
ランチを食べながら「知的筋力」を鍛えるフライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナー。2021年11月16日(火)のお昼の時間帯に第14回が行われ、今回もたくさんの方がご参加くださいました。
メインスピーカーは株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行さんです。本記事では、当日のセミナーの様子をダイジェストで再構成してお届けします。
荒木博行:本日のテーマは「人事がいま知っておきたい、パーパスの本質」です。
「パーパス」「ビジョン」「バリュー」……どれも似たような意味で使われる言葉ですが、違いを説明できるでしょうか。使われ方は人や文脈によってさまざまではありますが、それぞれの位置づけを簡単に説明しましょう。
「パーパス」は抽象度の高い言葉です。顧客や株主、地球環境などといった関係者を踏まえた企業の存在意義をいいます。
その抽象度の高いパーパスをより具体化して目に見える形に落としたのが「ビジョン」。ビジョンをベースに、個々人の目標へとブレークダウンされていきます。
「バリュー」は、ストライクゾーンのようなもの。ビジョンや目標を達成するとき、どんな手段を使ってもいいのかというと、そうではないはず。バリューが定まると、個人に対して「この枠内で自由にやってください」と権限移譲できます。この関係性が理解できていないと、パーパスと現場の活動が乖離していたり、言葉遊びになってしまったりします。まずはこれらの概念の関係性を頭の片隅に置いておきましょう。
それでは、「パーパス」についてflierで配信されている6冊の要約をベースに考えていきましょう。


1冊目の『ティール組織』(フレデリック・ラルー、 鈴木立哉訳、嘉村賢州解説、英治出版)において著者は、先駆的な進化型組織は3つの突破口を開いているとし、その一つに「存在目的(Evolitionary purpose)」を挙げています。具体的には、組織は何のために存在していて、今後どのようになりたいのか、ということですね。
あなたが新しい会社に入社するとき、「あなたの仕事は法人営業で、具体的な仕事内容としては……」といった話は必ず聞くことになるでしょう。一方で、「その組織の存在意義は何か」「どこに向かおうとしているのか」といった内容が語られるケースは少ないものです。
パーパスを設定し、メンバーに伝える。これからの組織づくりは、そこからはじまるのではないでしょうか。


2冊目は『パーパス 「意義化」する経済とその先』(岩嵜博論/佐々木康裕、NewsPicksパブリッシング )です。本書では、「製品・サービスは長らく機能で差別化してきた。その後は体験で差別化する時代が訪れ、そして今、体験価値だけでも差別化要因としては不十分になりつつある」といったことが書かれています。
現在、機能、体験に代わる差別化要因になっているのは、製品・サービスの背景にある意義やストーリー、つまりパーパスです。その会社がどこに向かっているのか、信じるものは何なのか。そうしたものが競争優位につながる時代がやってきているのです。


次は、『ナラティブカンパニー』(本田哲也、東洋経済新報社)です。
本書で語られる「ナラティブ」という言葉は「ストーリー」と似ていますね。私は、ストーリーは「企業側が語る一方向的な物語」であるのに対し、ナラティブは双方向性があるものだととらえています。消費者やユーザー発のストーリーが企業に組み込まれたり、企業発のストーリーを消費者が読み取ってリアクションしたり……そうした共創構造をつくるのがナラティブではないでしょうか。
ナラティブというキーワードは、パーパスとうまく組み合わせられそうです。「こういう世界を実現したい」という経営層のパーパスに、従業員はもちろん、ユーザーも当事者として巻き込んでいく。「私はこう思う」「いいですね。だとすれば……」と語り合う関係性をつくるのです。


4冊目は『ソニー再生』(平井一夫、日本経済新聞出版社)。ソニーの社長兼CEOを務めた著者は、本書の中で、後任となった吉田憲一郎さんが「パーパス」を掲げたことに言及しています。
吉田さんがソニーの全社員を巻き込んでパーパスをつくったことは、大きな話題を呼びましたよね。各現場でワークショップを開催し、キーワードを集めながらパーパスをつくっていく――この過程は、まさに一方向のストーリー型のパーパスではなく、双方向性の高いナラティブ型といえるものです。
パーパスを考える過程で、従業員たちは自然とステークホルダーのことを考えるようになり、目線が上がったでしょう。それだけでなく、議論の末に決まったパーパスに対し、強い当事者意識を抱いているはずです。


『NINE LIES ABOUT WORK』(マーカス・バッキンガム/アシュリー・グッドール、櫻井祐子訳、サンマーク出版)では、「仕事に関する嘘」の一つとして「最高の企業は『目標』を連鎖させる」が挙げられ、「目標を組織の上部から下部に課すことが生産性の向上につながることを示す証拠は一つもない」といったことが書かれています。
では、目標に対して企業はどう向き合えばいいのか。本書によると、「意味」と「目的」を個人に落とし込むことがカギとなります。
「営業部の売上目標が100万円、部員が10人いるから一人あたり10万円が目標です」では不十分。メンバーが自発的に動けるようになるには、「100万円の売り上げを上げることで、世の中はどうよくなるのか」「あなたが目標を達成する意味は何か」といったテーマで語り合うことが必要なのです。


最後に紹介するのは、『パーパス・マネジメント』(丹羽真理、クロスメディア・パブリッシング)。本書で著者は、個人と組織のパーパスを合致させることの重要性に言及しています。
個人と組織のパーパスを重ね合わせるには、前提として「あなたが働く目的は?」という問いについてフラットに議論できなければなりません。特に採用のフェーズにおいては、お互いのパーパスを確認する必要がありそうです。
といっても、個人のパーパスは変化していくもの。カジュアルにその時々のパーパスについて話し、すり合わせられるようなコミュニケ―ションが求められますよね。

ここまで、パーパスを考えるための6つのポイントを紹介してきました。
今日の「ビジネスワークアウト」として、みなさんにもぜひ自分に当てはめて、キャリアデザインについて考えてみていただければ幸いです。
flierのゴールドプランに登録すると、今回紹介した本の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になります。この機会にぜひご利用ください。
「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!
荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役、株式会社NOKIOO スクラ事業アドバイザー。
著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』『世界「失敗」製品図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。