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相手の本音を引き出す技術
よい聞き方には「型」がある!

ライター画像
白鳥和生
相手の本音を引き出す技術

「会話の途中で話を遮られてしまった」「一生懸命話しているのに、聞き流されてしまう」「相手がこちらの質問に答えてくれない」――。みなさんは、そんな経験ないでしょうか? どんな相手ともうまくコミュニケーションがとれる「聞き方上手」になれば、その悩みは解消するかもしれません。 本記事では、新聞記者として30年以上のキャリアを持つ白鳥和生さんが、著書『雑談が苦手な取材のプロが33年続けた 本音を引き出す聞く力』(CEメディアハウス)より、聞く力のつけ方についてお伝えします。

聞き方には「型」がある

話を聞くときには、「型」を理解しているとスムーズです。それによって聞き手としての主導権を保ちつつ、相手に話しやすい場を提供できます。

悩んだときには、まず「型」を覚えるのがおすすめです。

「ほぐす」「引き出す」「絞る」「広げる」「整える」

私は、聞きたいことを聞くための型を「ほぐす」「引き出す」「絞る」「広げる」「整える」と整理しています。まるでマッサージのようですが、新聞記者を30年以上やってきた経験から導き出した型であり、これを習得すれば会話やヒアリングが楽になります。

聞きたいことを聞く技術とは、次の流れで行います。まず、短時間で信頼してもらい、話しやすい雰囲気を作り、話を引き出していく。そして聞きたいこと、大切だと思うポイントを深掘りし、軌道修正しながら次の聞きたいことに移っていきます。最後は、話の内容や細かな点を確認し、また会って話をしてもよいと思ってもらうのです。

sturti/gettyimages

何について、どういう目的で、誰に聞くのか

「型」の話の前に次のことを確認しておきましょう。

聞き上手になるために重要なのは、まず「何について」「どういう目的で」「誰に聞くのか」を明確にすること。これらを整理することで、目的に沿った質問ができ、効率よく情報を引き出せます。

【主題やテーマ】

曖昧なまま質問をしても、相手は的外れな回答をしてしまう可能性があります。聞くテーマを絞ることで、相手から必要な情報を得やすくなります。

質問を投げかける前に、テーマに対する仮の「タイトル」や「見出し」を考えましょう。聞くときは、仮説に基づいたタイトルを心に留めておくと、聞きたい情報のキーワードが浮かび上がるので、質問を絞り込めます。これによって、質問が無駄なく的確になり、相手の本質に迫れるのです。

【目的】

情報を集めるためなのか、相手の考えを深掘りするためなのか。それによって質問の仕方やアプローチも変わってきます。目的を意識することで質問の意図が伝わりやすく、相手も話しやすくなります。

【相手】

相手の立場や役割を考慮することも大切です。相手の立場を意識して質問をすることで、相手にとって答えやすい内容になります。

「引き出す」――予定調和のインタビューは面白くない

聞きたいことを聞くための型のひとつ、「引き出す」について解説します。

取材の場合は、事前に「こういうことを聞きたい」という趣旨を伝えています。相手は、こちらが聞いてくるであろう内容を把握し、事前準備をしているはずです。

しかし、あまりにも予定調和のインタビューは、結果として面白い記事にならない場合が多いのも事実です。「行間で読ませられない記事」、つまり読者の興味を掻き立てられないということになります。

Hitoshi Nishimura/gettyimages

質問は相手の言葉の中にある

会話がいまいち弾まない――。その原因はおそらく「はい」「いいえ」で終わってしまうクローズ質問(クローズド・クエスチョン)を多用しているからではないでしょうか。

「米国に進出するのは、〇〇だからですか」

「はい」

「この提案には賛成・反対のどちらですか」

「賛成です」

このように「はい」「いいえ」や選択式の質問で会話が成立してしまうと、別の内容の質問に移らざるを得ません。内容を深掘りする質問ができないと、細かなニュアンスの確認ができないまま話が進んでしまいます。クローズ質問は、言質を取ったり選択肢を絞ったりする場合には有効ですが、会話を展開していく場合には役に立ちません。

聞き上手になるためには、質問が上手になることも必要。質問事項をたくさん用意することも大事ですが、単に質問を連発しているだけでは、コミュニケーションは深まりません。そこで、相手から詳細な情報や意見を引き出すのに役立つのがオープン質問(オープン・クエスチョン)です。

相手に考えや意見を自由に話してもらいたいときは、「最近どんなプロジェクトに取り組んでいますか?」というように質問します。すると相手は「新しいマーケティング戦略を立てるプロジェクトに取り組んでいます」「顧客のニーズに合ったアプローチを考えています」といった具合に答えてくれるでしょう。

話の展開を読みつつ、相手の真意や話したい内容を引き出す問いを投げかけましょう。難しく考えなくても大丈夫。相手が言った言葉の中から、拾っていけばよいのです。

SolStock/gettyimages

「過去についての質問」から始める

会話を自然な形で進めながら、相手の「本音」や「潜在ニーズ」を引き出したいときは、相手が答えやすい「過去についての質問」から始めて、「現在についての質問」「未来についての質問」とつないでいくのが鉄則です。

「昔はこうで、今はこうだから、今後はこうしたい」などと、相手に頭の中を整理してもらいながら話を進めることで、相手が気づいていなかった潜在ニーズにもたどり着きやすくなります。

「これから先(未来)の話」は、どう答えようか戸惑ってしまうし、人によっては「答えにくい質問」となります。一方、「これまで(過去)の話」は記憶をたどればよいので、答えやすいわけです。

善悪は判断しない

引き出すプロセスでは、相手の話に対して善悪を問わず、ただ受け入れる姿勢を示すことが大切です。他人の考えと自分の考えは違うものとして認めることが、コミュニケーションの第一歩になります。

とはいえ、会話の中で、「それは違う」と思わず言いたくなることはあります。例えば、タバコの話です。タバコを吸っている人に対して、「タバコは体によくないからやめるべきだ」と諭すのではなく、まずは善悪を置いておき「タバコを吸いたくなるときって、どういうときですか?」などと相手の心に寄り添う。すると相手は自分の気持ちを話しやすくなり、本音が引き出せるようになります。

本音を聞き出すというのは、善悪を判断することではなく、相手の立場に立ち、どんな気持ちでその行動をしているのかを理解することなのです。

pixelfit/gettyimages

相手を否定せずに質問することはできる

異なる意見や視点を聞きたいときには、相手の考えを否定せずに、違う見方を促す質問の仕方が求められます。

相手の考えに疑問を感じたり、異なる見方を聞きたかったりする場合、「○○ではないのですか?」といった否定的な質問をするのは避けましょう。代わりに、「○○という見方はどうでしょうか?」と提案する形を使います。

こうすることで、相手の意見を尊重しながらも、別の視点を引き出せる可能性があります。同時に、相手が自分の意見を確認することもできます。相手からは「確かに、そういう見方もできますね。その場合は~」や、「それは違うと思いますね。なぜなら~」といった反応が返ってくるかもしれません。

相手が新たな視点を提供してくれたり、自分の意見を補足してくれたりすれば、対話が深まり、双方にとってプラスになる会話が成り立ちます。相手の考えを否定するような聞き方ではなく、相手に対する尊敬(リスペクト)の念を持ちながら、新たな視点を探っていきましょう。

相手を立てる「よいしょ」のススメ

ほめることは、ゴマをすることではありません。相手を立て、気分を盛り上げることは交渉術のひとつであり、決して恥ずかしいことではありません。

感嘆や感心の相づちを小気味よく挟む「小さなよいしょ」は、しらじらしさもなく、相手の気分を損ねません。その好例は、相手をちょっとだけ持ち上げる「へぇー、うまいですねぇ」「すごいですね」。

相づちのバリエーションが少ないという人は、「そうなんですか」「なるほど」「確かに」の3フレーズがおすすめです。自然と口をついて出るくらい場数を踏みましょう。

会話中は、うなずいたり笑ったりして、知り合いと話すような感覚で臨むとよいでしょう。リラックスした雰囲気が伝われば、相手の口も滑らかになり、本音の言葉をたくさん拾えます。特に初対面の場合には、緊張を和らげるための小さな工夫が、大きな成果を生むはずです。

雑談が苦手な取材のプロが33年続けた 本音を引き出す聞く力
雑談が苦手な取材のプロが33年続けた 本音を引き出す聞く力
白鳥和生
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著者
白鳥和生
出版社
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白鳥和生(しろとり かずお)

流通科学大学商学部教授。1967年長野県生まれ。明治学院大学国際学部を卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。小売り、卸、外食、食品メーカー、流通政策などを長く取材し、「日経MJ」「日本経済新聞」のデスクを歴任。2024年2月まで編集総合編集センター調査グループ調査担当部長を務めた。その一方で、国學院大學経済学部と日本大学大学院総合社会情報研究科の非常勤講師として「マーケティング」「流通ビジネス論特講」の科目を担当。日本大学大学院で企業の社会的責任(CSR)を研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得する。2024年4月より現職。「フードサービス論」なども担当する。著書に『即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術』(CEメディアハウス)、『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』『グミがわかればヒットの法則がわかる』(プレジデント社)などがある。

公開日:2025/07/22