
生産性を上げるための小さな習慣
仕事効率化のためにDXしてみたけど、扱いが難しくて余計に時間がかかってしまった……ということ、ありませんか? 目先のトレンドに飛びつく前に、本当に必要なことを見極めて「整理」をする。それこそが、仕事の生産性を高めるための大事な視点です。 本稿では『仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社)の著者で「整理収納アドバイザー」の資格を持つ大村信夫さんが、ビジネス力向上に役立つ「整理術」を伝授します。
ライター・大村信夫
「働き方改革」や「生産性向上」と言われますが、あなたはどのように取り組んでいますか?
最近では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉もよく聞きます。簡単に言えば、アナログな方法でやっていた業務をデジタルに置き換え、生産性を向上させる工夫や改善です。
しかし、それが「意味のない工夫や改善」だったら……。
ゾンビ業務をご存じでしょうか?
目的や意味を見失ったまま、業務としてなぜか残り続ける「ゾンビ化」した業務であり、生産性を大きく妨げます。
これは、ある大企業の管理部門で実際にあった話です。
その管理部門の担当者は、あるデータを毎月関連会社に納品するという業務をしていました。前月分のデータを抽出して、加工、納品するのに約10時間も掛かります。
その業務は前任者の退職時に引き継いで1年ほど、また業務自体は10年ほど前から続いていました。
これを何とかしたいと思い、効率化の手段を探していたら別部署ではDXによる効率化として、RPA(Robotic Process Automation:事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術)を使って業務効率化ができたという情報をキャッチし、さっそく自分の業務に導入できないか検討しました。

しかし、そのRPAの構築準備に約50時間かかることが分かりました。
構築すれば、今後は確認するだけの1時間ほどで作業を終えることができるようにはなります。でも、そのために50時間をかけることに悩んでいました。
そのことを新しく着任した上司に相談したところ、
「ちょっとその業務、一旦やめてみましょうか。何かあったら責任は私が取りますので」
という話になりました。
上司に言われたとおり、翌月からその業務をやめました。
データを納品していないので関連会社からクレームがあるのではないかとドキドキしていましたが、なんと3ヵ月経っても、誰からも問い合わせがなかったのです。
そこで関連会社に確認してみると、すでに別の方法でデータを取得するようにしていたというではないですか。
まさにこれこそが、意味もなく生き続けていた「ゾンビ業務」だったのです。
そのような「ゾンビ業務」を、DXを用いて工夫しても、意味のないアウトプットを効率的に出すだけという全く無意味な状況になっていたのです。
まずは効率化したい業務があったら、工夫や改善を考えるのではなく、本当に必要かを確認しましょう。
「この業務はなんのためにあるのか?」
「この業務がなくなると誰がどのように困るのか?」
これらの質問に明確に答えられなければ、その業務はゾンビ業務の可能性があります。
会社に生息しているゾンビ業務には成仏してもらい、生きている本質的な業務を育てていきましょう!
毎日のように大量に投函される「チラシ」や「ダイレクトメール」、あなたはどうしていますか?

相手から強制的に家や職場に届けられるモノは、散らかる原因になりやすいので注意が必要です。届いた「チラシ」や「ダイレクトメール」は、手に持った状態で必要か不要かをその場で判断してください。そして不要なモノはそのままゴミ箱に捨て、必要なモノだけをとっておくようにしましょう。そうすれば散らかりにくくなります。
その時に、ぜひオススメしたいことがあります。
それは事例研究です。
あなたが不要と判断した「チラシ」や「ダイレクトメール」ですが、何が書かれているのかをじっくりと見ていますか?
私は、興味のない内容であっても、じっくり見るようにしています。
私は集合住宅に住んでいます。ポストには毎日たくさんの「チラシ」や「ダイレクトメール」が投函されます。それらを取り出してからエレベーターのボタンを押し、エレベーターに乗って自宅の玄関にたどりつくまでに3分ほどかかります。
その時間で必要か不要かを判断しますが、「チラシ」や「ダイレクトメール」をじっくりと見て、
「あ、この表現はうまいな!」
「フォントの大きさや、色の組み合わせがいまいちだな」
「商品はいまいちだけど、キャンペーンは魅力的だな」
ということを考察するのです。

このような事例研究を、この3分というスキマ時間にやるのです。
1日3分だとして、年間だと約1095分(約18時間)も事例研究ができるのです。
私は、営業/マーケティング部門にいます。お客様の心を捉え、買いたくなるような表現やキャンペーンを考えることが多くあります。
その際に、いろんなアイデアやネタがあるととても役に立ちます。
事例研究のおかげで、人目を引くようなキャッチコピーを参考にしてみたり、書かれていたキャンペーンを自分のサービスで同じように展開して成功したこともあります。
そう考えると、今まで不要だと思っていた「チラシ」や「ダイレクトメール」も、お宝に見えてきませんか?
このように、不要なモノからも学ぶという思考を身につけましょう。
1日3分、仕事に役立つ無料の脳トレだと思ってやってみてください。
名刺を受け取った後に、裏を確認していますか?
名刺交換は、情報交換や人脈作りなど関係性構築の第一歩として重要です。この名刺から、いかに多くの情報を引き出すかがポイントです。
そのためには、名刺の表面だけでなく裏面も重要です。

私自身の失敗談をお伝えしましょう。
社会人になりたてのころ、名刺交換では相手の名前と顔を覚えるのに必死で、名刺自体は裏も確認することなく、すぐに名刺入れにしまっていたのです。
ある日整理のため、過去にいただいた名刺をデータ化しようと取り出したとき、会食でお会いした有名な経営者の方の名刺が出てきました。その方とは、意気投合して盛り上がったことを覚えています。その方が途中退席する際に、ちょうど私はお手洗いに行っていたため、私に渡して欲しいと、幹事の方に名刺を預けていったのです。
そして、何年も経って名刺の整理のためにデータ化するときに、裏に手書きのメッセージを見つけたのです。
「大村さん、あの話の続きを会食しながらしましょう!連絡ください。090-XXX-XXXX」
その当時、すぐに名刺の裏面を確認していれば、今と違うキャリアを歩んでいたかもしません……。
そんなこともあって(笑)、それからは名刺の裏をしっかりと確認するようになりました。
企業では指定された名刺のテンプレートに自分の情報を掲載するだけなのですが、例えば個人事業主や企業経営者の名刺には、伝えたいことやこだわりが凝縮されていることが多く、表面には書ききれなくて裏面に書いてあることが多いのです。
ぜひ、書いてあることから深堀りして聞いてみてください。
人は話を聞いてほしい生き物です。名刺をきっかけにいろんな情報、学びを得ることもできます。
その際に、知らない言葉などがあっても「不勉強で申し訳ないのですが、〇〇とはなんでしょうか?」と聞くようにしています。これによって相手から、それに関する業界情報や考えを簡潔に教えてもらえることもできるのです。
裏面に何も書いていないときは、そっと表に戻して、例えば、名刺に「創業60年」と書かれていたり、その会社の商品が記載されていたりしたら、そこを話題にしましょう。
「創業60年とは歴史と伝統を感じますね」「この商品は我が家も愛用しています」
他にも部署名に着目して、例えば所属が「第3営業部」と書いてあれば「第3営業部ということは、全部でいくつ営業部があるのですか?」「大きな規模でやられているのですね」という具合です。
ちなみに、私の名刺は両面どころか二枚折りになっています。私から名刺を受け取った方はぜひ裏面だけでなく内側も見ていただけると嬉しいです(笑)。


大村信夫(おおむら のぶお)
青森県三沢市生まれ。静岡県掛川市にて育ち、現在は東京都在住。
共働きで3児(大・高・中)の子育てパパ。
国立大学法人東京農工大学卒業後、家電メーカーに入社。現在もフルタイムで勤務しながら「片付けパパ」として活動。モノを整理することで「心」や「思考」も整理され、プライベートや仕事の進め方、人間関係など人生全体に好循環が生まれるオリジナルメソッドを提唱。これまで企業を中心に「片付け」「仕事の生産性」「キャリア」などのテーマで3万人以上が受講し、満足度(5段階評価4以上)は96%を超える。
新聞や雑誌をはじめメディア取材、執筆など幅広く活動中。
●主な著書
「片付けパパの最強メソッド ドラッカーから読み解く片付けの本質」(インプレス)
「きほんから新発想まで 家事ずかん750」(朝日新聞出版)監修
「仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣」(明日香出版社)」
●公式サイト
https://omuranobuo.net