
第13回 Lunch time ビジネスワークアウト 【イベントレポート】
ランチを食べながら「知的筋力」を鍛えるフライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナー。2021年10月26日(火)に行われた第13回にも、多くの方にご参加いただきました。今回のテーマは「リカレント教育」。学び続けることの大切さが注目されるなか、自社を学び続ける場所にするためには、何が必要なのでしょうか。株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行さんに、リカレント教育をひもとく6冊を紹介していただきました。本記事では、セミナーの様子を再構成してお届けします。
ライター・池田友美
荒木博行:「リカレント教育」という言葉自体は新しいものではありませんが、最近耳にする機会が増えましたよね。英語の”reccurent”は、「反復・循環」といった意味です。昔は学校を卒業して仕事をする、というように、学びと仕事は分かれていました。しかし、今は仕事をして、学んで、仕事をして、学んでという循環が一般的になりました。学び続けることが当たり前になった現在、社員教育で学び続けるインフラを整えようとする企業が増えています。 人間は何から学んで成長するかという研究では、経験が70%、他者からのフィードバックが20%、学習プログラムが10%だといわれています。今日は本の力を借りて、学び続ける組織や社員のつくり方について考えてきましょう。


この原著である『学習する組織』は、リカレント教育を考えるうえで欠かせない一冊です。原著はやや難解ですが、この入門書では、学習する組織を支える学習能力を構成する、5つのディシプリンの大切さをわかりやすく説いています。「自己マスタリー」「システム思考」「メンタル・モデル」「チーム 学習」「共有ビジョン」という5つのディシプリンは、いうなれば「型」のようなものです。
僕が仕事で組織の中に学習する仕組みをつくろうとするとき、最初にやるのはどうやって理論や手法の体系をつくるかということなんです。いきなり具体的なプログラムをつくるのではなく、骨格の全体像を作る。本書は、そうしたことを考えるきっかけを与えてくれます。


これもとても良い本です。リーダーをあえてシンプルに「独裁者」と「解放者」に分けて論じています。人を萎縮させる「独裁者」と、メンバーの居場所を作り、最高の仕事を求める「解放者」、どちらが人の才能を開花させるかは自明ですよね。
学習を促進しようと思うと、プログラムや研修をつくろうというところに目が向きがちですが、メンバーが組織に居場所を感じていなければ、「学ばされる」という状況になりかねません。メンバーが自ら学びたいと思えるためには、学ぼうと思う場所に居場所がないといけないのです。


戦略とイノベーションについての世界的な権威 、ゴビンダラジャンは、本書で新規事業に重要なキーワードとして「忘却」「借用」「学習」の3つをあげています。新規事業にあたるときは、まずは既存事業を「忘却」しなければいけないというんです。そのうえで、既存事業の資産を「借用」することは、ベンチャー企業と比較して新規事業の優位な点です。それから、事業成果の予測精度を上げるという「学習」をしなければならない。
「忘却」をしなければ、既存事業の延長でしかなくなってしまいます。たとえば、桁違いの顧客数を扱う既存事業の人事評価を、忘却しないまま新規事業にあてはめてしまうと、立ち行かないだろうということは想像にかたくないですよね。軌道に乗っている既存事業は失敗しないのが当然であっても、新規事業は簡単につまずきます。それが評価に反映されたら、たまったものではありません。意識的にすべてを忘れようとする姿勢は、次に紹介する本とも通ずるところがあります。


「アンラーニング」という言葉は、「学びほぐし」とも言われます。新たなことを学ぶとともに、一度身につけたことを忘れることが重要です。『仕事のアンラーニング』では、「表層的アンラーニング」と「中核的アンラーニング」の2種類のアンラーニングを紹介しています。新しいスキルやテクニックを導入する機会は多くありますが、このようにソフトウェアを変えるだけの「アンラーニング」は「表層的アンラーニング」にすぎません。
重要なのは、仕事への信念やルーティン自体を変える「中核的アンラーニング」です。自分のことを振り返ってみても、仕事の手順自体を見直してガラッと変えることは少ないなと思います。得意なやり方があると、いざというときはついそれに頼ってしまう。それをこの本では「有能さの罠」と表現しています。革新的な上司の下で働いている人は、「背中を見て」アンラーニングすることができます。みなさんの職場には、学びの姿勢をもつリーダーはいるでしょうか?
![[増補新版]活眼 活学](https://static.flierinc.com/summary/2598_cover_300.jpg)
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この本から紹介したいのは、「知識・見識・胆識」というフレーズです。単に「知っている」状態は「知識」と呼び、それに基づいて意見を持つことができてはじめて「見識」になります。さらに、経験を通じて揺るがぬ信念があれば「胆識」です。
外側にある「知識」は簡単にアップデートできますが、徐々に深まっていく「見識」や「胆識」は簡単に変わるものではありません。何かを学ぼうとすると、「知識」の話になりがちですが、それをいかに「見識」化し、「胆識」化するかがより重要です。冒頭で紹介した「経験が70%、他者からのフィードバックが20%、学習プログラムが10%」という法則から考えれば、経験から得た学習は胆識に落としやすくなるといえます。


最後に紹介するのは、稲盛和夫先生の『心。』です。大学では化学の勉強に集中していた著者は、本にほとんど触れてこなかったそうです。働き始めてから、どんなに忙しくても疲れていても、書物を手にとって1ページでも2ページでも読み進めるなど、泥くさい努力で、人格を磨き続けました。
稲盛さんは、ビジネス上で様々な苦しい経験をし、そこから多くの学びを得ているわけですが、それを支えているのが、この読書なんです。経験で得られる学びを最大化するために、読書はとても重要な役割を果たします。どんなに忙しくても疲れていても無理なく続けられるような、そんな仕掛けをいかに組織の中に入れていくか。上司が本と結びつけて部下の内省を促せるか。日々のマネジメントの中に、学びを得られるような仕組みを組み込むことが重要であると気づかせてくれます。
以上、学び続ける組織や人をつくるための6冊をお届けしました。改めて、自分の組織に当てはめて考えるきっかけにしていただければ幸いです。
flierのゴールドプランに登録すると、今回紹介した本の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になります。「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!
荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役、株式会社NOKIOO スクラ事業アドバイザー。
著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』『世界「失敗」製品図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。