読者が選ぶビジネス書グランプリ2022授賞式!
総合グランプリに輝いたのは……?
読者が選ぶビジネス書グランプリ2022授賞式!
総合グランプリに輝いたのは……?

2022年2月15日、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」の授賞式が開催されました。
「読者=ビジネスパーソン」が価値ある書籍を評価する本グランプリは今年7回目の開催となり、エントリー書籍数も得票数も過去最多となりました。
注目の結果発表、授賞式、そして受賞作品の著者、編集者、翻訳者からのメッセージ。その模様をダイジェストでお届けします!
総合グランプリ&部門賞&特別賞の結果詳細はこちらから。
総合グランプリ・各部門賞・特別賞の結果発表!
授賞式は、フライヤー執行役員で、読者が選ぶビジネス書グランプリ事務局長を務める井手琢人のスピーチでスタート。司会は、アナウンサーの竹内夕己美さんです。
井手:一昨年からの新型コロナウイルスの影響が今もなお、続いております。1月末に出版科学研究所が紙の出版物の2021年推定販売額を発表しました。全体では雑誌の下落が大きく、前年比1.3%減だったものの、書籍は児童書や参考書、語学・資格関連の書籍が好調で、2.1%増と15年ぶりに増加しました。
「巣ごもり需要」もあり、コロナ禍においては「学び」にフォーカスが当たっています。特にビジネス書はビジネスパーソンの学びとダイレクトに繋がるもので、昨年も多くのビジネス書がビジネスパーソンの学びを促してくれました。
今回も皆さまのご協力をいただきまして、過去最多のエントリー数と得票数になって、賞の規模がさらに大きくなりました。書店フェアも過去最大の1300店舗を超える書店さんがご参加くださっております。この場をお借りしまして感謝を申し上げます。

いよいよ投票結果発表へ。フライヤー代表取締役CEO大賀康史より、各部門賞、総合グランプリ受賞の著者や編集者、翻訳者にトロフィーの授与を行いました。
イノベーション部門賞
『プロセスエコノミー』(幻冬舎)
ご登壇いただいた担当編集者の幻冬舎・箕輪厚介さん
けんすうさんが名付けた「プロセスエコノミー」という言葉を使って、時代の先をいく人たちがやっていることを一冊にまとめました。
私は編集者として、ふだん本を読まない人が読書をするきっかけになるとともに、そうした人たちに「この本があったから人生が豊かになった」と思ってもらえるような一冊をつくりたいと思っています。これからも、ビジネスの入り口になるような本をつくっていきます。
著者の尾原和啓さんからのメッセージ
今回の受賞、本当にありがとうございます。2日に1冊ほど日本のビジネス書を読む人間として、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」は毎年楽しみに投票していました。
だからこそ「まさか受賞させていただけるとは」とうれしく思っています。変化の激しい時代にこの賞をいただけて、本当に光栄です。
本はまだまだ、時代の流れを作る魔力を持っています。本書が次の変化へのヒントになるとともに、「ビジネス書グランプリ」のような未来を照らす取り組みが、みなさんの新しい時代の羅針盤になればと思います。このたびはありがとうございました。
マネジメント部門賞
『ビジョナリー・カンパニーZERO』(日経BP)
担当編集者の日経BP・中川ヒロミさん、翻訳家の土方奈美さん
本書は30年ほど前に出版された『ビヨンド・アントレプレナーシップ』(未邦訳)という本の改訂版です。シリコンバレーの起業家の方から「おもしろい本だから邦訳を出版しては」と教えてもらい、手がけさせていただくことになりました。これまでの『ビジョナリー・カンパニー』シリーズは大企業視点が中心でしたが、本書はスタートアップや中小企業の視点で書かれているのが特徴です。(中川ヒロミさん)
著者のジム・コリンズ氏は、数多くの名作を送り出してきました。そのすばらしいブランドを壊さないように、そして明快な語り口や平易な言葉選びといった、氏らしい文体を損なわないように留意して翻訳しました。(土方奈美さん)
政治・経済部門賞
『稲盛和夫一日一言』(致知出版社)
ご登壇いただいた致知出版社・小森俊司さん
稲盛和夫さんの言葉は、人の心を強く鼓舞するものばかりです。いつかそうした言葉をまとめて出版させていただければと、企画を大切にあたためてきました。
経営哲学はもちろん、人生哲学も多く含まれているのが本書の特徴のひとつです。だからこそ、世代を問わず、幅広い読者に感動が広がったのだと考えています。
著者の稲盛和夫さんからのメッセージ
「私が折に触れて発した366の言葉から成る本書が、多くの読者の支持をいただきましたこと、心から嬉しく思います。
「人間性を高め、この世にやってきたときよりも、高い次元の魂をもってこの世を去っていく」――私はこのことより他に人間が生きる目的はないと考えています。また、そのことこそが、人生を実りあるものにすることを固く信じています。
本書が読者の皆様にとりまして、日々の糧となり、素晴らしい人生を歩まれる一助となりますなら、著者として幸いです。
末筆ながら、本書を多くの人々にお届けするべく、献身的に取り組んでいただいています藤尾秀昭(ふじお・ひであき)社長はじめ、致知出版社の皆様に心から御礼申し上げます。
リベラルアーツ部門賞
『認知症世界の歩き方』(ライツ社)
著者でissue+design代表、慶應義塾大学大学院特任教授を務める筧裕介さん
本書を執筆したきっかけは、認知症の研究はさまざまになされているものの、「認知症のある方ご本人がどんなところに困っているのか」がわかるデータが見つからず、衝撃を受けたことでした。
超高齢社会において、認知症はたいへん身近なものとなっています。デザインの力で、認知症のある方が自然に暮らせるような社会をつくっていきたいです。
ビジネス実務部門賞
『超ファシリテーション力』(アスコム)
著者でテレビ朝日アナウンサー、平石直之さん
本書は、学校の先生から消防士さんまで幅広い職種・業種の方から反響をいただきました。さまざまな場面でファシリテーションスキルが求められていることがわかりますよね。
私はもともと、ファシリテーターを買って出るタイプではありません。本書はそんな私が、これまでの経験をもとに書いた一冊です。ぜひお読みいただけるとうれしいです。
ロングセラー賞
『スマホ脳』(新潮社)
担当編集者の新潮社・北本壮さん
人類の脳はこの1万年のあいだ進化しておらず、テクノロジーに適応できていない――。この主張が印象に残り、邦訳の出版を決めました。
初版発行は2020年の11月。新型コロナウイルスが猛威をふるう中でしたが、書店さんが力を入れて展開してくださったことで、良いスタートダッシュが切れました。
総合グランプリ/自己啓発部門賞 ダブル受賞
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社)
担当編集者の致知出版社・小森俊司さん
致知の愛読者は全国に11万人おり、みなさん一様に「致知は普通の雑誌ではない」「すべての号が永久保存版です」とおっしゃいます。そんな致知で紹介した「心を熱くするお話」を集めれば大きな感動を呼ぶ本になるのではと考え、本書を企画しました。
「365の記事を選ぶのは大変だったでしょう」とよく言われますが、制作期間中は楽しくて、夢の中にいるような日々でした。続編を準備中ですので、ぜひそちらもご覧ください。
月刊「致知」編集長の藤尾允泰さんからのメッセージ
一人からすべてははじまる。しかし一人では何もできない――。各界の先達がおっしゃていることですが、あらゆる仕事に通底する教えではないかと思います。
本書もまた、この言葉通りの歩みをたどって生まれた本です。たったひとりの人間の純潔な情熱、そしてひたむきで誠実な思いからすべてははじまりました。それだけではありません。40年以上にわたる会社の歴史とここまで積み重ねてきた財産があったからこそ、オンリーワンの本をつくることができました。
本書は、「致知」に掲載された1万本以上の対談やインタビューの中から、厳選に厳選を重ね、企画構想から制作まで丸1年半かけて、編集部の総力をあげてつくった本です。
弊社は「感動出版」を理念のひとつに掲げています。読者のみなさまに、この本に出会ってよかったと感謝され、感動される本をつくろう。私たち自身も、仕事を通じて、多くの優れた人たちに出会い、人格を向上させられることに感謝し、感動できる人になろう。この理念を今後も愚直に追求してまいります。ありがとうございました。
今年支持を集めたビジネス書の傾向とは?

フライヤーの大賀より、今年支持を集めたビジネス書の傾向について総括です。
大賀:この1年間を振り返ると、めまぐるしく移り変わる環境への対応力が求められる年でした。多くの人は、情報が不足する状況で難しい判断を求められ続けることに疲れていて、確固たる本質を頼りにしたいと願っているのだと感じます。
そのような背景と受賞作の傾向から、今回の「読者が選ぶビジネス書グランプリ」のキーワードは「普遍的なものへの回帰」です。
この1年は、ロングセラーが年間の書籍売上の上位に多くランクインし、リベラルアーツの価値が再注目された年でもありました。コロナ禍において、試行錯誤が続き、変化が激しくなるがゆえに、普遍性に回帰したのでしょう。この傾向は多くのビジネスパーソンに見られ、ビジネス書のトレンドにも大きな影響があったように思います。
総合グランプリに輝いたのは、『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』でした。本書に登場した365人の方はみな個性にあふれていて、似た人はほとんどいません。それでも、本全体が表現している経営の指針、そして生きる指針は過去も今も変わらないものです。何かを突き詰めて一流に到達した人にだけ見える景色が束になると、普遍的な本質が浮き彫りになる――そんな印象の一冊でした。
マネジメント部門賞は『ビジョナリー・カンパニーZERO』。殿堂入りの名著『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの原点といえる本で、読んでいて経営の悩みが次々と解消されていく感覚がありました。
ビジネス実務部門賞には『超ファシリテーション力』が選ばれました。リモート会議の進行などといったビジネスパーソンの悩みを、鮮やかに解決する作品です。
政治・経済部門賞の『稲盛和夫一日一言』は、稲盛さんの金言がコンパクトにまとめられ、繰り返し読むことで心の芯が強くなり、そして浄化されるような一冊でした。
尾原さんだからこそ書ける『プロセスエコノミー』は、マーケティングで語られてきた潮流の変化をはっきりと理解できるもので、イノベーション部門賞らしい作品です。
リベラルアーツ部門賞は、私も大好きな一冊で『認知症世界の歩き方』でした。その内容は、認知症のある方を理解するという枠組みを超えて、多様な人が暮らす世界をより優しい目で見られるようになる、世界が豊かな存在となる、という印象を受けました。
コロナ禍において、子どもたちの環境も変わる中、スマートフォンの存在感は大きくなる一方です。ロングセラー賞に輝いた『スマホ脳』は、2021年に最も売れた本とも言われています。人類にとって、スマートフォンなどのデジタルデバイスがいかに異質なもので、付き合うのが難しい存在なのかが伝わります。
加速する変化の中で、私たち自身の中に確固たる指針がなければ、毎日を暮らしていくことですらも、ストレスにさらされます。変わらない本質や普遍的な教えにすがりたくなるとき、本というメディアに触れることと同じ感覚を持てるものはありません。長期化するコロナ禍だからこそ、本は私たちを支えてくれます。本に関わる方々の存在に、今まで以上に感謝を感じる一年でした。
私たちはこの会の主催者として、より多くの人に受賞作を届けていくという使命を持てることを嬉しく感じております。
今年のフェアは全国の1300を超える書店で展開される予定です。過去最大規模になります。これからの展開も最大限、力を尽くしていきます。
最後に

グロービス経営大学院 ディレクターの柳田佳孝さんより、結びのご挨拶です。
柳田:受賞者のみなさま、このたびは本当におめでとうございます。「読者が選ぶビジネス書グランプリ」は今年7回目の開催となり、フェアを開催してくださる書店は1300を超え、エントリー数・投票数は過去最多となりました。
この賞には、本当にたくさんの方がかかわっています。熱い思いをもつ著者のみなさん、その思いを本という形で世の中に出した出版社のみなさん、本を読者のもとに届ける書店のみなさん、そして本を手に取って「読者が選ぶビジネス書グランプリ」に投票してくれたビジネスパーソンのみなさん。私どもも、共催という形でこの賞にかかわることができ、たいへんうれしく思います。
コロナ禍において、未来を予測することがますます困難になりました。私どものビジネススクールに通ってくださる方も、グロービスを選んだ理由として「複雑な状況下において、自分で情報を整理し、考え、意思決定したいから」を挙げることが増えていると感じます。
ビジネスパーソンにとって、受賞作品を読み、考え、実践することが、考えて意思決定し、行動するうえで大きなヒントになっていくでしょう。ぜひ積極的に行動を起こしていただけたらと思います。
登壇者のみなさま、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。今回の結果を受け、全国の書店と連携して受賞作品を並べて販売する店頭フェアが順次開催されます。 来年のビジネス書グランプリもお楽しみに!
▼今回のイベントの様子はYouTubeでご覧いただけます
読者が選ぶビジネス書グランプリ2022 授賞式
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文責:庄子結 (2022/02/17)