【イベントレポート】
古舘伊知郎さん講演会、八重洲ブックセンターにて開催!
一点突破の「凝縮ワード」で勝負せよ

プロレスやF1などの実況中継、夜のヒットスタジオ司会を経て、「報道ステーション」のキャスターを12年務めてきたアナウンサー・古舘伊知郎さん。現在もバラエティー番組やCMなど多方面に活躍しておられます。

古舘さんというと、その鋭敏な言葉のセンス、ボルテージ高く、よどみなく話し続ける「古舘節」でお馴染みです。ところが、新著『言葉は凝縮するほど、強くなる』(ワニブックス)のテーマは、自分の真意を短い渾身の一言で伝える「凝縮ワード」。新著の刊行を記念し、2019年7月22日に八重洲ブックセンターで古舘さんの講演会が開催されました。そのダイジェストをお届けします!


「凝縮ワード」を使った会話術とは?

『言葉は凝縮するほど、強くなる』に書かれた会話術とは、どのようなものなのでしょうか? この本を書くに至った経緯とともに古舘さんはこう語り出します。

古舘さん: 「言葉を凝縮する」というテーマと、しゃべりがとにかく長いと言われる古舘伊知郎。「キャラが違うんじゃないか?」と言われるのは百も承知です。
僕は40数年しゃべる仕事をしてきて、「おまえは人の話を聞かない」と言われるほど失敗を重ねてきました。しかもデジタル社会の現在は、いかに短く、ポイントを伝えるかで勝負する時代。それを痛感したのは、報道ステーションをやめてバラエティーの世界に戻ってきたときです。一気呵成のしゃべりというのは、今のテレビに向いていないことに気づきました。問われるのは、短い持ち時間の中で、いかに気の利いたこと、面白いこと、鋭いことを端的に言えるか。

これは身近な人との会話でもビジネスの現場でも同じ。いかに相手に寄り添い、自分の真意を渾身の一言に凝縮するか? この本は、「本当はこう伝えたほうがいいよな」と考え、編み出してきた会話術の集大成なんです。
言葉は凝縮するほど、強くなる - 短く話せる人になる! 凝縮ワード -
言葉は凝縮するほど、強くなる - 短く話せる人になる! 凝縮ワード -
古舘 伊知郎
ワニブックス
本の購入はこちら
言葉は凝縮するほど、強くなる - 短く話せる人になる! 凝縮ワード -
言葉は凝縮するほど、強くなる - 短く話せる人になる! 凝縮ワード -
著者
古舘 伊知郎
出版社
ワニブックス
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コミュニケーションは「間(あわい)」に宿る

古舘さん: 話の途中で、次の言葉がすらすら出てこないことってありませんか? 「うっ」とか「あっ」とか、言いよどむと落ち込むかもしれませんが、これは全く失敗ではありません。この「間(あわい)」があったほうが逆にコミュニケーションが活性化するんです。

ロボットの研究 をされている研究者(豊橋技術科学大学の岡田美智男教授)によると、一切よどみなく話すロボットをつくっても「人間味がない」と敬遠される そうです。ロボットでも、少し詰まったり、口ごもったりするほうが親しみやすい。なぜかというと、人は相手が詰まっていたらフォローをしたくなるから。互いに不完全なところを補い合おうとすると、絶妙なキャッチボールになる。コミュニケーションは「間」に宿るんですよ。

古舘流「キャッチフレーズ術」とは?

古舘さんは、本に登場する、相手に刺さる「凝縮ワード」づくりに役立つ会話術の一部を紹介してくださいました。


古舘さん:1つは「キャッチフレーズ力」。何かにたとえるのが得意な人は、たとえるために「対象の本質」を見つけ出しています。

僕も「どんなふうにたとえたら視聴者に一番伝わるのか?」を意識してきました。プロレスの実況中継をしていた頃、レスラーにニックネームをつけて呼んでいたのも、視聴者のイメージをかきたてるため。たとえば、2メートル23センチの身長に、200キロ以上も体重のあるアンドレ・ザ・ジャイアント選手。彼のキャッチフレーズは、最初は「一人山脈」でした。それが広がり過ぎたら「一人民族大移動」というフレーズに切り替えて。その次は「一人と呼ぶには大き過ぎ、二人と呼ぶには人口の辻褄が合わない」と表現していました。アンドレ選手の本質である「大きさ」を表したこのフレーズは、当時かなりウケました。今思うと長過ぎるんですが(笑)。

人は背中で「残心」を感じ取る

2つ目は「残心力」。「残心」とはもともと武道の言葉で、技を決めた後も相手の反撃に対応できるよう相手に心を向けた状態を指します。残心力を発揮されているのが料亭の女将さんたち。お客様を乗せた車が見えなくなるまで深々とお辞儀をしています。もちろんお客様がわざわざ振り返ることはないでしょう。ですが人間って、相手が心を残しているかどうかを、背中でピリッと感じ取るんでしょうね。


残心というと思い出すのが、亡くなられた名優の三國連太郎さんのエピソード。あるトーク番組の収録が終わって、僕はスタジオの玄関までお見送りをしていました。三國さんが遠ざかって、暗がりの中に入りかけたので、僕は片づけをしようと踵を返した。すると、知らぬ間に戻ってきていた三國さんに、小さい声で「古舘さん」と呼ばれて。「背を向けずに最後まで見送ればよかった!」と内心焦りましたよ。すると三國さんがこうボソッといわれたんです。

「どうぞ、お元気で」。
これこそ「言葉の残心」でそのもの。煮詰めた言葉は相手の心に響くのだと思いました。

失敗の山から「鉱脈」を見つけよ

一点突破の「凝縮ワード」を使おうとすると、その状況の何が本質なのか、その言葉を相手に伝えてもいい状況なのか、即座の判断が求められます。では、本質を見抜く力を身につける秘訣は何なのでしょうか? 古舘さんのアドバイスはこうでした。


古舘さん:やっぱり失敗を積んでいくことですよ。僕は40数年しゃべるなかで数多く失敗してきていますから、失敗の量に関しては負けない自信がある。
今はLINEでも一言二言のやりとりで通じるから、摩擦が起きなくてラクですよね。でもそれだけではダメなんですよ。対面のコミュニケーションでいっぱい失敗するなかで、本質を見抜く力が磨かれてくるんです。

気をつけたいのは、テクニックに走って、コミュニケーションを「スキル(技能)の問題」にしてしまわないこと。オフィスでの上司や同僚との会話でもバーのカウンターでの立ち話でもいいから、とにかく場数を踏んでいく。すると、相手に叱られたり気まずい思いをしたりして、失敗の山ができあがる。なぜ失敗したんだろう、次はどうしたら上手くいくだろう、と試行錯誤してようやく自分なりの成功パターンのような「鉱脈」が見つかるんです。

そのうち、あたかも波動が見えるかのように、目の前の相手のことがわかる瞬間がやってきますから。「あ、この人の本質はこうなんじゃないか」「この部分をすくいあげるといいんじゃないか」などと、凝縮した言葉が口からぽんと出てきます。たとえ憎まれ口でも、場の空気感や相手の心情に寄り添った言葉なら、その真意がまるで小籠包の皮に包まれたみたいに絶妙に相手に伝わるはずです。

もちろんテクニックに走りすぎてはダメですが、「この人のようになりたい」と思った人の真似をすることは大事。脳にはミラーニューロンというのがあります。この細胞は、自分が何か行動をするときだけでなく、他者がその行動をするのを見たときにも活性化するそうです。だから、スポーツ選手の行うイメトレのように、尊敬する人の言動を徹底的に真似してみる。そうするとミラーニューロンが活性化して、理想の状態を現実化しやすくなります。

僕も新人アナウンサー時代は、尊敬する先輩の実況映像を見ていました。たとえば、国際マラソンのリポートで見事だったのは、「(先頭集団の選手たちを)ようこそと銀杏並木が迎え入れています」と、木を擬人化した表現です。この擬人化はプロレスの実況のときに真似しました。そして、徳光和夫さんやみのもんたさんのように、すごいなと思う話し方や間の取り方を学びました。

だから読者の方々には、僕の本に書いてあるフレーズをどんどん使ってみてほしい。僕自身も完全にできているわけではなくて、「こうありたい」と理想を書いているところもあるので、読み直して実践していきたいと思っています。
講演では実況さながらの「古舘節」も披露! 会場が拍手で包まれました。「言葉を煮詰め続けた僕だからこそ、色んな読者が共感できる内容を書けたんじゃないか」と語る古舘さん。その会話術の一部を近日フライヤーの要約で公開予定です。乞うご期待!
言葉は凝縮するほど、強くなる - 短く話せる人になる! 凝縮ワード -
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古舘 伊知郎
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著者
古舘 伊知郎
出版社
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古舘伊知郎(ふるたち いちろう)

立教大学を卒業後、1977(昭和52)年、テレビ朝日にアナウンサーとして入社。「古舘節」と形容されたプロレス実況は絶大な人気を誇り、フリーとなった後、F1などでもムーブメントを巻き起こし「実況=古舘」のイメージを確立する。一方、3年連続で「NHK紅白歌合戦」の司会を務めるなど、司会者としても異彩を放ち、NHK+民放全局でレギュラー番組の看板を担った。その後、テレビ朝日「報道ステーション」で12年間キャスターを務め、現在、再び自由なしゃべり手となる。

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文責:松尾美里 (2019/09/20)

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