそろそろ1カ月。現場では新入社員研修が行われていることでしょう。 研修後はそれぞれの職域に進んでいきますが、若手が活躍して組織にポジティブな影響を与えることは、企業やメンバーの成長に欠かせません。そのために、マネジャーが新人をマネジメントして育てていくことは重要です。 今回の記事では『伴走するマネジメント』(自由国民社)の著者・和田真二さんが、若手の育成時に心がけたいポイントをお伝えします。
ライター・和田真二
まず、「伴走する」とはどういった意味でしょうか。
「伴走する」とは、昔ながらの「上位下達」や「個を尊重する」あまりに放置するということではなく、マネジャーとメンバーが「視界を合わせる」ことで成果を上げていくことを指します。
「視覚障害者と走るブラインドマラソン」をイメージするとわかりやすいかもしれません。
視界の異なるランナーに対して状況を的確に説明し、ゴールに向かって自立して走ってもらうことが“伴走者”の重要な役割です。
つまり、「視界を共有しないとランナーは安心して走れない」。まさにここが大事なポイントです。
・部下が動いてくれない
・指示待ちになっている、そのため成果が上がらない
理由はいろいろあるでしょうが、私は過去のコンサル経験から、チームや組織のパフォーマンス向上を妨げているのは「マネジャーとメンバーの視界が異なっていること」だと考えるようになりました。
視界が異なっている理由は、マネジャーとメンバーとでは与えられている役割が違い、入ってくる情報の質・量が違うからです。また、経験や能力の違いもあります。
だから、同じものを見ているはずなのに、「どう見えるか」が大きく違ってきてしまう。そのことを意識しているマネジャーは少なく、結果として指示やフィードバックがうまく伝わらないのです。
「なぜ、できないんだろう」
「フィードバックしているのに、改善できないのはなぜ?」
マネジャーがそのように感じることは理解できます。

ただ、視界の違いを理解しないまま厳しく接していると「考えてもわからないから言われたことだけやろう。そのほうがラクだ」とメンバーは考えるようになります。その結果、自立から遠ざかり、指示待ち人間になってしまいます。
「視界が異なっている」と、こういった結果に陥りやすいのです。
では、視界を合わせるにはどうすればいいでしょうか。
それが「伴走するマネジメント」のスタート地点であり、メンバーが自立し、成長することの土台になります。
昨今、「チームや個人の目標設定、日常の指示や管理を重視するタイプ」のマネジメントである「指示管理型」は、時代にマッチしていないように思われがちです。
しかし、「伴走するマネジメント」はこのマネジメントスタイルを軸に、チームの成長を追求します。
なぜなら、ビジネスの重要な点は「顧客に価値を提供し、会社の継続的な成長を実現すること」だからです。
数値管理や目標の共有は、社会に必要とされるサービスを創出しながら利益を出すために欠いてはいけないものです。
では、「指示管理型」のメリットはなにか? それは次の2つです。
(1)メンバー全員がビジネスに集中でき、チームの共通目標に向けてメンバーが協力しやすい
(2)メンバーの自立を促す習慣・風土をチームに根づかせやすい
よく言われるのは、指示管理型では上意下達になりがちで、マイクロ・マネジメントに陥りやすい一面があるということです。これは一見、(2)のメリットを享受できないようにもうつります。
ですが、私はマネジャーと新人など「メンバーの視界共有ができていない」から、それが生まれると考えています。

では、視界の共有をするために必要なことはなんでしょうか?
まず、組織における曲げてはならない原理原則は「顧客に価値を提供し、会社の継続的な成長を実現すること」です。
もちろん、メンバー1人ひとりの仕事に対する目的や意義は違うかもしれません。それがお金を得ることでも、自由を得ることでも、成長することでも、ワークライフバランスを向上させることでもいいでしょう。
ただ、それは顧客に価値を提供し、会社の成長を継続的に実現することによって成し遂げられることです。
その順番は逆にしてはいけません。
そして、これが最低限共有しないといけないものです。
これを前提にすれば、メンバーの個性を尊重する「優しさ」だけのマネジメントで成り立つものではなく、メンバーの力を引き出して結果を出さなくてはならないので、「厳しさ」だけでも成り立たないことがわかるでしょう。

マネジメントには「優しさ」と「厳しさ」の両方が必要なのです。
その使いどころがわからないと、マネジャーは「これをいったらハラスメントになるかもしれない」「嫌われるかもしれない」などと不安を抱えることになります。
優しさと厳しさを使い分ける場面をしっかり設定することで、チームの成長とマネジャーのマネジメントのしやすさが変わってきます。
では、企業を成長させるために、どうやったら視界をうまく共有できるでしょうか。
そのためには次の「7つの視点」を共有することです。
(1)メンバーの役割・目標の共有
(2)仕事の成果の基準
→この2つに関しては、「厳しさ」に軸を置きましょう。このクオリティが顧客に提供するサービスや商品の質にダイレクトにつながるからです。
(3)仕事のルールの範囲や内容
→「どんな時でも遅刻をしない」など、ルールを厳しくしすぎるとギスギスしてしまいます。
ここは「優しさ」に軸をおきましょう。
(4)基準・ルール運用のあり方
→「厳しさ」に軸を置きます。ルールの内容は厳しすぎてはいけませんが、一度決めたものは守ってもらわないと組織の統制がとれなくなります。
(5)進捗確認の仕方
(6)フィードバック内容
(7)伝え方
→(5)~(7)は「優しさ」に軸を置いてメンバーのやる気を引き出し、報告・連絡・相談をしやすい雰囲気をつくりましょう。

このように視点を共有して業務を繰り返していけば、メンバーとマネジャーの方向性が合うようになり、チームは成長していくはずです。
その結果、メンバーもできることが増えていき、先ほど述べた「メンバーの自立を促す習慣、風土をチームに根づかせやすい」というメリットも生まれるのです。
これから入ってくる新人と伴走して、結果を出していくためにも視界を共有し、スタンスを明確にしていきましょう。
基準が明確であれば、部下も迷うことなく、視界良好で仕事に臨めるでしょう。
和田真二(わだ しんじ)
株式会社トゥルーワード 代表取締役
株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース ディレクター
早稲田大学理工学部卒業。トーメン(現:豊田通商)、日本オラクルを経て2003年、組織人事コンサルティング会社のリンクアンドモチベーションに入社(組織開発コンサルティング部門長)。2009年同社を退職、組織コンサルティング会社、トゥルーワードを起業。2016年よりフィールドマネージメント・ヒューマンリソースに参画。