第3回 Lunch time ビジネスワークアウト 【イベントレポート】
パーパスについて、理解を深めよう

ランチを食べながら「知的筋力」を鍛えるフライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナー。好評だった第1回、第2回に引き続き、2020年12月8日(火)のお昼の時間帯に第3回が行なわれました。リラックスしたムードの無料オンラインセミナーに、今回もたくさんの方がご参加くださいました。
メインスピーカーは株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行です。本記事では、当日のセミナーの様子をダイジェストで再構成してお届けします。
荒木博行:最近、「パーパス」という言葉を聞くことが増えましたよね。パーパスとは、「自社の存在意義=私たちは何のために存在しているのか?」ということ。 なぜ今、「パーパス」が改めて注目されているのか。それは、企業が既存のビジネスモデルの限界に直面し、変革を迫られているからだと思います。 ではなぜ、変革にはパーパスが欠かせないのか。ここでキーワードになるのが、「ピボット」。ピボットとは、バスケットボール用語で、片足を軸にしてもう片足を動かすことをいいます。

1.手段にとらわれるな


まず紹介するのは、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2020」マネジメント部門賞の受賞作でもある『学校の「当たり前」をやめた。』(工藤勇一、時事通信社)です。この本には、次のようなことが書かれています。
「現在の学校教育を見渡すと、目的と手段の不一致だけでなく、手段自体が目的になってしまっているケースが多く見受けられる。(中略)『学校は何のためにあるのか』という根本的な問いに立ち返ってこそ、子どもたちが将来よりよい社会をつくることにつながるのである」
本書で著者は、学校の「パーパス」に立ち返り、そのパーパスを達成するために最適な手段を考えることを提案しています。学校だけでなく、すべての組織において、パーパスに立ち返って考えることが必要なのではないでしょうか。
チェックポイント:あなたの組織がやっている「手段」の目的は何だろうか?
2.目的の優先順位をつけよ


『偉大な組織の最小抵抗経路』(ロバート・フリッツ、田村洋一訳、Evolving)には、このようなことが書かれています。
「組織は必ず最小抵抗経路を進み、根底にある構造が最小抵抗経路を決定する。したがって、論理的に問うべき問いは、『構造は何を求めているか』である」
ちょっと難しいかもしれませんが、「最小抵抗経路」を「水は上から下に流れるということ」だと読み替えてみるとわかりやすいでしょう。
組織が手段の奴隷になってしまうのは、経営陣が目標を選択できていないから。人間は易きに流れる生き物なので、目の前に手段があれば、手段の奴隷になってしまうのは仕方のないことなのです。組織の目的に優先順位づけがなされているか、今一度考えてみましょう。
チェックポイント:あなたの組織の目的には、優先順位がつけられているか?
3. 目的を「自分ごと」化せよ


次は、タイトルにも「パーパス」と掲げられている『パーパス・マネジメント』(丹羽真理、クロスメディア・パブリッシング)です。
社員がパーパスを自分ごととしてとらえられていないと、組織はうまくいきません。ですが現場の社員たちにとってみれば、「目の前にお客さんの提案資料を作らなければ」「お客さんからのお問い合わせに対応しなければ」といった目の前のタスクのほうが、どうしても優先度が高くなってしまう。経営層は、そのことを理解した上で、社員がパーパスを自分ごと化できるような構造をつくらなければなりません。
ここでは、パーパスの言葉選びも重要になってきます。かっこいいだけの言葉では、社員にしっかり伝わらないかもしれませんよね。その言葉が本当に適切なものか、考えてみてもいいかもしれません。
チェックポイント:あなたの組織のパーパスは社員にとっての「自分ごと」になっているだろうか?
4. 仕事に「意味」と「目的」を落とし込め


次は、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』の著者、マーカス バッキンガム氏の最新刊である『NINE LIES ABOUT WORK』(マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール、櫻井祐子訳、サンマーク出版)です。
パーパスを自分ごと化するうえでは、パーパスをそのまま理解するのではなく、その裏側にある“WHY”を理解すること。つまり、「なぜそれが重要なのか」「なぜそれを目的として定めるべきなのか」を考えることが重要です。
パーパスに込められた経緯や背景を知り、共感が生まれると、パーパスは自分ごと化します。もしパーパスの背景を知らないなら、あなたの会社のトップに尋ねてみてはいかがでしょうか? 「よくぞ聞いてくれた!」と言われるかもしれません。
チェックポイント:あなたの組織の社員は、仕事に込められた「意味」をどれだけ語れるか?
5.組織と個人をオーバーラップさせよ


次は、『はじめての経営組織論』(高尾義明、有斐閣)です。この本には、個人と組織のパーパスについて、次のようなことが書かれています。
「もう1つが、組織と個人の目的を重ね合わせようとするものである。個人が組織に対して一体感を持ち、組織の目的達成が、個人が組織に参加し続ける目的の一部になれば、両者はおのずとオーバーラップしてくる」
あなたのパーパスと会社のパーパスに重なる部分ができたなら、それは本当に幸せなこと。といっても、必ずしもすべてが重なる必要はありません。そこにわずかでも重なりを見つけ出せるかどうかが、パーパスを自分ごと化できるかどうかを左右します。
まずは、あなたのパーパス、つまり「私がいる世界といない世界の差分は何か」を考えてみてはいかがでしょうか。
チェックポイント:あなたの組織は、組織と個人の目的の重なりを考えているか?
6.社員一人ひとりが未来を考える会社にせよ


最後に、『ひとりの妄想で未来は変わる』(佐宗邦威、日経BP)です。この本には、次のように書かれています。
「会社全体のビジョンを示すには、社員ひとりひとりが未来を考えなければならない。(中略)参加者間で過去・現在・未来に関する情報を共有すると、大事なこととそうでないことが浮き上がってくる。それをまとめるには「意志を込める」作業が必要だ。意志は最終的に「腹」で感じる、 身体的なものである」
会社のパーパスを身体的なものとしてとらえられる社員が増えると、手段の奴隷になりにくくなります。そのためには、一人ひとりが未来を考え抜くこと。そして会社のパーパスを“暗唱”するのではなく、自分のものとして納得し、腹落ちする感覚が必要なのです。
チェックポイント:あなたの組織の目的に、あなたは関与しているか?
6つのポイントからあなたやあなたの組織を見てみよう

ここまで、組織におけるパーパスを考えるための6つのポイントを紹介してきました。
今日の「ビジネスワークアウト」として、みなさんにもぜひ自分や自分の組織に当てはめて、「パーパス度」をチェックしてみてください。パーパス度の高い社員が多ければ多いほど、組織変革がしやすくなるはずです。
flierのゴールドプランに登録すると、今回紹介した本の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になります。この機会にぜひご利用ください。
「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!
プロフィール
荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学教員就任予定。
著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。