私たちの未来のために、いまこそ考えたい地球環境
第12回 Lunch time ビジネスワークアウト 【イベントレポート】

私たちの未来のために、いまこそ考えたい地球環境

ランチを食べながら「知的筋力」を鍛えるフライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナー。2021年9月21日(火)のお昼に第12回が行われました。和やかなムードの無料オンラインセミナーに、今回もたくさんの方がご参加くださいました。

メインスピーカーは株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行さんです。当日のセミナーの様子をダイジェストで再構成してお届けします。

荒木博行:今回のテーマは「私たちの未来のために、いまこそ考えたい地球環境」です。さまざまな見方がありとても難しい問題です。

例えば、脱プラスチックの問題で言えば、プラスチックそれ自体は世の中を住みやすいものにしてくれたイノベーションの結果であり、人類、社会の成長と切っても切れない関係にあります。一方、そのプラスチックが二酸化炭素排出や海洋汚染につながっているという複雑な構図があります。

私自身はこの領域における専門家ではありませんが、専門家でない人間であっても、公開されている様々な情報や書籍をベースに「今何が起きているのか、そして何をすべきか」ということを考えることは十分可能です。先日もIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告書が公開されましたが、最先端の研究者の報告を誰でもアクセスして見ることが可能になっています。

今日は、そのような前提の下、フライヤーの要約にある書籍を通じて地球環境問題を一緒に考えていきましょう。

1.『脱プラスチックへの挑戦』

脱プラスチックへの挑戦
脱プラスチックへの挑戦
堅達京子+NHK BS1スペシャル取材班
山と溪谷社
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脱プラスチックへの挑戦
脱プラスチックへの挑戦
著者
堅達京子+NHK BS1スペシャル取材班
出版社
山と溪谷社
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本書に登場する「プラネタリー・バウンダリー」は、地球環境問題を考えるうえで押さえておきたいキーワードですね。不可逆的なポイント、戻れないぎりぎりの限界を指す「地球の限界」という意味です。

環境問題における意見対立に関し、一番根本にあるのは、このプラネタリー・バウンダリーに対する認識の違いでしょう。例えば、地球はまだ1万年は大丈夫と考えれば、「今は先にやるべき大事なことがある」と他のことを優先するかもしれません。しかし、「この10年で何かしなければ後戻りできなくなる」となれば全く話は別です。

IPCCに関与された専門家は、「幸か不幸か、我々はたまたま地球の命運を決める10年に生きている。この時代に生きていることの自覚を持とう」と話していました。この時間軸を共有していないままに、「今何をすべきか」という議論を重ねていても、話はかみ合わないままでしょう。

地球の限界はいつか。それが見えないからこそ、時間軸をどのように捉えるかがいっそう大事になってきます。

チェックポイント:プラネタリー・バウンダリーの認識を持とう

2.『グレタ たったひとりのストライキ』

グレタ たったひとりのストライキ
グレタ たったひとりのストライキ
マレーナ&ベアタ・エルンマン,グレタ&スヴァンテ・トゥーンベリ,羽根由(訳)
海と月社
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グレタ たったひとりのストライキ
グレタ たったひとりのストライキ
著者
マレーナ&ベアタ・エルンマン グレタ&スヴァンテ・トゥーンベリ 羽根由(訳)
出版社
海と月社
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続いては、グレタ・トゥーンベリさんの著書です。彼女もまた、切迫した明確な時間軸を持っています。

そうした時間軸を理解せず、「まだ時間があるから、そんなに怒らずにゆっくりいきましょう」と考えるとすれば、彼女の主張を受け入れることはできないでしょう。お互いが想定しているタイムリミットにずれがあると、実際の言動や態度も大きく異なってきます。

本書は、「本当に危機だとわかれば、誰もが習慣や態度を変えられずにいられないはずだ」と指摘します。「あなたの家はもうすぐ燃えてしまいますよ」と、危機を認識すると、本気で取り組むようになる。この気づいていない危機を皆で見るということが本当に難しいのです。

そもそも、明日の食事など日々の生活にさえ苦労している人は、地球問題に危機意識を持ちにくいものでしょう。そして、問題を認識する主語が大きく、多数になるほど、「誰かが解決してくれる」と他人任せになってしまいがちです。

チェックポイント:機はどれくらい迫っているのだろうか?

3.『気候変動クライシス』

気候変動クライシス
気候変動クライシス
ゲルノット・ワグナー,マーティン・ワイツマン,山形昭夫(訳)
東洋経済新報社
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気候変動クライシス
気候変動クライシス
著者
ゲルノット・ワグナー マーティン・ワイツマン 山形昭夫(訳)
出版社
東洋経済新報社
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本書に登場する「ジオエンジニアリング」は、テクノロジーによって地球環境問題を回避しようとする取り組みであり、私もこの技術に期待し、注視しています。

本書はジオエンジニアリングの真の社会費用は何かと問い、大局的な視点を持つように促します。すなわち、狭義のエンジニアリング費用だけを見れば安価に済むとしても、その技術がもたらす変化によって社会的に生じうる、あらゆる費用が計算に入っていない。そうした現状の問題点を挙げています。例えば、革新的な技術が開発・導入されたとして、その潜在的な副作用による費用や悪影響が、見えないコスト、代償として存在する可能性もあるわけです。

地球環境問題のタイムリミットが近づく中、テクノロジーに対する人類の期待は当然高まっていきますが、本書は「夢のようなテクノロジーばかりではありません」とけん制するような主張を展開します。ジオエンジニアリングに期待はしつつも、その社会的に及ぼす影響はきちんと押さえておきましょう。

チェックポイント:ジオエンジニアリングのコストを理解しよう

4. 『SDGs思考』

SDGs思考
SDGs思考
田瀬和夫
インプレス
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SDGs思考
SDGs思考
著者
田瀬和夫
出版社
インプレス
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本書は、SDGsを考える際の頭の使い方について書かれています。SDGsの各目標が相互に結びついて連関していて、どれか一つを達成しようとすると他の目標の達成が難しくなる、あるいは一つを解決したら連立方程式のように他も解決するといった考え方です。そうした考え方を「リンケージ思考」と呼び、部分最適にならないアプローチが訴求されています。

例えば、途上国の小学校における給食提供プログラムが、学校へ通う子どもの増加、教育機会の拡大、栄養状態の向上、食材を提供する地域の経済活性化といったさまざまな状況の改善につながっていくという事例が紹介されています。このように、正しい一手によってさまざまな課題が解決できる一方、間違った方向のボタンを押すと、状況は一気に悪化してしまいます。

つまり、てこの力点(レバレッジポイント)を探り当て、適切な策を打つことが大切だということ。著者はそれを「SDGドミノ」と呼んでいます。ドミノを1個倒すと次々と倒れていくように、少しの解決策が波及していくつながりを踏まえ、手を打とうと説いています。

チェックポイント:レバレッジポイントを探り当てよう

5.『グレートリセット』

グレート・リセット
グレート・リセット
クラウス・シュワブ,ティエリ・マルレ,藤田正美(訳),チャールズ清水(訳),安納令奈(訳)
日経ナショナルジオグラフィック社
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グレート・リセット
グレート・リセット
著者
クラウス・シュワブ ティエリ・マルレ 藤田正美(訳) チャールズ清水(訳) 安納令奈(訳)
出版社
日経ナショナルジオグラフィック社
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ダボス会議の創設者である本書の著者は、パンデミックによって社会構造のリセットボタンが押されたと指摘します。パンデミックに伴う変化が、地球温暖化防止に有効かもしれないということです。

例えば、リモートワークの拡大、自転車移動の増加、飛行機による移動の減少、一部の国によるロックダウン。これらは地球温暖化の抑止に効果があるとされ、データとともに示されています。

現在、新型コロナウイルスの感染者数は減ってきており、いずれ緊急事態宣言が解除されて以前のような生活に戻るという期待も出始めています。ただ、地球温暖化問題を見据えると、新たに導入されたライフスタイルは、継続していくべきなのかもしれません。

実際、人々のマインドセットは無意識のうちに変わり、オンラインの講義や商談を当たり前と思うようになりました。移動の減少といった行動変容が、地球環境の負荷軽減につながるのであれば、このライフスタイルは継続されるはずだ――。私たちはそうした認識を持つべきなのかもしれません。

チェックポイント:ワークスタイル・ライフスタイルが戻らないシナリオを念頭に入れよう

6.『SDGsの基礎』

SDGsの基礎
SDGsの基礎
沖大幹,小野田真二,黒田かをり,笹谷秀光,佐藤真久,吉田哲郎
宣伝会議
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SDGsの基礎
SDGsの基礎
著者
沖大幹 小野田真二 黒田かをり 笹谷秀光 佐藤真久 吉田哲郎
出版社
宣伝会議
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最後はやや抽象度が高めの難しいテーマです。本書は「マルチステークホルダー」をキーワードとして、これからのパートナーシップの在り方について紹介しています。

従来の経営の感覚でステークホルダー、すなわち利害関係者と言うと、株主が何よりも重視されていました。株主が何よりも重要であり、経営会議においても株主の期待値にどうやって応えるか、ということがメインイシューになります。

ところがマルチステークホルダーという概念においては、ステークホルダーは、従業員も当然ながら、地域や地球そのものも含まれていきます。私たちが地球という土俵を借りている、と見るならば、地球からの期待値にも応えていかなくてはなりませんし、まだ存在しない未来の人類などもステークホルダーになり得るわけです。

ステークホルダーが広がっていくと、企業は声の小さい、目に見えないような対象に注意を払いながら経営するという、とても難しい問題に直面していくことになります。人種や性別への配慮はもちろん、目に見える・見えない、声が大きい・小さいといった多様性も踏まえ、いかにバランスの取れた経営していくかが今後本質的な課題となっていきます。

一方でこの考え方は、必ずアンチテーゼを生みます。より幅広く、みんなのことを考えようとすれば、「その話はまず利益を出してからだ」と反発する声、それを称賛する動きも出てくるでしょう。そうした作用と反作用の間で揺れ動きながら、マルチステークホルダーの理念を掲げて進めるかどうか。それがこれからの経営のイシューとなっていくのではないでしょうか。

チェックポイント:マルチステークホルダーの存在を理解しよう




ここまで、地球環境問題を考えるための6つのポイントを紹介してきました。

今日の「ビジネスワークアウト」として、みなさんもぜひ自分に当てはめて、SDGsを意識した働き方などにつなげていただければ幸いです。

flierのゴールドプランに登録すると、今回紹介した本の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になります。この機会にぜひご利用ください。

「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!

荒木博行(あらき ひろゆき)

株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役、株式会社NOKIOO スクラ事業アドバイザー。

著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。

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文責:南龍太 (2021/10/12)
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