

いわゆる「読書の秋」のシーズンがやってまいりました。 今月の編集部のイチオシをお届けいたします。



あらためて言うまでもなく、世界は目まぐるしく変わりつづけています。とくにインターネットが登場して以降、その変化は加速度的に激しいものになりました。きっと20年後の世界は、いまの私たちには想像もつかないような姿をしているのでしょう。ちょうど20年前、世界がこうなっているなんて、ほとんどの人が想像もしていなかったように。
そんな時代において、とくに強い存在感を発揮しているのが、本書のタイトルにもなっているGoogle、Apple、Facebook、Amazon(=GAFA)の四企業です。「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ」とはかのピーター・ドラッカーの言葉ですが、「未来を創る」立場にあるGAFAを理解することは、そのまま未来を予測することにつながるかもしれません。
著者の語り口がなんとも小気味よく、エンターテインメント作品としても上質。ぜひ読書の秋の一冊に加えてみてください。



世界を牽引するグーグル(社名はアルファベット)やアップル、フェイスブック、アマゾン。これらGAFAのように、急成長を遂げて世界的影響力を誇る企業が、日本ではなかなか誕生しないのはなぜなのか? その原因の1つを著者は、「PL脳の呪縛から抜け出せていないこと」だと指摘する。PL脳とは、売上や利益といった損益計算書の「目先の数字」を最大化することを目的視する、短絡的な思考態度を指す。
このPL脳に打ち勝つための新たな考え方として、著者が提唱するのが「ファイナンス思考」だ。「ファイナンス思考」とは、会社の価値を最大化するために、長期的な目線で事業や財務に関する戦略を総合的に組み立てる考え方のこと。要は、将来稼ぐと期待できるお金の総額を最大化しようとする発想といえる。
本書を開く前、ファイナンス初学者の私は、「ファイナンスは経営層や財務部門が担うもの」と狭い視野で考えていた。しかし、ファイナンスを扱う土台となる、「価値志向・長期志向・未来志向」で意思決定するための「思考法」自体は、どの職種であっても欠かせない。なぜなら、「未来」に思いを馳せた判断を積み重ねることで、会社の未来がつくられていくからだ。そんな大事な気づきを得た。
また、「押さえておくべき会計とファイナンスの基礎とポイント」が巻末にコンパクトにまとめられているのもありがたい。初学者でも実務に反映できるようにと、解説の細部まで考え抜かれていると感じた。
ビジネスに対する考え方のOSを入れ替えなくてはいけない――。そんな健全な焦りを抱かせてくれる大事な一冊と出合えたことを幸運に思う。



大学では、マイナー言語を専攻していました。専攻語と英語のほか、旅行に備えてスペイン語とフランス語をかじり、一般教養科目の中からわざわざエスペラント語を選び、日本語教育の授業にもぐり、アイヌ語の集中講義でちゃっかり単位をもらうという、なんともたのしい学生生活を送りました。
驚く方もいるかもしれませんが、これはごくごく平均的な外国語学部生の姿です。皆の尊敬を集めていたのは、ほとんどすべてのコマを外国語で埋め尽くし、ラテン語やサンスクリット語を本気で学ぶ強者たちでした。
そんな私が胸をときめかせたのが、本書です。神田外語大学で特任教授を務める著者は、本書で言及されているだけでも10か国語以上をあやつる語学の専門家。そんな著者のぶっとびエピソード――勉強のために「差し当たり一万語を目指して」チェコ語辞典の単語をひたすら打ち込んだ――や、著者ならではの発見――松本清張作品のオリジナル版と英語版のニュアンスの違い――などが次々と紹介されます。
「このタイトル、どういう意味だろう?」と思った方、ぜひ手に取ってみてください。語学が好きで、かつ文学や映画が趣味の方には間違いなくドンピシャの一冊でしょう。



会社の飲み会。お店に入って注文が済んで、みんなの飲み物も揃った。乾杯だ。
言いたくて言いたくて仕方ない。でも言ったらオヤジ丸出しじゃないか。やめとこう。でもどうしても言いたい…!
「ルネッサーーーンス!」
2008年時点で会社員だった人は必ず経験したと思う、飲み会の乾杯時の「ルネッサンス」。「エンタの神様」などでブレイクしたコンビ「髭男爵」のお決まりのギャグだ。貴族が漫才をするという斬新すぎる芸風で、何度見ても笑いがこらえられないぐらい面白かった。
が、その後何となくテレビで見なくなり、いつの間にか私も髭男爵のことは忘れてしまっていた。
一発屋芸人。日々変わりゆくメディアやエンタメの世界だが、毎年出てくる一発屋芸人。
本書は、本人も一発屋芸人である髭男爵の山田ルイ53世氏が、11組の一発屋芸人のその後の姿を描いた一冊である。テツandトモ、コウメ太夫、ジョイマン、波田陽区などやっぱりエンタでよく見た芸人の名前がズラリ。テレビではすっかり見なくなったが、それぞれの道で頑張っている様子が描かれる。
何よりこの本でビックリしたのが著者の文章の上手さ。痛快で独特な表現で仲間たちを描いていて、そこには自分も一発屋芸人であるからこそのある種の「愛」がある。手厳しい表現にも愛があるので楽しく読める。まさに著者にしか書けない一冊だ。
その巧みな内容から「第24回雑誌ジャーナリズム賞」の作品賞を受賞。「本屋大賞」のノンフィクション本大賞にもノミネートされ、著者の作家としての道も開かれ始めている。これもある意味一発屋芸人のその後の道だ。今後の活躍にも期待したい。