【flier×日経ビジネス 現代をより深く知るための3冊】
「うまい棒」も値上げ!日本に迫るインフレの波

要約を通してビジネストレンドに気軽に触れることができる、flier×日経ビジネスの「現代をより深く知るための3冊」。今回のテーマは、日経ビジネス読者に人気の特集「貧しいニッポン 安売り経済から脱却せよ」です。豊かな暮らしができているように感じられる日本。しかし、物価も賃金も上がらない状態が続く日本の購買力は低い状態です。世界から強まるインフレ圧力は、日常生活にも影響を見せ始めています。flierの要約からは、日本の中に存在する格差を認識し、これからを考えるために役立つ3冊をピックアップしました。
「ビッグマック指数」をご存じでしょうか。英国の経済誌エコノミストが算出している数値で、世界各国ほぼ同じ原材料、調理法で作られている米マクドナルドのハンバーガー「ビッグマック」の価格から国ごとの購買力を測ります。
2022年1月の同指数によると、基準となる米国での価格は5.81ドル。これに対し、日本のビッグマックは390円です。1月時点の為替レート(1ドル=115.22)で換算した場合、日本は米国よりも41.2%安く売られていることになり、ビッグマック指数はマイナス41.2となります。
ビッグマック指数は、マイナスの値が大きければ大きいほど、その国の購買力が低いことを意味します。同指数で見ると、日本は欧州連合(EU)地域や韓国、英国、タイ、ホンジュラス、ポーランドなどよりも購買力が低いことになります。
他の国と比べてビッグマックが安く買えるのだからよいのではないか、と考える人もいるでしょう。しかし、世界経済の現状を見ると、よいとは言い切れないことが分かります。日経ビジネスの特集「貧しいニッポン 安売り経済から脱却せよ」(雑誌版では12月20日号特集として掲載)では、低成長が続き、物価も賃金も大きく上がらない日本経済の危機的な状況に警鐘を鳴らしています。
今、世界でエネルギーや食料の価格が高騰し、インフレ圧力が高まっています。その余波はガソリンや食品・日用品の値上げという形で日本の消費者の暮らしにも影響を及ぼしています。日清食品は2月3日、「カップヌードル」や「チキンラーメン」といったカップ麺や袋麺などを6月1日出荷分から5~12%値上げすると発表しました。また、菓子などの企画・販売を手掛けるやおきんは1本10円だった「うまい棒」の価格を4月から12円にすると公表しています。原材料や運送費の高騰が理由です。
併せて読みたい『新・日本の階級社会』
岸田文雄首相は経済界に賃上げの期待を表明していますが、企業がコスト上昇による収益悪化を懸念して賃上げを渋れば、物価上昇の負担は消費者にのしかかってきます。そうした負担は所得が低い世帯にとってより重くなるため、『新・日本の階級社会』でも触れられている格差が一層広がりかねません。

それでも必要なものが手に入るのであればまだいいかもしれません。消費者の購買力が低い状態では、値上げもうまくいきません。その場合は企業が上昇したコストを吸収しなければならず、企業の収益は悪化してしまいます。結果として、原材料や製品などを海外の企業に買い負けるといったことも出てくるでしょう。エネルギーや食料など多くのものを海外からの輸入に頼る日本にとっては、生活に必要なものが手に入らなくなる危機に陥ることを意味します。
併せて読みたい『2040年の未来予測』『お金のむこうに人がいる』
そのためには、経済が成長し、企業ももうかり、賃金も上昇するというサイクルを生み出さなければなりません。人口減が進む中で、このサイクルを実現するのが容易でないことは『2040年の未来予測』でも書かれています。
消費者としては少しでも安くていいものを探すことは買い物の楽しみの1つです。しかし、世界経済の全体像を知ると、また違った思いが芽生えてくるでしょう。『お金のむこうに人がいる』を読んで、経済について改めて考えることが日本の将来につながるかもしれません。



