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「感情の扱い方」がわかれば人生が変わる!
ネガティブ感情のトリセツ

ライター画像
水島広子
「感情の扱い方」がわかれば人生が変わる!

イライラ、くよくよ、ムカッとする……。そんなネガティブ感情に襲われたとき、どう対処すればいいでしょう? 「感情の扱い方を知ることで、人生がよりよい方向に向かう」というのは、精神科医で『「困った感情」のトリセツ』(三笠書房)の著者である、水島広子さんです。本稿では水島さんに、感情を上手に扱うための「トリセツ(取扱説明書)」を教えていただきます。

感情がわかると、いろいろ変わる!

私は「対人関係療法」という、感情を主に扱う精神療法を専門とする精神科医です。対人関係療法は、感情を上手に扱いながら、人と人との関係を改善し、心の病を治していく療法です。

感情を上手に扱うことで、心の病を治していく……これだけでも、感情が持つパワーがわかると思います。

もちろん、心の病が改善するだけではありません。

私は精神科医としての仕事の他に、ボランティア活動などいろいろなことをし、様々な人と関わっていますが、治療の中で活用してきた「感情の取り扱い方」は、病気ではない人にも、そのまま通用することに気づきました(もちろん自分自身も含めて、です)。

「感情の取り扱い方」を知るだけで、以下のような効果が期待できるのです。

・ムカッとしても、すぐに対処できるので、機嫌よくいられる

・不安になっても、「やってみよう!」と思えるようになる

・ウツウツとした気分を、引きずらなくなる

・感情に振り回されず、冷静な判断ができるようになる

・人間関係のトラブルが減る

・感情的な人と会っても、傷つきにくくなる

・ネガティブな感情が減るので、幸福感を味わえる

・イヤな気持ちを抱えなくなるので、健康になる

・今、自分が抱えている問題点がわかる

・感情をコントロールできると、もっと自由に生きられる

感情は取り扱い方を間違えると、トラブルや病気につながるなど人を不幸にもしますが、問題解決の糸口になったり、人生をよりよい方向に導くきっかけになったりするのです。

取り扱いに困る感情を「イヤなもの」として遠ざけるのではなく、きちんと扱うことによって、人生の質はより高まっていくでしょう。

感情の「扱い方」には基本がある

感情というものには、「トリセツ(取扱説明書)」が存在します。とはいえ、

感情というのはきわめて人間的なもので、家電か何かのように「トリセツ」を読むだけですむわけがない……。

もっと繊細で、ひとりひとりが違うはず……。

そう思われる方は、ちょっと待ってください。たしかに感情はとても人間的・個人的なものなので、一概に説明することは難しいでしょう。

しかし、私たちの多くが日頃、鵜呑みにしてしまっている「常識」。この「常識」によって、感情の扱い方を間違えてしまうケースがとても多いのです。

kazuma seki/gettyimages

・頭にきても、できるだけ我慢する

・ケンカした方が仲よくなれる

・侮辱されたら、仕返しをしないと自分がみじめになる

・どんなときでも、他人に嘘をついてはいけない

このような間違った「常識」を信じて感情を扱っていくと、人生の質が落ちていくだけです。

もちろん人生には様々なことが起こります。何も、ロボットのように感情を処理していくことをお勧めしているわけではありません。

ただ、感情の取り扱い方には、基本があります。基本的な取り扱い方を知っていれば、いろいろな状況に応用できると思うのです。

せっかく人間に与えられた感情を、本来の役割通りに生かして、より豊かな人生を送ってみたいと思いませんか?

身体感覚にも感情にも「何かを知らせる」機能がある

私たち人間には、感情という「機能」が備わっています。この「機能」は、身体感覚と似たようなものです。

たとえば、何か熱いものを触ったときは、「熱い!」と身体が感じるため、手を引っ込めてやけどを防ぐことができますよね。

何かにぶつかったときは、「痛い!」と身体が感じるため、痛いものをよけたり、傷をケアしたりすることができます。

「熱い!」「痛い!」という身体の感覚が身の危険を「知らせて」くれるので、あまり余計なことを考えなくても、すばやく適切な行動がとれるのです。

感情にも、こうした「機能」があります。

たとえば「不安」という感情は、「転職先でうまくやれるか不安だ」「将来結婚できるか不安だ」……などというように、「自分の安全が確保されていない」ということを「知らせる」もの。

「安全が確保されていない」状況に出合ったことを知らせるために、胸が苦しくなったり、心臓がドキドキしたりと、心身が不安モードになるのです。(そして、このままでは危険だ、と判断した場合、反撃に出たり逃走したり……これはもうパニック状態と言えるでしょう。)

三笠書房提供

「感覚」は変えられないが「感情」は変えられる

何かを「知らせる」という点で、感情は身体感覚と似通っていますが、似ていないところもあります。

身体感覚の場合、「火の上を歩く」などという修行を極めて、熱さを感じない人間にでもならない限り、「熱い!」ものはいつまでも「熱い!」ままでしょう。一方、感情の場合は「身のまわりに起きたことをどう認識して扱うか」によって、感じ方が変わってきます。

身体の場合、熱ければ手を引っ込めるしかない。しかし、感情の場合、とらえ方を変えれば感じ方が変わり、別の選択肢が見えてくる。

この「感情の特性」を知らないと、たとえば「不安」を感じた場合、「不安のあまり新しい一歩を踏み出せずにいる」以外の行動がとれなくなってしまうでしょう。ですから、こうした感情の「特性」や「機能」、「活用法」を「トリセツ(取扱説明書)」として知っておくべきなのです。

三笠書房提供

「不安」の役割=「安全ではない」というサイン

ここでは、「不安」という感情について見てみましょう。

先ほどもお話ししましたが、不安という感情の本来の役割は「安全が確保されていない」と私たちに知らせることです。

初めての場所に行くとき不安を感じるのは、それが未知の場所であり、安全なところかどうかがわからないからです。

初めての人に会うときの不安は、「その人は危険人物かもしれない」という場合もあれば、「自分とうまくいかない人だったらどうしよう」という場合もあるでしょう。

あるいは、その人の前で自分がうまく振る舞えず、恥ずかしい思いをしたらどうしよう、という不安もあるはずです。

いったん立ち止って、客観的に考える

不安によって「安全が確保されていない」ことを知った場合、不安にしがみついていても何もできません。

不安によって「安全が確保されていない」ことを知った人は、安全が確保されるように努力してもよいでしょうし、ある程度のリスクを常に頭に入れながら慎重に行動してもよいでしょう。もちろん状況によっては、「不安だからやめる」という選択肢もあります。

不安を感じたらまず自分の行動を一旦停止させ、その不安を減らすことが可能か、どうすれば不安を減らすことができるのか、また、減らすことが不可能なものなのか、そうであればどう行動したらよいのか、と客観的に考えてみる。これが、「不安」の正しい取り扱い方です。

「不安」の活用例:「うまくやりたい」を手放す

不安の取り扱い方についてはいくつかありますが、例をひとつご紹介しましょう。

例: 明日のプレゼン、ちゃんとできるか、上司をがっかりさせないか不安

Mikolette/gettyimages

これは非常によくある状況ですね。プレゼンは人を緊張させますし、不安感も強くなるでしょう。

それは当然で、そのときの自分がどうなるか、結果がどうなるか、上司がどう思うかはすべて「未知」だからです。

しかし、プレゼンは決して機械に対して行うものではなく、人間を相手に行うもの。今は上司になっている人でも、若い頃はプレゼンで緊張した経験などはいくらでもあるはず。もしかしたら今でも、です。

こんな場合は、「自分がどれだけできるか」よりも、「プレゼンの場も、ひとつの人間関係」ととらえた方がずっと楽です。

「うまくやること」は本当に必要?

プレゼンは、決して企画の内容そのものだけを売り物に出すのではなく(そうであれば人が行う必要はないはずです)、その企画をプレゼンしている人の個性も見るもの。

ですから、「わあ、緊張して間違えちゃいました。恥ずかしいですよね。すみません」と余裕のあるほほえみを見せることができれば、この人は、自分の非もなごみにつなげることができる人なのだな、と思ってもらえるはずです。実際、プレゼンの場もなごむでしょう。

ところが、全般に「うまくできるか」というところにばかり目がいっている人は、一度でも失敗すると頭が真っ白になってしまい、「自分はだめだ、だめだ……」の悪循環に入ってしまうものです。自虐的に自分のことばかり考えてしまい、目の前にいる相手とつながりを持つことができない人は、「使えない人」と思われてしまってもしかたありません。

相手は人間。そして不安は人間にとって普遍的な感情です。

プレゼンをできるだけプロフェッショナルにこなすと同時に、失敗した場合でも「恥ずかしいですよね」と笑いをとることができれば、「人間としてできている。明るくて好感が持てる」というプラスの評価も得られるのではないでしょうか。

私が精神科医としての経験から、またいろいろな人たちと関わってきた経験から強く思うのは、「感情をコントロールできる人は、自由に生きられる」ということ。

感情はせっかく人間に備わっている機能なのですから、上手に扱って生きていきたいもの。単に我慢するだけではない“本当の”感情コントロール法を知ることこそが、“生きたい人生を生きること”につながるはずです。

「困った感情」のトリセツ: 心がモヤモヤするときに読む本 (王様文庫 B 203-4)
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水島広子
三笠書房
本の購入はこちら
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著者
水島広子
出版社
三笠書房
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水島広子(みずしま ひろこ)

1968年東京生まれ。「対人関係療法」の日本における第一人者。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。 慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、衆議院議員二期。現在、対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)、対人関係療法研究会代表世話人。心の健康のための講演や執筆も多くこなしている。

主な著書に、『ふしぎなくらい心の居心地がよくなる本』 『つい、「気にしすぎ」てしまう人へ』(以上、三笠書房《王様文庫》)をはじめ、ベストセラーとなった『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)、『「他人の目」が気になる人へ』(光文社)、『自己肯定感、持っていますか?』(大和出版)、『「毒親」の正体』(新潮社)など多数がある。

公開日:2024/11/11