
ランチを食べながら「知的筋力」を鍛えるフライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナー。2021年8月25日(水)のお昼に第11回が行われました。和やかなムードの無料オンラインセミナーに、今回もたくさんの方がご参加くださいました。
メインスピーカーは株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行さんです。当日のセミナーの様子をダイジェストで再構成してお届けします。


「マインドフルネス」はもともと「注意を向ける」という意味合いがあります。自分自身の「今、ここ」にある状態に注意を向けることによって得られるのが「からっぽ」という状態です。
頭をからっぽにする感覚とはどのようなものでしょうか。スキーで斜面を滑降しているとき、夕日を眺めているときなど、あなたの頭はからっぽになっています。このからっぽの状態でいられると、悲しみや怒りなど表面的な感情に左右されず、平静でいられます。
からっぽにすることを意図してやるか、あるいは仕事など何かに熱中していて結果としてからっぽになるかは違います。結果的に起こるからっぽの状態を、いかに意図的に再現するか。トレーニングをして、頭をからっぽにする「筋肉」が発達してくると、からっぽにする力を自在に操れるようになります。
からっぽという言葉は通常ポジティブな表現ではありませんが、実はとても大事なことです。意図を持ってからっぽにすることができたなら、ネガティブな感情に向き合ったときにも平静を保つことができるでしょう。


人は1日6万回思考していて、そのうち9割は同じ内容の繰り返しだと言われています。ほとんど自分の意志とは関係なく、思考はぐるぐると巡っているんですね。
思考は「今、ここ」ではなく、連鎖して未来に飛んでしまい、過去にも飛ぶものです。大事なのは「今、ここ」に集中することです。
「いつもこういうところでミスをしてしまう」といった過去の失敗体験から、悲観的な将来を想像し、さらに慌ててしまうようなことはありますよね。数珠つなぎで先に行ったり、過去に戻ったりする思考の連鎖を断ち切る、思考を切り離すということが大切です。
今、私とあなたが話しているだけ、そこに集中しようというのが思考を切り離すということ。将来や過ぎ去った昔のことを考えても仕方がなく、起きていることだけに目を向けます。
これも「筋肉」を鍛えることによって、飛んでいく思考を「今、ここ」に引き戻すことができます。普段から筋トレしていれば、「今、ここ」に集中しようという意識が芽生えます。
「今、ここ」はどのマインドフルネス関連書にも書いてある、とても大事な考え方です。


本書には「オーセンティシティ」(本当の自分)について詳しく書かれています。
オーセンティシティとは、「今・この瞬間」に目を向けるマインドフルネスを通して、一瞬一瞬を「本当の自分」として存在し、どんな時でも自分の言葉と行動を合わせ、自分の信じることを行ない、正直に他人と関わることです。
自分に対して素直であること、自分が何をしたいのか、何を感じているか、そんな自分と対話する、そしてそれを他者と共有する――。抽象度の高い話ですが、これがまさにオーセンティシティです。
長く社会人生活を続ける中で、自分をだますことに長けてしまっている人はいます。そうではなく、自分に向き合い、自分が何を感じているか、自分と向き合っているそのときに素直になろうということです。言うのは簡単ですが、とても難しいことですね。
私自身、過去のターニングポイントで自分と向き合うことを多くしてきましたが、素直になれていないのに、自分の本心のように自身に言い聞かせてしまっていることがありました。後になって「あの時、自分に嘘をついていたな」と気付くこともあります。
経験則で言えば、繰り返していくことが大切です。一回で自分に素直になれるかというと、私はなれませんでした。常に問いかけ続けることによって、徐々に「こういう心境だと素直になれるんだな」と分かってきます。回数をこなすことが必要だと思います。
自分の本能と客観的な自分とを分けて考える、手綱で自分を引っ張っているような感覚です。馬がいて私がいる。馬も自分なのですが、手綱を引いている自分もいる。そうした、自分を客観視できている状態はまさに「メタ認知」ですね。
せわしない日常を過ごしていると、馬と私が一体化してしまうこともあると思います。そんな時は一度立ち止まりましょう。


本書の中で紹介されている「ジャーナリング」というワークがあります。端的に言えば、書くこと。自分と向き合って書くということです。
各テーマについておすすめされているのは3つ、(A)自分が本当に大切にしていることは何か、(B)自分がベストの状態とはどのようなものか、(C)自分がイラっとすることは何か。そして、選んだテーマについて7分間、思いつくことをひたすら書き出してみることです。
私は普段から結構書くほうです。やはり、書くことによって自分を客観視できるなど、得られる効果はあります。考えは自分と一体化しがちですが、文字として書き出すことによって、自分と考えが分離します。難しい言葉で言うと、思考を外在化すると言いますが、考えを外に出すことで、自分がそれを客観的に捉えることができるのです。
私は、良いとされるこの3つを、以前から知らず知らずのうちにやっていました。イラストを描くのが好きなので、その時々の心境を表情みたいなもので表現しながら、言葉を添えて書き続けてきました。
まずは書いてみて、思考を外側に出してみましょう。これも馬と手綱を引く自分に分かれるという考え方に通じますね。


『サピエンス全史』などで知られるユヴァル・ノア・ハラリは、1日2時間の瞑想をルーティンとしているそうです。マインドフルネスにおいては、1日30分を瞑想に充てることが望ましいと言われますが、なかなかそうした時間は取れませんよね。
その場合、行為に注意を向けることで注意力を高めていく「マインドフル・ウォーキング」や「マインドフル・イーティング」といったやり方があります。
以前Voicyでもお話ししましたが、テレビドラマ「孤独のグルメ」の主人公・井之頭五郎さんがやっている食に向き合う行為は、まさにマインドフル・イーティングですね。彼はただただひたむきに食と向き合うことをやっています。
忙しい現代では、一人で食べているときにスマホを見たり、オンラインセミナーを聴講していたり、誰かと一緒に話したりもしますね。それらは言うなれば「マインドレス・イーティング」、つまり集中していない状態ということになります。ある意味で、私たちはマルチタスクの病に冒されているのかもしれません。スマホで聴きながら何かをやったり、ポッドキャストを聴きながら歩いたり、「ながら」になりがちです。
そうした中、1つに集中すること。そのための時間を意図的に作らないといけませんが、それをやってみるだけでいいのです。毎日2時間とは言いません(笑)。たとえば、食べる時に目の前の食事に集中する、通勤時に自分の歩いている身体に100%注目するなど、何かに意識を向けること。それだけでだいぶ変わります。意図を持ってやってみましょう。


最後は変化球で『ビジネスZEN入門』です。
マインドフルネスの瞑想法は座禅と同じやり方で、静かに座って呼吸に集中します。しかし、ZENとマインドフルネスは、本質が根本的に異なります。
マインドフルネスはご利益を期待して行なう「ゲイン」という考え方です。一方で、禅の本質は「ご利益などその行動の先に何があるかはわからないが、何かあると信じて釈迦と同じように苦行を積む」といった意味合いがあります。
今までの5冊でお伝えしてきたことはすべてご利益ベースのお話であり、「メリット、ゲインがあるよ」というのはマインドフルネスです。ただ、それは禅とは違い、禅の本質はその行動自体に意味があります。
マインドフルネスは、集中力を高めるといった目的に対して手段であると言えます。別の手段があるなら、マインドフルネスでなくてもいいわけですね。しかし禅はそれ自体が目的であるため、禅でなくてはいけません。
何のためにマインドフルネスに取り組むのか、とても本質的な点を問い掛けています。

荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役、株式会社NOKIOO スクラ事業アドバイザー。
著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。