【イベントレポート】
ビジネス書グランプリ2017トークセッション
ビジネスパーソンにとっての「価値ある読書」とは

2017年3月8日、『ビジネス書グランプリ2017』の授賞式とトークセッションを開催しました。『ビジネス書グランプリ2017』は読者=ビジネスパーソンの投票によって書籍の価値を認定する書籍顕彰です。

トークセッションでは、ビジネス書に精通した著者や編集・宣伝担当者5名の登壇者から受賞作の内容を通して、ビジネスパーソンに必要な「価値ある読書」についてお聞きしました。のべ200名の参加者が真剣に耳を傾けた白熱トークセッションの一部を紹介します。

モデレーターはグロービス経営大学院 副研究科長 荒木 博行さん、フォーブスジャパン副編集長 兼 WEB編集長 谷本 有香さん、HONZ編集長 内藤 順さん、株式会社フライヤー取締役CFO/COO 苅田 明史。

各部門賞の結果詳細はこちらから→https://www.flierinc.com/libraryf/grandprix2017

「次世代のために強いマーケッターを増やしたい」。著者の情熱がほとばしる一冊

森岡 毅さん(左)、荒木 博行さん(中央)、谷本 有香さん(右)
登壇者トップバッターは、マネジメント部門賞『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』の著者、森岡 毅さん。ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)をV字回復させた伝説のマーケッターでもあります。マーケティングは売り上げを伸ばすための会社の“頭脳”であり、“心臓”。本書を執筆された背景には、真のマーケッターが日本にはまだまだ足りないという強い危機感がありました。
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』の著者、森岡 毅さん
「経済が失速し続ける中、僕たちの子どもの世代が豊かさを享受するためには何が必要か。それは強いマーケッターを増やすこと。マーケティングに熟知した経営者や、マーケティングの実務経験も兼ね備えたデータ・サイエンティストの存在もますます大事になります。こういう人たちが増えていけば日本は変わっていくはず。そんな願いを込め、マーケティングの入り口に立っている人に向けてこの本を書きました」。
マーケッターの経験をもとに、次世代の未来に寄与したいという森岡さんの信念がひしひしと伝わってきました。


「才能VS グリット」という二元論を越えた成功の本質に迫った書

次なる登壇者は、ビジネススキル部門賞『やり抜く力 GRIT(グリット)』(ダイヤモンド社)宣伝担当の松井 未來さん。本書のテーマは「成功するには、情熱と粘り強さが不可欠」というもの。「才能がないから無理」と諦めかけていた人は安心したかもしれません。とはいえ、やっぱり才能は必要だし、才能とグリットを掛け合わせるからグリットが有効なのではないか。そんな問いに松井さんはこう答えます。

「著者のダックワース氏は才能そのものを否定しているわけではなく、グリットは遺伝子の影響も受けると言われています。この本の一番のメッセージは、グリットは生得的なものだけでなく、後天的に育成できるということ。特に欧米は才能信仰が強いので、人の力の及ばないところで成功が決定づけられるという思い込みに警鐘を鳴らすことが、著者の狙いなんです」(松井さん)
『やり抜く力 GRIT(グリット)』宣伝担当の松井 未來さん(左)、苅田 明史(中央)、谷本 有香さん(右)
成功に必要な要素について語った類書は数多くあります。ですが、「才能も重要だけれど、やり抜く力は今からでも身につけられる」というメッセージに響いた読者が多かったからこそ、本書にこれほどの注目が集まったのでしょう。

松井さんは、今後のビジネス書のトレンドを次のように予測します。
「今後は哲学ブームがビジネス書にもくるはず。現在、AIやディープラーニングの進化に伴い、その関連書籍が増えていますが、『人間を人間たらしめるものは何か』というテーマにスポットライトが当たる。表層的なテクニック本ではなく、『人生をより豊かにするには?』といった本質に迫る本がビジネス書の潮流になっていくと思います。ビジネスパーソンのみなさんには、生涯ご自身のパートナーとなる本を見つけていただきたいです」。

テクノロジーの12の潮流を読み解く

三人目の登壇者は、イノベーション部門賞『〈インターネット〉の次に来るもの』(NHK出版)編集者の松島 倫明さん。本書の読みどころは何と言っても「今後30年で破壊的変化をもたらすテクノロジーは、12の不可避の大きな流れから読み解けるという点」。“The inevitable” という原題にあるとおり、「不可避」と呼ぶべきテクノロジーの潮流が12の法則という形で鮮やかに描き出されています。
『〈インターネット〉の次に来るもの』編集者の松島 倫明さん
「面白いのは、12の法則すべてがBECOMING、COGNIFYINGなどと現在進行形の『動詞』で規定されていること。中でも、最後の法則がBEGINNINGとなっていることがこの本を象徴しています。過去30年を振り返ると、インターネットやSNSをはじめ、テクノロジーの波がものすごい勢いで襲ってきたと感じる人も多いでしょう。ですが、『これは始まりにすぎない』というのが著者ケヴィン・ケリーの主張なんです」(松島さん)
これほど読み応えある翻訳書が読者の心をつかんだ理由を、松島さんはどう考えておられるのでしょうか。

「本というメディアの良さは、フロー情報をまとめ上げて、脳にアンカー(錨)を下ろしてくれること。ケヴィン独自の『足腰の強い思考』が詰まった本書は、立ち止まってじっくり20、30年先を考えたいという読者にヒットしたんじゃないでしょうか。テクノロジーがどう社会を変えるかというテーマを今後も探究したいですね」。

アカデミックな歴史書がビジネスパーソンに読まれるワケ

『サピエンス全史』の編集者、九法 崇さん
四人目の登壇者は、リベラルアーツ部門賞『サピエンス全史(上・下)』(河出書房新社)の編集者、九法 崇さん。イスラエルの歴史学者による壮大な人類史である本書は48カ国で出版され、発行部数は200万部越え。ザ・アカデミックな本書が日本のビジネスパーソンにも読まれているのはなぜなのでしょうか。

「本書のキーワードの一つに『虚構』があります。今、過労死の問題が取り沙汰されていますが、本来は実体のない『会社』という『虚構』の力が現代社会でいかに大きいかがわかります。ビジネスパーソンには、会社組織や金融といった仕組みが実は虚構だというところが響いたのかもしれません。サブタイトルの『文明の構造と人類の幸福』には、人類の歴史をたどりながら、これまで当たり前とされてきた制度や概念を問い直すという意味合いも込めているんです」(九法さん)
九法さんが今後注目を寄せているのはサイエンス系のご本。「『人生ってこういうものなのか』と文系のバックグラウンドを持つ人にも気づきを得てもらえる本を世に出したいですね」。

長寿化の時代にこそ、「変身」「学び続ける姿勢」が問われる

『LIFE SHIFT』編集者の佐藤 朋保さん
最後の登壇者は、ビジネス書グランプリ総合1位、政治経済部門賞に輝いた 『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)編集者の佐藤 朋保さん。長寿化により、「100年時代の人生戦略」が重要となると説いた本書の中で、佐藤さんが一番印象深かったのはどんなメッセージなのでしょうか。

「本書には、家族や友人関係、知識、健康といった、今後身につけておくべき見えない資産として、『変身資産』が紹介されています。この『変身』という言葉にあるとおり、100年生きる時代には変わること、学び続けることがますます大事になっていく。本書にも「アイデンティティ」という言葉が出てきますが、『私はこういう人間』というのも、生涯をかけて変化していきます。
本書でもっとも印象的なのは『今選択しようとしている意思決定が100年生きたときに耐えうる意思決定かどうか?』という問い。長寿化の核心をつく言葉です。100年以上生きると考えたことすらなかったという方にぜひお読みいただきたいですね」(佐藤さん)

最後に、フライヤー苅田から「今回の本のなかで、どれが良かったか、周囲の方と感想や気づきをシェアしあっていただきたい。今後も面白い本を手に取っていただく機会を増やしていきます」と締めくくりの言葉が。

登壇者のみなさま、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。来年のビジネス書グランプリもぜひお楽しみに!

※書店の方へ 書店用のPOP・書籍リスト・ロゴはこちらからダウンロードすることができます。ぜひ販促にお役立てください 書店の皆さまへ「ビジネス書グランプリ2017」販促素材のご提供(https://www.flierinc.com/release/71)
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文責:松尾 美里 (2017/03/11)
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