
要約を通してビジネストレンドに気軽に触れることができる、flier×日経ビジネスの「現代をより深く知るための3冊」。今回のテーマは、日経ビジネス読者の注目を集めた特集「ゲーム進化論」です。 アニメやマンガ、ゲームなどのコンテンツは、日本が世界に誇る重要な産業の一つです。ところが、急速な拡大が見込まれる世界のゲーム市場の中で、日本の存在感は薄れつつあります。ゲームの枠を越え、一種のプラットフォームと化しているゲーム産業で、日本のポップカルチャーの強みを活かすには。フライヤーの要約からは、ゲームの歴史や技術への理解を助けてくれる書籍をピックアップしました。
長期停滞が続く日本経済。その中にあってマンガ、アニメ、ゲームといったコンテンツは世界に通用する重要な産業となっています。日経ビジネスは特集「ゲーム進化論」で、日本が誇るゲーム産業の現状について取り上げました(雑誌版は9月27日号『日本勢は「ガラゲー」か? ゲーム進化論』として掲載)。
ゲーム市場は世界で拡大が続いています。スマートフォンの普及やコロナ禍による巣ごもり需要も追い風になっており、世界のゲーム市場は2024年に24兆円を超える見通しです。世界で拡大を続けてきた「オタク市場」の中にあって、ゲームを中心とする日本のポップカルチャーは常に存在感を示してきました。
日本のポップカルチャーの強さと今後の方向性については、下記の『オタク経済圏創世記』に詳しく紹介されています。


ただ、日経ビジネスの特集では、市場が膨れ上がってきたことによって、日本のお家芸とも言えるゲームの領域で海外勢が躍進している様子が描かれています。
例えば米エピックゲームズが開発・配信するバトルゲーム「フォートナイト」。4年でユーザー数は3億5000万人と、米国の人口(約3億3000万人)を上回っています。
エピックは2020年、米アップルの規約を意図的に破り、アプリストアから排除されました。「アップル税」ともいわれる、15〜30%のアプリ配信手数料に不満を抱いたためです。その後の訴訟では多くの項目でアップルに有利な判決が出たものの、エピック側は「我々は戦い続ける」と宣言して控訴しました。
ゲームの開発会社であるエピックがGAFAの一角であるITの巨人、米アップルに反旗を翻す。その事実こそゲームという産業が力を持ち始めている証左と言えるでしょう。
そんな中で、日本のゲームの存在感は以前と比べて薄れています。1億人以上のユーザーを集める、世界的に人気のゲームは米国や中国をはじめとする海外のゲーム会社が開発した作品ばかりです。
特集ではその理由として、スマホなどマルチデバイスへの対応の遅れと課金モデルの違いを挙げています。そもそも日本のゲーム文化は、任天堂が家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を大ヒットさせたことが大きな転換点になっています。その後、日本のゲーム産業は家庭用ゲーム機を中心に発展してきました。
ゲーム産業とゲーム文化の変遷については『現代ゲーム全史』に詳しく書かれています。


今ではGAFAのようなITの大手企業もゲームに力を入れています。それはフォートナイトの事例からも分かるように、ゲームをはじめとする仮想空間が、多くの人が集まり経済活動を行うプラットフォームになりつつあるからです。
さらに、ゲームで培った技術は現実の世界でも活用されるようになっています。日経ビジネスの特集ではゲームの技術をビジネスに利用する竹中工務店やデンソーの事例が紹介されています。
また「遊び」の中で技術も進化していきます。AI(人工知能)は将棋や囲碁などを通じてその技術の進化を多くの人が目の当たりにしてきました。特集の中で東京大学の松原仁教授は「ルールが決まっているゲームという世界が、コンピューターの技術を磨く環境としてうってつけだからだ」と語っています。
これを機にAIの中核を担う機械学習について一から勉強してみるのもよさそうです。


日経ビジネスの特集では、「遊びをせんとや生まれけむ」という平安時代末期に後白河法皇が編さんした歌謡集『梁塵秘抄』を代表する今様歌謡の一節を紹介しています。広がり続けるゲームの世界は人間の本質を捉えたものと言えそうです。たかがゲームといった認識では、今後ますます大きくなっていくビジネスチャンスを逃してしまうでしょう。