
小さな気遣いと行動で今すぐ「気がきく人」になれる!
「気がきく」という言葉は日常的に使われますが、具体的に何をすることかは案外曖昧です。では「気がきく人」になるには、どうしたらいいのでしょうか? 本稿では『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』(明日香出版社)の著者・山本衣奈子さんが、「気がきく人」がしている行動や考え方から、より良い人間関係の構築のために取り入れられるポイントを紹介します。
ライター・山本 衣奈子
“気がきく”というと、先回りして相手の心を掴める理解力とか、さっと行動を起こせる素早い判断力や実行力、小さなことに常に気付ける鋭い観察力や洞察力といったような、なんだかすごい力が必要なイメージもあるものですが、決してそんなことはありません。
実際、“気遣い上手”な人がしていることは、高度なスキルや力を要するようなことではなく、誰でもがいつでも取り入れることができるような、小さな気持ちや行動の表現だったりします。
例えば同じことを伝えるのでも、どの言葉を選ぶか、どんな表情を見せるかといったところに、相手への小さな配慮が含まれているのです。それが気遣いとなって相手の笑顔を生み出しています。
具体例でいうと、例えばあなたが「どれがいい?」と尋ねたとしましょう。
相手の返事が「これでいい」なのか、「これがいい」なのか。一文字の違いですが、伝わってくる印象やニュアンスは少し異なりますよね。

「これでいい」には、どこか“適当さ”“諦め”といったものが一緒に伝わってきますが、「これがいい」には“前向きさ”“希望”が伝わってきます。
「これでいい」は「どれでもいい」つまり「どうでもいい」と言っているように聞こえるのです。これでは、喜んでもらいたくて「選んでいいよ」と言うつもりでいたあなたとしては、ちょっと残念で寂しい気持ちになってしまうかもしれません。
ところが、実は「これでいい」と言っている方も、決して適当に考えているわけではなく、むしろ気持ちとしては「これがいい」と言っているつもりであることも少なくありません。つまり、決して相手を傷つけようとしているわけではなく、“なんとなく”言っているだけだったりもするのです。
だからこそ、気がきく人は、こういう一言に気を配っています。「これでいい」「それでもいい」ではなく、「これがいい」「それにする」「それをちょうだい」といった言い方を使うことを心がけ、あらぬ誤解が生まれないように伝えるので、相手を無意識に哀しませるようなことがなく、気持ちの良い会話や関係性を保っています。
ほんの一言、ほんの一文字、そういった細部に宿るものこそが、“気遣い”なのです。
「第一印象を大事にしましょう」とよく言われています。
確かに、最初の印象はその後の関わり方に影響を与えるものです。例えば第一印象が最悪だと、その人がその後にどんなに良いことを言っていても、感じの悪さが拭えずに素直に聞けないということもありますよね。これを心理学では“初頭効果”と言っています。
確かにそれもある一方、実はもう一つ“新近効果”というものがあります。これは最後の印象がその前の印象に影響を与えるというものです。

例えば途中がイマイチであっても、最後にとびきりの笑顔を見せてくれたら、イマイチだった印象が薄れ好感度が上がるということを表しています。もっといえば、この最後の印象は次に会うときまで引きずりますから、良い印象が残っていると次に会う時も最初から気持ちよく会えるということにもつながります。
気がきく人といると気持ちがいいのは、この最後の印象をとても大事にしているからと言えるかもしれません。最後に伝える一言、最後に見せる表情に気を配っているので、その瞬間だけでなく、次に会うときにまで良い気分を渡しているのです。
先日、とある食堂で、目当てのメニューが売り切れでがっかりしたことがありました。しかたなく代わりに別のメニューを選び、食券を持って行ったところ、そこで対応してくれた女性が本当に気持ちの良い方でした。
接客自体も感じが良かったのですが、何より、料理を手渡しながら最後に「美味しく召し上がれますように」と笑顔で言ってくれたことが印象的で、目当てだった料理ではない残念さが吹っ飛び、そのメニューを選んで良かったなぁとしみじみ思っている自分がいました。次に来たら必ずまたここにしようとすら思いました。

最後の印象は、その場だけでなく、その後にも影響を与えていきます。最後を大事にする気持ちも大事な“気遣い”ですね。
「こんなこと言わなくても分かるでしょう」
「これくらい言わなくても分かると思ってた」
コミュニケーションの行き違いは、案外そういった思いから生まれていることが少なくありません。
確かに、言わなくても分かってくれていたら楽ですしありがたいことです。けれども残念ながら、人間は皆違う生き物、言われてもいないことに対して、“分かった気になる”ことはできても、全てを間違いなく“分かる”なんてことは不可能です。
ですから、きちんと言葉にしてしっかり伝えることや、端折らず諦めないことも大事な“気遣い”であると言えます。
しっかり伝えることもしない上、かつ「分からないなんて言わせない」という近寄りがたいオーラを出しておきながら、理解できず質問もできず行動できなかった相手を「なんで分からないんだ」と責めるなんてもってのほかですよね。これではお互いに怒りや苛立ちが増す一方、決してよい関係にはつながっていきません。

時に耳の痛いことがあったとしても、それでもちゃんと言ってくれる、伝えてくれる方が助かりますし、ありがたいことなのです。気がきく人は、“言わなければ分からない”という前提に立ってくれているので、それが“気遣い”となってコミュニケーションを支えていると言えます。
そもそも、言われていないことは想像して考えるしかありませんが、様々な可能性がある中、それを考慮しながら相手の気持ちや言いたいことを考えるなんて相当な労力がかかりますし、何より疲れます。わざわざ疲れる相手と一緒にいることを選ぼうとは思わないですし、むしろなるべく避けたいと考えるのが自然ですよね。これでは人間関係は広がっていきません。
相手を疲れさせないのが最大限の“気遣い”だとするならば、自分の気持ちや考えをしっかり伝えることがまず一番大事なのではないでしょうか。
伝えることを端折らずに諦めない。その“気遣い”を忘れず、気持ちの良いコミュニケーションを実現させていきましょう!


山本 衣奈子(やまもと えなこ)
E-ComWorks株式会社代表
伝わる表現アドバイザー
プレゼンテーション・プランナー、産業カウンセラー、認定心理士
大学で演劇を専攻、在学中にロンドン大学に演劇留学。国内外での舞台経験を通して、相手を意識した「表現」と「届け方」を知る。その後人間心理をふまえた「伝わる伝え方」を徹底研究し、その実用性を検証すべくサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。15カ国5千人を超える国籍・業種・立場を超えた人々との関わりから、ついに円滑なコミュニケーションの極意を見出す。
表現力だけでなく、現場で身につけたトラブル対応力、対人能力、傾聴力、マナー術等を駆使し、「伝わるコミュニケーション術」を確立。伝わる表現アドバイザーとして、企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う現在、総受講者数は5万人を超え、「表現方法が多彩になるだけでなく、モチベーションも上がる」と評判に。そのリピート率は、業界屈指の8割を誇る。
また、その会話力を高く評価され、著名人やスポーツ選手との対談の依頼も絶えない。
著書に、『相手に「伝わる」対話術(読む講演会+PLUSシリーズ)』(ワニブックス)『「言ってしまった」「やってしまった」をリカバリーするコツ』(日本実業出版社)がある。