第1回 Lunch time ビジネスワークアウト 【イベントレポート】
テレワーク時代のコミュニケーション術

ランチを食べながら「知的筋力」を鍛える、フライヤーの新しいセミナーがスタートしました。「Lunch time ビジネスワークアウト」と題しまして、 2020年9月29日(火)のお昼の時間帯に無料のオンラインセミナーを開催。参加者は顔見せをしないウェビナー形式で、リラックスしたムードの中でたくさんの方にご参加いただきました。
メインスピーカーは株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行です。本記事では、当日のセミナーの様子をダイジェストで再構成してお届けします。
オフラインのときは、僕たちはただそこにいるだけで、非言語的なメッセージを周りとやりとりしていた。それに、ランチや飲み会など、職場外でのコミュニケーションでもメッセージを交換していましたよね。オンラインではそれらがなくなってしまった。そのことを意識しておかないと、気づかないうちに人間関係が急激に希薄化していってしまいます。
そこで、テレワークで必要となるコミュニケーションの6つのポイントを、フライヤーで配信されている要約とともに紹介していきたいと思います。
1.あなたは言ったことを「一言」でまとめる準備はできているか?


最初に紹介するのは、伊藤羊一さんの『1分で話せ』です。
テレワークでの会議って、じつは「誘惑との戦い」なんですよ。リアルの会議だったら、「内職」をすることは不可能ですが、オンラインだと簡単にできてしまいますよね。今だって、みなさんご飯食べてるでしょ? こういう状況では、話し手が言いたいことをバシッと一言で表して、聴いている側の注意を引きつける必要があります。
伊藤さんは、自分の伝えたい内容を包み込む、とても大事なキーワードを「超一言」という言葉で表しています。プレゼンや報告でも、全体を表す印象的な一言を最初に持ってくる。そして、会議が終わった後でもその「超一言」を聴いていた人の中に残すことが目標です。
2. あなたはどれだけ「部下の話を聞く時間」を作っているか?


上司と部下の間で1on1ミーティングを実施している企業は増えていますが、「部下の話を聞く時間」ではなく「上司が聞きたいことを聞く時間」になってしまいがちです。『ヤフーの1on1』では、「上司の役割はあくまで部下の学びの支援である」と言っていて、部下に十分話してもらうことをとても大事にしています。部下の本当に言いたいことというのは、上司が聞くことに徹し続けて、最後にようやく出てくるものです。「強いて言えばなんですが……」なんて言いながらね。
あなたが上司の立場だったら、部下との相談専用の時間を確保しましょう。テレワークが増えているからこそ、ますます大事になる視点です。
3. あなたはどこまで「その人の状況」を見ているだろうか?


『「未来のチーム」の作り方』では、「サイボウズ式」というサイボウズのオウンドメディアの編集長である藤村能光さんが、チームづくりの秘訣について語っています。藤村さんは、当初マイクロマネジメントに終始していて、メンバーの仕事の進捗状況を細かく管理して指示を出していました。すると、メンバーは感情や気持ちをないがしろにされていると感じて、タスクは進んでもチームの雰囲気はどんどん悪くなっていってしまった。そこで、藤村さんは仕事に煮詰まっている人に「どうしたんですか?」と声をかけるようにやり方を変えた。「仕事の状況」ではなく「人の状況」を見るようにしたんですね。スピードは落ちたけど、メンバーが納得感を持って仕事に取り組めるようになったそうです。
リモートワーク は相手の状況がわからないので、マイクロマネジメントになりがちです。「あの件はどうなったの?」なんてメッセージが散発的に送られてくると、口頭で言われるよりもプレッシャーを感じますよね。テレワークだからこそ、「人の状況」を見られているかを意識して考えてみましょう。
4. あなたは「仕事のマイルストーン」を部下と確認しているだろうか?


今度はテレワークでの生産性に目を向けてみましょう。相手の仕事の過程が見えにくいテレワークでは、チームの方向とずれたまま仕事を進めてしまっても気づきにくくなります。そのまま完成品が出てきてしまうと、それを指摘する方もされる方もとても辛いですよね。
このようなすれ違いを避けるために、『これからのテレワーク』では、資料作成であったら3割程度仕上げたところでいったん確認するなど、仕事の途中経過でマイルストーンを設定することをお勧めしています。仕事の状況や習熟度によって、適切なタイミングで途中の確認ができるようにしましょう。
5. あなたの組織の「採用基準」はリモートワーク化によって変わっただろうか?


意見が割れるかもしれないけど、僕は『リモートワークの達人』の主張にはとても共感しました。ちょっとした言い方でケンカになってしまうことがあるテキストでのコミュニケーションでは、口の悪い人が集まっているとチームの雰囲気が悪くなっていくというんです。だから、いやなやつを雇わずに、前向きな人や思いやりのある人を雇わなければいけない。
会話だったら許容範囲だったような「毒舌」が、文字になるとキツすぎる、なんてことはあるかもしれないですよね。テキストでのコミュニケーションの比率が圧倒的に増えて、働き方が大きく変わっている。だから、それにあわせて採用基準も変わらなければいけないのではないでしょうか。
6. あなたの組織には「人柄」×「好奇心」を持つ人材が重宝されているだろうか?


『THE CULTURE CODE』は、最強のチームの共通点を読み解いた名著です。1925年に設立されたベル研究所は、現代の私たちが使う技術のほとんどを生み出したといわれるほど優れた研究所です。この研究所で、特許数の多い研究者の共通点を探ったところ、なんとスウェーデン人のエンジニア、ハリー・ナイキストと一緒にランチを食べる習慣があることだということがわかったんです。
ナイキストは温かい人柄と旺盛な好奇心を持っている人でした。彼と話していると誰もが安心し、彼を介して違う分野の研究者同士が交流し、刺激を与え合っている。こうした人を組織の中に意図的に配置して、評価するのはとても大事なことなんじゃないかと思わされます。
6つのポイントからあなたやあなたの組織を見てみよう

ここまで、リモートワーク を考えるための6つのポイントを紹介してきました。目新しい話ではないかもしれませんが、こうした当たり前のことができていなからこそ、コミュニケーションの齟齬や生産性の低下が起きてしまうのだと思います。
今日の「ビジネスワークアウト」として、みなさんにもぜひ自分や自分の組織に当てはめて、これらをチェックしてみてください。
flierのゴールドプランに登録すると、今回紹介した本の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になります。この機会にぜひご利用ください。
「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!
プロフィール
荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学教員就任予定。
著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。