【イベントレポート】
図鑑対談!『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑』著者 荒木博行氏×『ビジネスモデル2.0図鑑』著者 近藤哲朗氏
図解にみるインプットとアウトプット 『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑』刊行記念トークイベント

コミュニティ「ビジネス図解研究所」メンバーとともに制作され、アイコンを使って100社のビジネスモデルを図解した『ビジネスモデル2.0図鑑』(KADOKAWA)と、イラストを使ってビジネス書35冊のエッセンスをまとめた『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。この2冊には、とっつきにくいテーマをかみ砕き、そのエッセンスをわかりやすく伝えるという共通点があります。

『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑』の刊行を記念して、2018年12月11日、代官山蔦屋書店にて「図鑑対談」が開催されました。『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑』著者の荒木博行さんと、『ビジネスモデル2.0図鑑』著者の近藤哲朗さんが、図解する力の鍛え方や書籍に込めた想いを語り尽くします。

トークイベントの内容を一部ご紹介いたします!

「ビジネスモデル2.0」とは

近藤:対談の前に私から、対象への理解を深める「図解のコツ」、そして「ビジネスモデル2.0とは何か」についてお話しします。

まず、図解のコツ。これは3つあります。
1つ目が、図解の目的を決めること。取引先に見せて受注につなげたい場合と、経営陣にプレゼンして稟議を通したい場合とでは、図解の作り方が変わってきます。

2つ目が、ルールを理解して作ること。私の場合、3×3の枠内に収めるという制約を設けたことでシンプルに可視化できました。

3つ目が、レビューをし合うこと。独善的にならないために必要です。

次に、本のタイトルにもある「ビジネスモデル2.0」について。私が「ビジネスモデル2.0」と呼ぶのは、S(Social:社会性がある)B(Business:経済合理性がある)C(Creative:創造性がある)の3つが満たされているビジネスモデルです。

かつての「ビジネスモデル1.0」は、C(経済合理性)偏重の、儲けを生むためのしくみでした。しかし今や、経済合理性だけでは不十分です。これはこの本のメインメッセージでもあります。


ストック率改善が、成長への近道

荒木:私からは、出版に至るまでの経緯をお話しします。

「今年読んだビジネス書の中で一番良かったものはなんでしょう? その本のエッセンスを話してみてください」と言われて、すらすら話せる人はほとんどいないのではないでしょうか。かくいう私自身も、過去いろいろ工夫を重ねてきましたが、読んだ本の内容がなかなか知識として定着せず、いざというときに使えないという問題意識がありました。

そこではじめたのが図解でした。しっかりとお腹にしまい込みたい書籍の内容をイラスト付きでまとめ、Facebookにアップすることにしたのです。



こうやって一冊当たりの歩留まりを高め、ストックを確実なものにしていくことで、仕事で使える知恵に転換できる、という手応えがありました。

かつての私がそうだったように、世の中には「フロー体質」、つまり一生懸命頑張っているんだけど、穴の開いたバケツのように全てのインプットが流れていってしまう人が多いのではないかと思っています。それよりも大事なことは、「ストック体質」に変えていくことです。

「経験数×ストック率=成長」という公式があります。いくら経験を積んでも、ストック率を改善しない限りは同じこと。一方、若くて経験が少ないビジネスパーソンでも、ストック率を改善すればレバレッジを発揮できるということでもあります。

ではどういうふうにストックすればいいのでしょうか。そのヒントになるのが、自分の好みやこだわりを突き詰めるということです。

キャリアを考えるフレームワークとして、自分自身はshould(時代の要請)とcan(自分にできること)、そしてwant(自分がやりたいこと)の重なりを常に意識しています。この重なったスイートスポットにチャンスがあります。

私がイラストでストックするという手段を選んだのは、とにかく好きだったから。まずwantがあったわけです。最初は下手くそだったけど、それが徐々にできる(can)ようになっていき、結果的に「ゆるく学びたい」という時代の要請(should)にも合致したのかなと思っています。

wantを疎かにして、shouldやcanから発想する人は多いのですが、それでは継続できません。私自身、イラストは仕事でもなかったし、誰かから頼まれたことでもありませんでした。でも好きで、継続したからこそ形になったのです。「人に頼まれなくても自発的に取り組みたくなることってなんだろう?」というのは、次のステージに進むために大事な問いかけだといえます。


アウトプットは、大小よりも回数のほうが大事

荒木:ここからは2人で対談をしていきましょう。まず、「書籍制作の過程で得られたこと」って何かありますか?

近藤:コミュニティパワーの大きさに気づけたことです。

出版が決まった際、“100個のビジネスモデルを図解する”というお題が与えられて、絶対無理、と思ったのですが、ひとりでできないことでも、みんながいると実現できる。それに気づけたことが一番大きい収穫でしたね。

荒木:私にとっては、「生産すること」の価値を知れたことです。

『明日クビになっても大丈夫!』(ヨッピー・著/幻冬舎・刊)で読んだのですが、趣味には「消費する趣味」と「生産する趣味」の2つがあるそうです。

読書は本来、お金を払って消費するものですよね。それを“イラスト”を使って生産につなげるという意識を得られました。生産する趣味を持つということはすごい力を発揮するなという実感を持てたことは大きかったです。

近藤:何を生産するべきかと悩む人には、自分の中にシリーズを持つことをすすめます。ひとつひとつは一口サイズでも、同じ形式で続けていけばシリーズになります。シリーズを決めてしまえば始めやすく、継続しやすいですよ。

荒木:アウトプットは、大小よりも回数のほうが大事ですよね。


よりマイクロな情報が求められる時代

近藤:ちなみに、私の本は発売2週間前に全文を無料公開したんですよね。ただ、実は公開直前にはとても不安でした。無料公開して本が売れなかったらどうしよう、と。でも、本を買ってくれる人はたくさんいたんですよね。

ここから私は、今までは“本の内容へのアクセス権”を買っていたのに対し、今では“本に対する共感”を買うようになっているんだ、ということに気づきました。「この本を買いました/読みました」とSNSでシェアできることが、本を買う動機になっていると感じます。

荒木:なるほど。共感という観点で言えば、私もイラストの力の大きさに気づかされました。というのも、「今まで本を読んでこなかったけど、『ビジネス書図鑑』をきっかけに読みました」という声を多くいただいていたからです。視覚的な要素から生まれる「共感の力」というのは大きいですよね。

活字離れ、ということが言われていますが、別にコンテンツは活字である必要はないわけです。開けば声が出る本や、映像が飛び出る本なんかも出てくるかもしれませんよね。もはやそれを本と言うかどうかは別ですが。

近藤:そうですね。情報量が多い時代、1冊の本を読むのは難しいし、映画を観る時間もない。だから図鑑や図解のような、よりマイクロな情報が求められているように思います。

荒木:私たちの本のような、オムニバス、アラカルト的な本も増えていくでしょうね。文脈なしにさまざまな情報が並ぶ時代だからこそ、ストーリーをつなぐことの付加価値が逆説的に高まりそうです。


健全な冷や汗をかけば、アウトプットとインプットの質が上がる

荒木:ところで、こういう「図解力」ってどうやったら鍛えられるのか?っていうことは聞かれませんか?

近藤:はい、そうですね。私は、図解そのものというよりも、情報を抽象化する能力が重要だと思います。構造的に物事を読み解く力を鍛えれば、自然と図解がうまくなるのではないでしょうか。

荒木:同感です。まさにグロービスでやっている「クリティカル・シンキング」そのものですよね。私もこの本をイラスト化するために、まず本を読む際に、「著者が立てている問い」「問いに対するメッセージ」、そして「著者のメッセージを支える3つの要素」などを、本を読む前に探り当てるようにしています。

近藤:難しそうですが、どうやって見つけているのですか。

荒木:「はじめに」と「おわりに」、そして目次に目を通し、本文もさらっと読んで「構造」と「メッセージ」を推測します。難解な本もありますが、トレーニング次第ですね。

また「今日の17時にFacebookにアップするぞ」などと決めて読み始めるのもいいですよ。アウトプットを意識すると脳みそがフル回転し、インプットの質が高まりますからね。

近藤:荒木さんが言う通り、アウトプットファーストで考えるのがいいかもしれません。「こうアウトプットするからこうインプットしよう」と最初に決めてしまうことが大切です。

荒木:その通り。私はそれを「健全な冷や汗をかく」と表現しています。些細な例としては、グロービスの授業でわからない質問に対して挙手して、当てられてから発言内容を決めるというようなこともそうかもしれません。その瞬間に脳みそはフル回転してますから。

近藤:そうですね。健全な冷や汗をかける環境は、身の回りにいくらでもあると思います。そういう場を生かしていかなくてはだめでしょうね。


人生100年時代における「学び」の重要性

荒木:最後に、近藤さんの今後の目標はなんでしょう?

近藤:コミュニティをもっと成熟させていきたいと思っています。

そのうちの一つが報酬制度です。報酬目的で集まったわけではないものの、活動を継続させるために必要ですから。こうした試行錯誤を通してコミュニティのSocial/ Business/ Creativeを立証し、社会にメッセージを発信したいという想いもあります。

荒木:私はこれからも、学びの裾野を広げることに取り組みたいと考えています。つまり世の中に大量に広がっている良質なコンテンツをもっと分かりやすく噛み砕いて、裾野広く多くの人に届けることをやりたいです。今はイラストを使っていますが、もっといろんな可能性を模索していこうと思っています。多くの人に学ぶことの面白さに気づいていただき、やがてはグロービスで数年かけてしっかり学ぶ、というような形で、学び続ける連鎖を創り上げたいですね。

近藤:『ライフシフト』では人生100年時代、とありましたが、その長い人生のうち、大学卒業後の80年間、学びから遠ざかってしまうということは避けたいですよね。学ばないということは、逆説的な発想から遠ざかり、定説、つまり常識に固定化されて息苦しくなってしまうことに繋がります。「学び」は世の中を変えるドライバーともいえるのではないでしょうか。

荒木:そうですね。では今日はありがとうございました。そして、今日の学んだこともぜひ、フローにせず、自分の中でストック化していただければと思います。


荒木 博行 (あらき ひろゆき)

グロービス経営大学院教授

住友商事を経て、グロービスへ入社。法人向けコンサルティング業務を経て、グロービス経営大学院にてオンラインMBAの立ち上げや特設キャンパスのマネジメントに携わる。

現在はグロービスにおける戦略系のコンテンツ開発や同領域の教鞭を執ると共に、書籍要約サービスの株式会社フライヤーにて社外アドバイザーを務める。

著書に『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑』『ストーリーで学ぶ戦略思考入門』など。

http://manabi-design.jpにてブログ更新中。

近藤 哲朗 (チャーリー)

株式会社そろそろ代表取締役。ビジネス図解研究所主宰。千葉大学大学院工学研究科修了後、面白法人カヤックに入社。2014年、面白法人カヤックで出会ったメンバーと、社会課題の解決を目的とした事業や組織を応援するため、株式会社そろそろを創業。noteで「#ビジネスモデル図解シリーズ」「#ビジネスワード図解シリーズ」を発表したところ、NewsPicksで合計20,000Pickを超えるなど、大きな話題を集める。現在は約50人体制の有志組織「ビジネス図解研究所」を運営し、「ビジネス×図解の追求」をコンセプトに、大企業やNPO法人向けにビジネス図解のコンサルティングを行う。書籍『ビジネスモデル2.0図鑑』をKADOKAWAより発売し、Amazonカテゴリ1位、発売1ヶ月で4刷重版が決まるなど瞬く間にベストセラーに。

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文責:庄子 結 (2018/12/26)

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