荒木博行:本日のテーマは「社員を成長させる目標設定と評価制度」です。
組織の指標となるKPI(Key Performance Indicator)と同様に、OKR(Objectives and Key Results)という言葉も徐々に市民権を得始めているでしょうか。
社員の成長を促す目標を設定するのに役立つ、そんな6冊をご紹介したいと思います。
1. KPIは1つに絞れ
最初は『最高の結果を出すKPIマネジメント』から、「KPIは1つであることが重要」というポイントを取り上げます。KPIが複数ある会社も少なくないため、意外と勘違いされがちな点ですね。
KPIを信号機として捉えるならば、それが複数目の前にあるとすると、進むべきか止まるべきか、分からなくなってしまいますよね。実際、KPIが多いために組織のメンバーが何を意識すべきか分からなくなっているケースも見受けられます。
明確に重視するKPIを絞らないといけません。まず経営者が組織で意識すべき指標が何かを理解し、それを絞り込むことがポイントです。
最重要のKPIを見つけ出し、その勘所を押さえて改善すれば組織全体のレバレッジが利きます。反対に、KPIが複数あると力が分散してしまい、一丸となれません。「とにかくこれに力を注ぐんだ」という優先順位を付けることが何より先決です。
2.OKRのOに重しを
OKR
クリスティーナ・ウォドキー,二木夢子(訳),及川卓也(解説)
日経BP
OKR
著者
クリスティーナ・ウォドキー二木夢子(訳)及川卓也(解説)
次に本書のタイトルでもある
『OKR』は、目標と評価のフレームワークです。近年、スタートアップ企業の間でよく使われており、フライヤーも導入しています。
O(目標)は抽象的な目標、目的といった概念であり、それを実現しているかの結果指標として数値的に表したKR(主要な成果)があるという関係です。Oの実現に向けてKRを設定し、常にOを意識しながらKRを達成していきます。つまり、上位概念のOに対して、下位概念としてKRがあります。
注意しなければならないのは、社員は仕事をこなすうえでKRの奴隷になってしまいがちということです。どういうことかと言えば、KRには数字が出てくる、すると上位概念であるはずのOがおろそかになる。さらに上位概念がおろそかになると、部分最適が起きてしまう。達成しやすいKRばかりに目が行き、KRは達成できても結果的に肝心なOを実現できないということは、ありがちな罠です。
本書はその落とし穴にはまらぬよう注意喚起しています。上位概念、至上命令が遂行されるよう、Oにしっかり重しを載せ、意識が向くようにしておくことが重要です。
3.個人の視点を尊重する
NINE LIES ABOUT WORK
マーカス・バッキンガム,アシュリー・グッドール,櫻井祐子 (訳)
サンマーク出版
NINE LIES ABOUT WORK
著者
マーカス・バッキンガムアシュリー・グッドール櫻井祐子 (訳)
続いて
『NINE LIES ABOUT WORK(仕事に関する9つの嘘)』です。こちらは、いろいろなセオリーに対するアンチテーゼが語られています。これまでKPIやOKRといった目標の大切さを説明してきましたが、「目標を上から下に課しても、生産性の向上につながる証拠は1つもない。良い目標はそれが自発的に設定されたかどうかだ」と説いています。
本書が示唆に富んでいるのは、相互の対話がとても重要だという点です。上から押し付けられるような目標は、生産性を阻害する恐れがあると指摘しています。
これは深い話です。組織を機械的に捉えるか、あるいは生物的に捉えるかという見方の違いとも言えます。
組織を機械に見立てた場合というのは、例えば1億円の売上目標達成のため、部下2人に5000万円ずつノルマを機械的に割り当てるようなやり方です。これだと社員は歯車のように扱われ、採用においても「足りないパーツに当てはまる人員を外から調達すればいい」という考え方になってしまいます。
一方、組織を生き物に見立てると、「あなたはどうしたいの?」という個々の思いが尊重され、全体の調和が取れていきます。「うちの組織はこういう目標を掲げていますが、あなたの目標は何ですか? あなたの人生と重なり合いますか? うまく組み合わさると何かいい連鎖が起こるかもしれませんね」といった考えです。とても重要な見方でしょう。
4. 気付ける力
続いて4冊目は
『楽しくない仕事は、なぜ楽しくないのか?』です。禅問答みたいなタイトルですが、これはエンゲージメントについて書かれた本です。
エンゲージメントは「組織に貢献する積極的な姿勢」といった意味で、それを高めるには「仕事の意味・強み」「成長」「人間関係」の3要素が重要です。つまり、「仕事に対するやりがい」「成長している実感」「良好な人間関係」、この3つがそろうと働く意欲がかき立てられるということです。
これはとても大事で、上司が目標設定する場面においては、この部分を認識できているかがカギとなります。中でもポイントになるのは「成長」です。人は自覚がなくとも、実は成長はしています。経験を通じて気付きを得ています。
今日1日を経験する前のあなたと、明日のあなた、その差分が成長です。たとえ微小な伸びであっても、上司がそれに気付いて言葉や意味を与えることができれば、立派な成長と言えるでしょう。目標設定に当たり、上司が見落とさずにこの気付きを与えることが大事です。
こうした成長に、自分では意外と気付けないものです。他人が呼び水を与えてあげることが成長につながっていきます。
5. 相手の真意を知る
続いて
『できる上司は会話が9割』、これも最近フライヤーで要約が出ましたね。
難しいのですが、会話において言葉に出てこない部分をしっかり聞き出して気付きを促すこと、これが大切になってきます。
例えば、部下が「これは自分で決めた目標ではないので……」と言ったとしましょう。そこで、「は? じゃあ誰が決めたの? 」みたいに頭ごなしに否定してしまっては対話にならないし、もう相手はその件に触れたくなくなりますよね。
そうではなく、「なるほど、どういうこと? 」というように言葉に出てこない部分に耳を傾け、真意を得るのです。本当は「目標設定したくないわけではない。でももやもやしている……」と言ったときに、そこを深く聞き出すのです。
1対1の会話は本当に大事です。OKRなど目標達成に向けたいろいろな手法がありますが、何よりもミクロの会話が一番だと感じています。会話を頑張りましょう。
6. スライムを処理する
最後までやりきる力
スティーヴ・レヴィンソン,クリス・クーパー,門脇弘典(訳)
クロスメディア・パブリッシング
最後までやりきる力
著者
スティーヴ・レヴィンソンクリス・クーパー門脇弘典(訳)
最後は先ほどのお話の延長で、
『最後までやりきる力』をご紹介します。
誰にでも必ずやらなければならない仕事というものはありますが、どうしてもやる気の起きない「スライム」的な仕事ってありますよね。スライムは「重くてネバネバしていて、反抗的で不快な存在」を表しています。
目標設定がうまい上司、エンゲージメントを高めるのが上手な人は、相手との対話の中でスライムを特定し、「じゃあそのスライムを分割してみようか」といった具合に処理方法を一緒に考えてあげられる人です。一番やりたくないスライムをちょっとずつ細かくちぎっていけば、相手も何とか処理できそうな気がしてきます。
本日は、社員の成長と目標設定を考えるための6冊をご紹介しました。
今日の「ビジネスワークアウト」を踏まえ、組織に貢献しつつ自分の成長にもつながるような目標設定を実践していただければ幸いです。
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「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!