

親しくなろうとおもしろいことを言おうとしたけどスベってしまった……という経験はありませんか? 相手と距離を縮めるには、いきなり仲良くしようとせず、普段からのこまめなコミュニケーションが大切です。 本記事では『「おもしろい!」と思われる話し方のコツ』(三笠書房)の著者・野呂エイシロウさんが、一歩進んだコミュニケーションスキルをお伝えします。
昨今は、コンプライアンスやハラスメント、SNSの炎上など、特に上の世代にとっては何かときゅうくつな時代でもあります。
とは言え、自分を押し殺して当たり障りのないことばかり言っていては、おもしろくない人と思われるだけで、その他に何の印象も残せません。時には、毒舌や冗談が「人間関係のいいスパイス」になることもあります。
たとえば、病や老いや死などに対して、妙に気を遣って触れないようにする人がいますが、それが優しさとは限りません。あえて普段通りの距離感で接するほうが、相手をいたわる気持ちが伝わることもあります。
たとえば僕は、高齢の両親に会うときも、「元気にしてた?」などとしおらしいことは言わず、「お、まだ生きてるね」などとうそぶいています。
数年前、僕が懇意にしていたクライアント二人が、自身のスキャンダルでボコボコに叩かれ、一人は左遷、もう一人は会社をクビになったことがあります。そうすると、今までスリスリしていた人はサッと離れていき、親しい人たちもどう励ましていいかわからず、ハレモノ扱いするようになりました。
でも、僕は彼らとデコピンしあえるような仲だったので、「朝飯でも食おう」と高級ホテルに呼び出し、ゲッソリ顔で現われた二人をこう言って歓迎しました。

「スキャンダルでお騒がせのみなさん、おはようございます。どうせ朝からヒマでしょ。シャンパンでもいかがですか?」
「お前はホントにひどいやつだなぁ」と二人はあきれつつ、朝からわいわい乾杯して、帰る頃には「今日は人生最高の日だ!」と元気になっていました。
昨今、おもしろいことを言おうとして、かえって失言につながったり、誰かを傷つけてしまったりするケースが増えていると聞きます。
その主な要因としては、コンプライアンスやハラスメントに対する世間の風当たりが厳しくなっていることもあるでしょう。
ただ一方で、「自分がおもしろいと思われればいい」と、独りよがりな考え方をする人も増えているように感じます。
「2022年度アカデミー賞」授賞式の壇上で、俳優のウィル・スミスが、妻の持病による外見をジョークでいじったコメディアンを平手打ちした事件がありました。
暴力に訴えるのはともかく、まったく関係性のない相手や、距離感のわからない相手からいきなりひどいことを言われたら、いつの時代でも人は傷つきます。
僕は、実家を出て30年以上たちますが、いまだに両親にほぼ毎日電話をしています。また、東京の自宅から実家までは、新幹線を利用しても片道1時間半かかりますが、月に一度は顔を見せに帰るようにしています。
憎まれ口を叩きながらも、「こんなバカなのによく育ててくれた」「大学まで行かせてくれてありがとう」と伝えているのです。

つまり僕と両親や、先述のクライアントの間には、きちんとした「関係性」や「信頼感」が出来上がっているのです。そして何より僕が軽口を叩くのは、「相手に喜んでもらったり、元気になってもらいたい」からです。
軽口を叩いても許される関係性を築くためには、他愛もないことで構わないので、普段からその人と「コミュニケーションの回数を増やす」努力をしておくことです。
これは何も、たくさん話しかけろという意味ではありません。
いつもなら一往復で終わる会話のキャッチボールでも、少し工夫するだけでその回数を増やすことができます。
たとえば僕は、仕事柄お菓子の手みやげをいただくことが多いのですが、一人では食べきれないので、後輩にあげることがよくあります。その際、「よかったら食べて」とひと言だけで済ませるのではなく、
「お客さんからのもらい物でお礼を言わなきゃいけないから、どんなお菓子が入っていたかわかる写真をあとでもらっていい?」
などと伝えます。こうすることで、手みやげのおすそ分けも「コミュニケーションの回数を増やすツール」にすることができます。
相手としても、余ったものをただ横流しされるよりは嬉しいはず。実際に写真をもらったら、「ありがとう。お客さんには内緒にしておいてよ」などと伝えれば、相手と秘密を共有することにつながり、さらに親密感が増します。
たとえば部下から「電車が遅延して、出勤が少し遅れそうです」と連絡があったとき、
「承知しました。」
とコメントの最後に「。」をつけて返事をすると、若者は怒っているような印象を受けて怖いと感じることがあるのだとか。
これは「マルハラ。」と呼ばれる現象で、絵文字やLINEスタンプに慣れ親しんだ若者特有の感じ方です。

このように世代間の違いが取りざたされると、「マルをつけて怖がられないようにしよう」や「絵文字がイタいおじさん・おばさん構文にならないようにしなきゃ」などと、若い世代に忖度してしまうこともあるように思います。
でも、ムリして迎合したり知ったかぶりをしたりせず、わからないことは若い人たちから素直に教わりましょう。
「承知しました。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
問題ないので、気をつけて出社してください!」
などと返事をした上で、部下が出社したら「さっきのマルハラになってないかな?」などと聞いてみてはどうでしょうか。相手は遅刻しても安心することができますし、何より絶対にウケます(笑)。
結果として、コミュニケーションの回数も増やすことができます。世代間の違いを感じたときこそ、コミュニケーションの回数を増やすチャンス。ぜひ実践してみてください。
コンプライアンスに厳しい今の時代は、食事に誘うときもパワハラやセクハラにならないように気をつける必要があります。
たとえば、仕事帰りに新人の後輩を食事に誘うとします。「このあと食事に行かない?」とストレートに誘うと、相手はいきなり「誘いに応じるか」「断るか」の選択を迫られてビビります。
上司や先輩の誘いは断りにくいので、いきなり食事に誘う前に、一段下がって「誘ってもいいかどうか」のお伺いを立てるとよいでしょう。
・もしこのあと時間があれば、食事に誘ってもいい?
・おなかすいたら、連絡ください
と言うと、相手を尊重した印象になるので、圧迫感を与えません。誘われる前に心の準備ができるので、相手が快く誘いに乗ってくれる確率が高くなります。

(お酒をたくさん飲まされるんじゃないか……)
(帰るタイミングを切り出せず、長居させられそうだ……)
特に、世代の異なる相手から食事に誘われることに慣れていないZ世代の若者たちからは、このように警戒されることがあります。
気持ちよく参加してもらうために肝心なのは「店選び」。
具体的には、「大衆居酒屋」などを避け、「寿司や焼肉の人気店をチョイスする」のが得策です。
リーズナブルな店で食事することが多い若者にとって、美味しい寿司屋や焼肉屋を知っているオトナは「ひときわカッコよく見える」ことでしょう。
寿司屋や焼肉屋は、純粋に食事を楽しむ場所というイメージが強く、たくさん飲まされたり長居させられたりする心配もないので、安心感を与えることができます。
野呂エイシロウ(のろ えいしろう)
放送作家。戦略的PR コンサルタント。
1967年愛知県生まれ。中学生の頃からラジオに親しみ、「人が読みたくなる投稿」を追究した結果、「オールナイトニッポン」などで連日投稿が読まれるようになる。
大学時代には学生マーケターとして、学生向け家電の企画立案・宣伝・PRに携わる。愛知工業大学卒業後、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。『ザ!鉄腕!DASH!!』『特命リサーチ200X』『奇跡体験!アンビリバボー』などの構成を担当する。
30歳のとき、戦略的PRコンサルタントとしての活動をスタート。テレビ番組作りのノウハウを生かし、数々の企業の商品・サービスを次々とヒットに導く。250社以上のコンサルティングを担当。
主な著書に『なぜか「好かれる人」と「嫌われる人」の習慣』(総合法令出版)、『「話のおもしろい人」の法則』『心をつかむ話し方 無敵の法則』『先延ばしと挫折をなくす計画術 無敵の法則』(以上、アスコム)などがある。